ハロウィンinサザン・ホスピタル

くるみあるく

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2.照喜名(てるきな)裕太と仮装娘

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At Southern Hospital, Nakagusuku, Okinawa; October 31, 2021.
The narrator of this story is Yuta Terukina.

院内に入ると患者さんたちが10名くらい売店前に行列作ってます。
「みなさん、きちんとソーシャルディスタンス取ってくださいよー」
ハロウィン限定パンプキンプディングの販売が始まったようです。地元の洋菓子屋さんの商品ですがハロウィンの日だけこちらにも品卸ししてる。お手頃価格で甘すぎず結構人気なんですよ。
「照喜名先生、おはようございます」
洋菓子店長のアダニヤさんだ。
「今日は午前50個、午後150個の販売予定なんです」
そうですか。14時からは外部のお見舞い客もいらっしゃるから、あっという間に売れちゃいそうですね?
「院内への搬入がちょっと大変なので、可能でしたら来年のハロウィンイベントでは駐車場で車両販売したいんですけど」
ちょうど売店に副院長がやってきたので話を振ってみる、が、副院長はあまり乗り気ではない。アメリカ人で甘さのきいた味付けがお好きだということもあるけど、駐車場はお天気と海風の問題があるから。ここ丘の上で海風強くて、傘をさすのも一苦労。患者さんたちが危険にさらされるかもしれないということで、結局、もう少し案を練ってからという事になりました。

肝心のハロウィンイベントですが、すでにあちこちのコーナーでスタートしちゃってる。ボランティアさんが手際よく高齢者の方をあちこち座らせて折り紙とか一緒に楽しんでる様子。元気な患者さんはペットボトルのピンたちにボウリングの球とか転がしてるし。……あれ、専門学校の学生たちと上間先生はどこ行ったんだろ?
と思ってたら、上間先生なんですかその変装は。紅白のだんだらストラップの三角帽の先っちょに青いボンボンがついてて、これまた紅白ストラップのピエロみたいな格好。
「大阪のくいだおれ太郎だよ。アメリカ研修中もこれ着てた」
そこへ、これまた様々な扮装をしたリハビリ研修生がやってきた。今年は鬼滅キャラ多いですねー。さすがに甘露寺蜜璃(かんろじ みつり)はいないな、と思ってたら。
「お父さーん」
え、え、え? ちょっと有夏梨ゆかり、なんですかそのはしたない格好は!
「だってこの格好は皆さんにウケがイイから」
やめなさい! いますぐ着替えておいで! ああ、19になったばかりの女子大生がなんてこったい! サンシンの音が鳴り響くリハビリ室を後に、僕は娘を引っ張って脳外科へなだれ込む。
「多恵子さん助けて! 何か服を貸してやってください」
「あい有夏梨ゆかりちゃん、カワイイねー。うちの理那りながマネしたがるはずよー」
僕は頭を抱える。あの、普通年頃の女の子の親だったら、胸の谷間を強調する服を着たら怒りますよね?
有夏梨ゆかり、あんたここにいたの?」
あれ、里香さんがいる。ここは彼女の前勤務地です。来るって聞いてなかったけどイベントのお手伝いでしょうか。娘がまくしたてる。
「お母さん、あのね、お父さんがこんな格好しちゃいけないって。若いうちしか着れない服なのに」
「ふーん。確かに露出度ちょっと高めだけど、どうせあんたAカップだからたいしたことないでしょ?」
ちょっと里香さん、君までなんてこと言うんだ!
「しょうがないですよ。照喜名先生ってば男子校出身で、里香が初恋の相手で付き合ってそのまま結婚しちゃったんだから。これ超有名な話」
うわっ、多恵子さんてば変なことバラさないでくださいよ!
「えー! お父さん、お母さんが初恋だったの?」
「そうなの。だから裕太は恋愛に疎くって頭が固くて、あたしがバイクの後ろに誰か乗せるだけで怒り出すし」
里香さん、それは君がバイクを飛ばすと後部座席が結構危険だからでもあるんですよ! それより有夏梨ゆかり、その胸の谷間を何かで塞いだらどうなんだ? お父さんのiPhoneでも貸そうか?
「お父さん、娘の胸に携帯押し付けるなんてセクハラです!」
なんで携帯電話で娘の胸を隠すのがセクハラになるんだ?

僕は天を仰いだ。ああ、もう。女性陣とは話ができないよ。 (つづく)
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