時給六千円の仕事

Tsubaki hime

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第1章 はじまり

4.自己肯定感

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「おはようございます」

出勤し、慣れた手つきで制服に着替えアメニティを用意し、更衣室を出て、
待機室に向かうため一度受け付けの前を通る。
受け付けの上にはその週の女の子のランキングが大きな写真で貼り出されている。

私が1位だ。

そのランキングを見て少し上機嫌になり、今日も稼ぐぞ、と少し気合いを入れる。

昼間の普通の仕事や、キャバ嬢時代には感じることの出来なかった、

"このお店で自分が1番"

という事実に、私は自己肯定感を覚えた。
それはそれは誇らしいものだった。

服の販売ではいくらがんばろうと店長には勝てなかった。
キャバ嬢ではお酒も飲めないため高額な会計など見込めず、営業メールもどうしたらいいのかわからず、1ヶ月1本指名が入るか入らないかの状態。人気嬢の盛り上げ役でしかなかった。

話は逸れるが今までの人生、何においても2番手だった。
小さな頃、兄とテレビゲームでカーレースを何度もしたが、兄が1番で私は必ず2番だった。
小学生の頃、50m走や100m走ではいつもリレーの選手の補欠止まりで、1度もリレーの選手として運動会に出ることはなかった。
バスケ部に入り、運動神経には自信があり、すぐにレギュラーにはなれた。
しかし高学年になり副キャプテン止まりであった。
市の優秀選手賞をもらったが、最優秀選手賞はキャプテンがもらっていた。

私は1番にはなれない。

心のどこかでそんな微妙な自己嫌悪感があったのかもしれない。

だから、NO.1というのは、私にとってどんな賞であれ、なによりも私を満足させたのだ。

この頃には、源氏名のもう1人の自分が、本当の自分とは分離しているように思えた。
きっとそうやって均衡を取っていたのかもしれない。

仕事が終わり、高額な手取りをもらうと、いつもの自分に戻り、どっと疲れがでるのである。
まっすぐ帰らず、かならず駅中のサーティワンアイスクリームを、がんばった自分のご褒美にしていた。

ケータイで自分のピンサロのホームページを見る。
週ではNO.1だが、月間では4番か5番だった。

受け付けの掲示板が変わるときが、いつ来るのかと思うと、
私の心は分からない何かに蝕まれる気持ちになった。
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