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ライト・リフューズ
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少しだけモヤモヤした気持ちを抱きながら、智嗣は家路に着く。
初めて、誰かとお茶をした。
しかもそれが、自分が気になっていたあの颯太だった。
その既成事実だけで、彼はちょっとだけ強く生きて行けると実感したようだ。
こんな自分でもあんな素敵な人とお話が出来るなんて。
「カッコ良かったな、颯太さん」
そんな事を思いつつ、智嗣はカバンの中にあるオニキスの存在を確かめる。
黒いタオルを捲り、それを見つめる。
だが、すぐに彼はオニキスの異変に気付く。
オニキスが不気味に紫色の発光を始めているのだ。
まるで心臓が鼓動するかのように、怪しく輝いている。
「な、なんだよ、コレ」
思わず気持ち悪いと思いながらも、オニキスのグリップを握り締めてしまった。
その瞬間、発光は収まった。
しかし、すぐに銃口からまた何かが部屋の壁に向かって投影された。
そこには弾ける笑顔を見せ、こちらに微笑みかけている颯太の姿が映し出された。
そして、その画面の真ん中あたりに大きな文字で SUCCESS と浮かび上がったのだ。
「い、一体なんだよ」
智嗣は急に不安になり、オニキスから手を放そうとするが、何かの意思でそれは阻害されてしまった。
今の彼に自由はない。ただ、黒き銃の意のままに。
【NEXT STAGE】
再びそのような文字が浮かび上がると、突如オニキスは唸りを上げ始めた。
「な、何が始まるって言うんだよ」
すると、オニキスの銃口に颯太の映る画像がまるで掃除機のように吸い込まれて行ってしまったのだ。
突然の事に、智嗣は言葉を失った。
明らかに今までとは違う動きだった。
不安でしかない。
それからすぐ、銃口からまた光が溢れると、壁にあの赤い花が映し出されたのだ。
まるで何事もなかったかのように。
「おい。今、何をしたんだよ」
智嗣は少し怒りにも似た口調で話す。だが、オニキスは沈黙を貫く。
そんな時、
【キサマノ、イシヲ、ミセロ】
余りにも低い悪魔のような声に、智嗣は動きを止めてしまった。
(な、なんだよ…)
やはり、自分が手にしてはいけない代物だったのか。
途端に焦りの想いが湧き上がって来た。
【INESCAPABLE(逃げられぬ)】
オニキスの声に、智嗣の身体はさらに強張る。
多言語が混ざり合う取り留めのない口調がより恐怖をそそる。
そして、またぼんやりと文字が浮かび上がる。
【PROJECT L】
必要以上に見せ付けて来るこの文字は一体何だろうか。
自分は引き返せぬ道を歩み始めてしまっているのかも知れない。
そう考えると、智嗣は泣きそうになってしまう。
そしてオニキスは再び沈黙する。
どことなく満足そうな雰囲気を見せながら。
映し出された画面がプツリと切れ、智嗣の拘束も解かれた。
膝から崩れ落ち、呼吸を整える。
オニキスから手を放し、智嗣はすぐに携帯に手をやる。
慌ただしく画面を操作し、電話帳に登録したばかりの颯太の名を探す。
何も考えず、ただ彼の無事を願って智嗣は通話ボタンを押す。
【おかけになった電話番号は現在使われておりません】
一番あってはならず、聞きたくない返答に智嗣は動きを止めた。
携帯がするりと彼の手から離れ、床に落ちる。
オニキスと携帯がまるで寄り添うように並んでいた。
「颯太さん…」
智嗣は先程まで一緒に居た彼の姿を脳裏に浮かべる。
あんなに素敵で優しい人に何か危害が加わっているとしたら、自分は何て事をしでかしてしまったのか。
仮令、そうだとしても何も出来ない己の非力さに嫌気すら感じた。
益々自分と言う存在が卑しいと思ってしまう。
オニキスを手にした事が全ての元凶だとしたら。
目の前に落ちているオニキスを壊せば、元に戻るとしたら。
ふとそんな仮説が頭をよぎった。
智嗣は意を決し、台所にある包丁を手に掴む。
家の中にある一番鋭利なモノ。
ゴクリと唾を飲み、ゆっくりとオニキスに近づく。
恐る恐るオニキスに触れてみる。
何も変化はない。
そっと手に取り、机の上にそれを横たえる。
(これを壊せば、きっと颯太さんも)
そして、智嗣は包丁の切っ先を漆黒の銃身に向けた。
(さっさと壊れろ!)
