あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢

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悪意

悪意

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円花ちゃんとモニター越しにはじめて対面を果たしたこはるちゃん。妹だよと言われてもピンと来ないのか不思議そうに首を傾げていた。
「早く会えるといいわね」
「うん」
お爺ちゃんとお婆ちゃんと手を繋ぎ、産婦人科の一般病棟に移った夕貴さんの病室を訪ねた。
「心春ちゃんおいで」
なかなか中に入ろうとしないこはるちゃんにお婆ちゃんがにっこりと微笑み手招きした。
「ママ、なんでねんねしてるの?」
「それはな、冬眠中のくまさんと同じだ。次に目が覚めるときまでゆっくり体を休めているんだよ。ママは命をかけて心春と円花を守ったんだ。どんなに痛くても必死に耐えたんだ。心春ちゃんや円花ちゃんのために生きようと懸命に頑張っているママを、じいちゃんたちと一緒に応援してあげよう」
「うん、わかった」
椅子によじ登り身を乗り出して、そぉーと夕貴さんの頬に触れた。
「ママのほっぺ、あったかいよ」
こはるちゃんの表情がたちまち笑顔になった。「あのね、ママ」
こはるちゃんが背負っていたピンクのリュックサックを肩から下ろすと、中から可愛らしくラッピングしたクッキーを取り出した。
「しーちゃんとつくったよ」
顔の隣にそっと置いた。
「あとね、みてみて」
ママが退院したら大好きなひまわりの花を見せてあげたいと、お爺ちゃんとお婆ちゃんに手伝ってもらい庭の畑に種を蒔いたこはるちゃん。そのときの写真を夕貴さんに見せてあげた。
「夕貴さん、心春ちゃんは来週から町立の幼稚園に仮入園することになった。夕貴さんが退院してくるまで、儂らで心春ちゃんの面倒を見るから安心してくれ」
「四季くんと和真も新米パパとママとして心春ちゃんのお世話を毎日頑張ってるわ。円花ちゃんも保育器の中ですくすく成長してるわ」
お爺ちゃんとお婆ちゃんがこはるちゃんと一緒に声を掛けると、固く閉じた夕貴さんの瞼から一筋の涙が零れ落ちた。
「ママ、ないてるよ」
「きっと嬉し涙だ」
「うれし、なみだ?」
「心春ちゃんが会いに来てくれたから、ママはすごく嬉しいんだよ」
「そうよ」
お爺ちゃんとお婆ちゃんが目に涙を浮かべ、こはるちゃんの頭をぽんぽんと撫でた。






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