時給六千円の仕事

時給六千円の仕事～外伝～

カミングアウト

映画の後、併設しているショッピングモールのフードコートで、お互いに好きな料理を同じテーブルで囲む。

Sに会う前から、自分が
風俗の仕事をしていることを
話してあった。

そして彼には理解があった。

なぜなら、彼も"女性用風俗"で
働いていたというのだ。

だからお互いの情報や
お客様あるあるで少し場が盛り上がった。

食事中に2人だけの性への会話だ。


そして食事も終盤にさしかかるころ、
Sは箸を止め、改まって言った。


「実は、女性用風俗、
"やってた"んじゃないんだ、
今もやってるんだ。」


Sのカミングアウトに、驚いだが
私はそれより先に嬉しいが勝った。

そうなんだ！
同じ境遇なんだ！
本当にいるんだ、女性用風俗のキャスト！


なぜ話してくれたのか聞くと、
私があまりにもオープンに仕事のことを
話してくれたから
話そうと思ったらしい。

だってこの仕事は理解されづらい。

風俗というだけで
世間から汚い、気持ち悪い、ずるい、
そんなふうに思われる。

当時の私はそんな仕事を相手にも
理解してほしかった。
私にとっては大事な収入源であり、
天職とさえ思っていたから。
だからオープンに話した。
そして彼も経験者だったから。

そこから彼への信頼に火がついた。
この人とならお互いを理解しながら
やっていけると思った。

この人と巡り会うために
マッチングアプリをやっていたんだとさえ
思えた。