智嗣は力任せに包丁を振り下ろす。
だが、その時である。
【ガチャリ】
それは一瞬の出来事だった。
銃身にぶつかるはずの包丁は動きを止め、オニキスの銃口はいつの間にか智嗣のこめかみに当てられていた。
「えっ…」
氷のように冷たい銃口からは明らかな殺意を感じた。
【FUN BEGINS(お楽しみはこれからだ)】
どこか含み笑いを込めた言葉を発し、オニキスに眠る深い闇が現出したように感じた。
智嗣自身でオニキスを破壊すると言う行為はどうやら許されていないらしい。
「くそっ!」
智嗣は力任せに、手に握っていた包丁を床に叩きつけた。
オニキスもまた、力を失い机の上に落ちて行った。
そのまま力なく、智嗣はその場に座り込んでしまった。
この余りにも長い夜を一人で過ごすのは過酷過ぎる。
今すぐ颯太の安否を確認したい。
だが、身体は正直で智嗣は自然と眠りに落ちるまでその場から一歩も動く事は出来なかった。
初めて、誰かとお茶をした。
しかもそれが、自分が気になっていたあの颯太だった。
その既成事実だけで、彼はちょっとだけ強く生きて行けると実感したようだ。
こんな自分でもあんな素敵な人とお話が出来るなんて。
「カッコ良かったな、颯太さん」
そんな事を思いつつ、智嗣はカバンの中にあるオニキスの存在を確かめる。
黒いタオルを捲り、それを見つめる。
だが、すぐに彼はオニキスの異変に気付く。
オニキスが不気味に紫色の発光を始めているのだ。
まるで心臓が鼓動するかのように、怪しく輝いている。
「な、なんだよ、コレ」
思わず気持ち悪いと思いながらも、オニキスのグリップを握り締めてしまった。
その瞬間、発光は収まった。
しかし、すぐに銃口からまた何かが部屋の壁に向かって投影された。
そこには弾ける笑顔を見せ、こちらに微笑みかけている颯太の姿が映し出された。
そして、その画面の真ん中あたりに大きな文字で SUCCESS と浮かび上がったのだ。
「い、一体なんだよ」
智嗣は急に不安になり、オニキスから手を放そうとするが、何かの意思でそれは阻害されてしまった。
今の彼に自由はない。ただ、黒き銃の意のままに。
【NEXT STAGE】
再びそのような文字が浮かび上がると、突如オニキスは唸りを上げ始めた。
「な、何が始まるって言うんだよ」
すると、オニキスの銃口に颯太の映る画像がまるで掃除機のように吸い込まれて行ってしまったのだ。
突然の事に、智嗣は言葉を失った。
明らかに今までとは違う動きだった。
不安でしかない。
それからすぐ、銃口からまた光が溢れると、壁にあの赤い花が映し出されたのだ。
まるで何事もなかったかのように。
「おい。今、何をしたんだよ」
智嗣は少し怒りにも似た口調で話す。だが、オニキスは沈黙を貫く。
そんな時、
【キサマノ、イシヲ、ミセロ】
余りにも低い悪魔のような声に、智嗣は動きを止めてしまった。
(な、なんだよ…)
やはり、自分が手にしてはいけない代物だったのか。
途端に焦りの想いが湧き上がって来た。
【INESCAPABLE(逃げられぬ)】
オニキスの声に、智嗣の身体はさらに強張る。
多言語が混ざり合う取り留めのない口調がより恐怖をそそる。
そして、またぼんやりと文字が浮かび上がる。
【PROJECT L】
必要以上に見せ付けて来るこの文字は一体何だろうか。
自分は引き返せぬ道を歩み始めてしまっているのかも知れない。
そう考えると、智嗣は泣きそうになってしまう。
そしてオニキスは再び沈黙する。
どことなく満足そうな雰囲気を見せながら。
映し出された画面がプツリと切れ、智嗣の拘束も解かれた。
膝から崩れ落ち、呼吸を整える。
オニキスから手を放し、智嗣はすぐに携帯に手をやる。
慌ただしく画面を操作し、電話帳に登録したばかりの颯太の名を探す。
何も考えず、ただ彼の無事を願って智嗣は通話ボタンを押す。
【おかけになった電話番号は現在使われておりません】
一番あってはならず、聞きたくない返答に智嗣は動きを止めた。
携帯がするりと彼の手から離れ、床に落ちる。
オニキスと携帯がまるで寄り添うように並んでいた。
「颯太さん…」
智嗣は先程まで一緒に居た彼の姿を脳裏に浮かべる。
あんなに素敵で優しい人に何か危害が加わっているとしたら、自分は何て事をしでかしてしまったのか。
仮令、そうだとしても何も出来ない己の非力さに嫌気すら感じた。
益々自分と言う存在が卑しいと思ってしまう。
オニキスを手にした事が全ての元凶だとしたら。
目の前に落ちているオニキスを壊せば、元に戻るとしたら。
ふとそんな仮説が頭をよぎった。
智嗣は意を決し、台所にある包丁を手に掴む。
家の中にある一番鋭利なモノ。
ゴクリと唾を飲み、ゆっくりとオニキスに近づく。
恐る恐るオニキスに触れてみる。
何も変化はない。
そっと手に取り、机の上にそれを横たえる。
(これを壊せば、きっと颯太さんも)
そして、智嗣は包丁の切っ先を漆黒の銃身に向けた。
(さっさと壊れろ!)
智嗣は力任せに包丁を振り下ろす。
だが、その時である。
【ガチャリ】
それは一瞬の出来事だった。
銃身にぶつかるはずの包丁は動きを止め、オニキスの銃口はいつの間にか智嗣のこめかみに当てられていた。
「えっ…」
氷のように冷たい銃口からは明らかな殺意を感じた。
【FUN BEGINS(お楽しみはこれからだ)】
どこか含み笑いを込めた言葉を発し、オニキスに眠る深い闇が現出したように感じた。
智嗣自身でオニキスを破壊すると言う行為はどうやら許されていないらしい。
「くそっ!」
智嗣は力任せに、手に握っていた包丁を床に叩きつけた。
オニキスもまた、力を失い机の上に落ちて行った。
そのまま力なく、智嗣はその場に座り込んでしまった。
この余りにも長い夜を一人で過ごすのは過酷過ぎる。
今すぐ颯太の安否を確認したい。
だが、身体は正直で智嗣は自然と眠りに落ちるまでその場から一歩も動く事は出来なかった。
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