心理学は正しいのか?

シンリーベクトル

文字の大きさ
3 / 9

損失回避バイアスは存在するのか?

しおりを挟む
損失回避バイアスは本当に存在するのか

損失回避バイアスは、
「人は得よりも損を強く感じる」
という前提で説明されることが多い。

だが、この説明には一つ重要な前提抜けがある。

それは、
金額そのものではなく、その金額にどんな「予測」が結びついているか
という視点だ。



100円を例に考えてみてほしい

まず、100円を拾った場合
(ここでは説明上「得した・習得した」と考えてほしい)
と、落とした場合を比べてみる。

一般的には、
「拾うより落とすほうが感情が大きい=損失回避」
と説明されがちだ。

だが実際には、
100円レベルでは強い将来予測はほとんど組み込まれていない。

・生活は変わらない
・使い道は未定
・無くても困らない

この状態では、
落としても壊れる予測がほぼ存在しない。

その一方で、
拾った場合はどうか。

予測が無かったところに
純粋なプラスが生じるため、
むしろ拾った方が嬉しいと感じるケースすらある。

この時点で、
「損失の方が必ず重い」という説明は崩れる。



金額が10,000円になると何が変わるか

では、10,000円だったらどうだろう。

この金額になると、多くの人は無意識に

・今月の出費
・食事や交通費
・支払い予定

といった生活に直結する予測を、すでに組み込んでいる。

つまり、10,000円は
未来の使い道が仮配置された金額だ。



なぜ「失ったとき」だけ反応が激しくなるのか

10,000円を失ったときに強い感情が出るのは、
お金が減ったからではない。

組み込まれていた将来予測がまとめて破壊される
からだ。

・これに使うはずだった
・この余裕がある前提だった
・ここまでは安全だと思っていた

その前提が一気に崩れる。

この予測崩壊が、
「強い損失感」として体感される。



一方、習得時は嬉しいが予測は浅い

逆に重要なのが、得たときの状態だ。

お金を得た瞬間、
人はまだ使い道まで深く予測していない。

・とりあえず余剰として保持
・生活設計には未接続
・後で考えればいい

つまり、取得時点の予測は浅い。

予測が浅いものは、
増えても、失っても、
感情の振れ幅は小さい。



では「金持ち」の場合はどうか

ここで視点を変える。

もし、その人が十分に金を持っており、
その金額が生活にまったく影響しないとしたらどうなるか。

この場合、

・プラスになっても、ほぼ影響はない
・生活予測はすでに満たされている

つまり、習得による上振れの予測更新がほぼ起きない。

一方で、
損失が生じた場合は別のものが壊れる。

それは、
生活ではなく「ランク」だ。

・損をした
・判断を誤った
・下手を打った

こうした評価が、
プライドや自己評価、社会的ポジションに結びつく。



金持ちが「損失」を回避する理由

この場合、
回避されているのは金額ではない。

ランクの低下、評価の傷、プライドの損傷
これを避けている。

だから、

・得ても生活は変わらない
・失うと「格」が下がった気がする

この非対称性が生まれる。

結果として、
「得より損を回避したがる」
ように見える。



「損失回避」の正体

ここまでをまとめると、

人が回避しているのは
損失そのものではない。

・一般的な人にとっては
 生活予測の崩壊
・金持ちにとっては
 ランクや自己評価の低下

これら予測に組み込まれた構造の破壊を回避している。

その現象を、
まとめて「損失回避バイアス」と呼んでいるにすぎない。



まとめ

・損失回避は感情の性質ではない
・鍵は金額に結びついた「予測の種類」
・100円には予測がほぼ無い
・10,000円には生活予測が組み込まれる
・金持ちは生活ではなくランクを失う
・だから損失を回避するように見える

見ているべきなのは、
損か得かではない。

何が予測として組み込まれていたか
それだけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

島猫たちのエピソード2025

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
「Cat nursery Larimar 」は、ひとりでは生きられない仔猫を預かり、保護者&お世話ボランティア達が協力して育てて里親の元へ送り出す「仔猫の保育所」です。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...