あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢

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亀裂

亀裂

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「服の着せすぎや、室温のあげすぎでも、赤ん坊は体温をあげるから気を付けるように。しかしまぁ、若いのにたいしたもんだ」
「え?何がですか?」
「子どもが発熱すると、普通はたまげるもんだ。生まれはじめて38度の熱を出せば、新米ママはたいがい気が動転してしまい、どうしていいか分からなくて右往左往する。それがおめさんはどっしりと落ち着いているから、だからたいしたもんだって言ったんだ」
「実は僕、児童養護施設で育ったんです。だから小学生のころから赤ちゃんのお世話や小さい子の面倒をみてきたので」
「そうか、だからか。ヤス、あとでいいから診療所に保険証と医療費受給者証を持って来てくれ」
「分かりました。上澤先生もう帰るんですか?」
「弓削と蜂谷と茶を飲む約束をしているんだ。帰りに寄る」
上澤先生は白衣を着たまま慌ただしく隣に向かった。
「困ったことに上澤先生は四季が俺の妻だと勘違いしている。妻子がいるならいるって一言くらい言ってくれーー違うと何度言っても信じてもらえない」
ほとほと困った表情でため息をついた。
「結さんいる?」
ドアの向こう側から慌てた様子の紗智さんの声が聞こえてきた。
「ヤスさん、頼むから結さんに会わせて。緊急事態なんだ」
「結は度会さんの家だ」
ヤスさんがドアを開けると、紗智さんが息を切らしながら部屋に入ってきた。
「だって具合が悪いから行かないって」
「結が具合が悪いのはいつものことだろう。病は気からってよくいうだろう。和真が無理矢理外に連れ出したんだ。紗智、一体何があった?」
「思い出したんだ。顔を見てなんで思い出せなかったんだろう。顔が変わっていたから?顔の印象が柔らかくなっていたから?違うな。昔の面影が全然ないからまったく気付かなかった。地竜に言われてやっと気付いた」
「なにをさっきからぶつぶつ言ってんだ。全く話しが見えないだが」
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