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第1章 全ての始まりの記録
abyss:13 内緒の秘密話③
しおりを挟む~~夜春の回想~~
都市が消滅してから1ヶ月後。
がれきの山々が残され消滅都市と名付けられ復興の着手さえできていなかった。
夜春は消滅都市の中心地、大きく抉られた何もない大地にローグに呼び出されていた。
爆発当時のまままだ地面が大きくえぐれている。
窪地の大地は風が強く吹き、砂埃を巻き上げていた。
ローグに呼び出された待ち合わせ場所を確認ししばし待っていると砂埃の向こうから人が歩いてきた。
ゲホゲホむせながらやってきたのはローグだ。
(…………この場所を待ち合わせにした意味は?)
夜春は砂埃で崩れた髪を抑えながら率直な疑問を浮かべた。
「わざわざ爆心地なんかに呼び出して何かしら。誰かに聞かれちゃいけない話でもあるの?」
「夜春、どうしてもあなたに伝えておかなければならないことがあってじゃな」
「ハルキをこの街に近寄らせるわけにはいかないからお義父さん達に預かってもらっているのよ。こんな場所じゃなくて近所の喫茶店にして欲しかったんだけど」
ローグはお構いなしに話を続ける。
「あの日ワシの最強の相棒を無くしてしまった。ワシは無一文になったとい言ってもいいじゃろう! あの相棒がなければわたしなんてミジンコみたいな存在。
そしてこの大地のどこかに我が故郷の厄災が生きていると考えると夜も眠れず毎日6時間睡眠が限界じゃ!」
ローグの身振り手振りが大きくなっていく。
(なんか語り出したし………… 私より寝ているじゃない。イミフだけど面白そうだからもうちょっと聞いてあげよう)
夜春は腕時計を見ながら適当に
「うん、うん、それでそれで?さすが!すごーい!」
と適当に相槌を打つ。
「アイツを追いかけて地中深くに封印して幾星霜!
まさかどこぞの誰かがバカみたいな大爆発で復活させるとは想定外オブ想定外!こんな形で友を失うとは、ふざけるんじゃなーーーい!!!
ワシはァアアアーー! 友を見つけるため、ゼロから私の持ちうる知識・能力、情報の全てを注ぎこの土地を再開発する影の支配者の権力を手に入れたァアアアアアアー!!!
まってろ夜春! 法に触れない範囲で手段を選ばず何年何十年かかっても絶対にお前たち家族を再会させてみせるぞ!!!」
(なんだろう、この熱血サラリーマンみたいなセリフ)
肩でハァハァと息を切らしながら決意表明なのか演説なのかわからないが熱量だけは伝わった。
(なんで私たち家族にこだわるのか、理由は頑なに教えてくれないのよね)
「ああ、うん。そうね、ありがとう。で、呼んだのはそれを伝えるためだけなの?」
ひゅううううーーーと荒廃した大地に風が吹き抜ける。
呼吸が整ったローグがスッと姿勢を正し、夜春に顔を向ける。
「じゃ、ワシ忙しいから仕事に戻る」
と手をあげて挨拶すると砂ぼこりの中に走って消え去っていった。
~~夜春の回想終わり~~
ああ、思い出した。どうでもいいことを思い出した。
当時かなりイラッとしたから忘れていたけど確かにそんなやりとりをした日があった。
あの場所に呼び出されて暑苦しい演説を一方的に見せられただけだ。
ローグが去った後、取り残された私は来た道を歩いて帰ったんだ。
マジであの無駄な時間を返してほしい。
ローグはあの日の演説を覚えているのだろうか。覚えているからこそ13年間をかけこの施設を作るに至った。
さっきは役に立たないとローグに言ったが、普通に考えてとんでもない建造物だ。
私が知る限り各国の諜報機関を相手に闘えるオーバーキル要素満載な技術だらけだ。
それだけに絶対に主人を見つけ出すという意思がブレていないのは確かだ。
「ワシしかあのバケモノの事は知らんが、もし解き放たれたら人類にとって一番厄介なのじゃ。
解き放たれる前に今度こそとどめを刺したいのじゃがワシの武器は今はバケモノと一緒にあるはずじゃからのぅ。仮に地球の兵器だけで倒せたとして…………
代償は消滅都市以上の甚大な被害が人類に出るじゃろうな」
「ねぇ、そのバケモノが敵側の手にあるならどうして13年近く封印されたままか説明できる? バケモノが自分で復活できなくても、第三者が封印を解くことはできないのかしら?」
「封印が解かれているなら人類の手に余る代物、すでに世界は滅んでいてもおかしくはないのじゃ。まだ何も起きていないということは、封印されたままと見ていいじゃろう。
ワシの相棒の適合者になったハルキの手に戻すということはアイツの封印を解くことになる。封印を解いたら倒さなければならなくなる…………。
5歳の子供になんて負担を負わせてしまったんじゃ。あの子が成長するまで待ってみたが世界は何も起こらず平和じゃったのにのぅ。
将暉を取り返したいというワシらのエゴで事態を動かしてしまったのじゃ」
夜春は考え込み、一つの答えを導き出した。
「もう一度整理しましょう。当時の契約のことはあるけどもう少し先延ばしにしちゃって、封印を解かなくてもいいんじゃないの?」
「あーーー、うーーーん! そうじゃな、解決法を先延ばしにするだけじゃが今は封印を解かないで対処する、が一番かもしれないのぅ」
「ハルキにどう説明するかのぅ。知らない方が彼の人生は幸せなんじゃが」
「その時の状況で判断しましょ!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夜春とローグは改めてお互いの認識のズレと目的を擦り合わせるため話し合った。
①ローグは【封印されているものを封印を解いて倒す】という意識に向いていた。
➡無理して封印を解かない限り甚大な被害は限りなく低いとなり解かないことになった。仮に、いつかどこかの未来で封印が解かれたら厄災が起きる可能性はある。
その時に対処できるよう今以上の準備と火力兵器を蓄えることにした。
②夜春の夫である将暉は生きているがどこにいるかわからない。
➡監禁されている場所を特定し救出、同時に敵地を殲滅する。
急にスケールが小さい?話になったような気がしているがこのほうがむしろ現実的だ。
とはいえ敵は13年間、将暉を監禁し身を隠せるほどの組織力を持っている。
襲撃してきた人物の戦闘力といい侮れない。
話が纏まったところでローグは夜春を別室に案内した。
10畳くらいの広さの部屋の中に銃やナイフ、爆弾などの武器がずらりと並んでいた。
「ローグ、あなただいぶ危ない橋を渡っているわね」
武器を眺めながら夜春はニヤリと笑う。
「お互い様じゃろ。必要な武器はすべて準備しておる。好きなのを持っていくがいい。
戦闘服は弾丸が貫通しない生地と特殊繊維で縫製してあるぞ。武器がたくさん隠し持てるようにポケットもあちこちにつけてある。うちの最新技術で小型軽量化、威力倍増にカスタムしてある芸術品じゃ」
ローグもニヤリと悪そうな顔をする。
「それと………… これは頼まれていた階堂ティナの身辺資料じゃ。オリジナルデータはこれだけなので見終わったら破棄してくれ」
と小さなメモリーチップを夜春に渡す。
メモリーチップを受け取り側面を押すと夜春の前にティナの情報がバババババと立体投影された。
「ふんふ~ん」
立体データに触れ指でとっかえひっかえ交互に見比べながらとある項目が目に止まった。
夜春が呻いた。
「そう、どうりで…………」
「びっくりしたじゃろ。いつかそのことを知られた時、どんな顔をするのか楽しみじゃのぅ」
「この血の運命を感じるわ………… みなかったことにしよ」
と、夜春はメモリーチップを床に落として踏み潰した。
2人の間にしばしの沈黙が生まれる。
「ローグ、私そろそろ着替えたいから部屋から出てってくれる?」
「ああ、すまん、ではここからは各自判断でオペレーション開始じゃ」
「おっけー!」
部屋を出て指令室に戻るローグ。
必要な武器を並べ着替え始める夜春。
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