24 / 102
婚約指輪は永遠なり?
2.壊れた指輪
しおりを挟むAt Ginowan City, Okinawa; April 1, 2016.
At Naha City, Okinawa; July 15, 2001.
The narrator of this story is Takehiro Kochinda.
結局、僕らはペアのマグカップを買った。家に帰るなり、妹は早速母に尋ねた。
「お母さん、ダイヤの指輪ある?」
「え?」
「婚約指輪!」
母は、なぜか寂しそうな表情を浮かべた。
「うん、あるよ。あるけどさ」
「あるんだ! 見せて! ねえ、キラキラ?」
妹は両方の手のひらを何度も裏表に返すジェスチャーをしている。やがて母は、寝室からブルーベルベットの小さな宝石箱を持ってきた。
「……あまり、期待しないでよ?」
そう言って、そっと箱を開いた。
中を覗き込んだ僕らは、呆気に取られた。
そこにあったのは、確かに、プラチナのダイヤモンドリングだったけど、肝心なダイヤモンドは、見事に真っ二つに割れていた。
あの、ダイヤモンドって、地球上で一番、硬い物質じゃなかったっけ?
「どうしたの? なんで、割れているの?」
「それがねー」
父が母に婚約指輪を送ったのは、結婚して最初のボーナスが入った次の日曜日のこと。
最初、母は断ったそうだ。あまり指輪のできない職業ということもあるが、何よりも父に負担をかけたくなかった。父は障害者で、労災や生命保険金がある程度降りてきたとはいえ、今後の生活を考えると、あまり贅沢を言っていられなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる