カーネイジ・レコード

あばらい蘭世

文字の大きさ
38 / 61
第1章 全ての始まりの記録

abyss:36 地下エレベーター

しおりを挟む
梢にもらったスマホは廃墟区ダストのある座標を指している。

廃墟区ダストは無人ではなく、が世間から身を隠している場所だ。ビルのあちこちから視線を感じる。
が、誰も手出しをしてくる者はいなかった。

夜春がスゥーーーーと歩いていると、焚き火をしていた1人のホームレス男が声をかけてきた。
夜春は一瞬でナイフを前に構える。
「おっと、おっかねぇなあ!何もしねぇよ!ねぇちゃん、この先にいく気か?」
髪も髭も伸びて、ボロボロに破れたスーツにネクタイを3つしている中年の男だ。
「そうよ、それが何か?」
「興味本位で聞いてみただけだ、ここから先に行ったやつは誰1人戻ってこなかったからな」
「そうなの?」
「戻ってこなかったっていうか、さらわれたっていうか、神隠しっていうか、気味が悪いから誰もこの先にはいかねぇんだ」
ホームレス男の言うことは事情を知らない者が聞けば支離滅裂で信憑性のない話だった。
が、実際にこの先にAXアクスという敵地の入口があることを裏付ける話になった。
「忠告ありがとう、気をつけるわ」
遠目にホームレス男を通り過ぎる。
「もし戻ってこれたら何があったか教えてくれよなーーーー」
背後からホームレス男の声を無視して夜春は人が立ち入らない場所に踏み込んでいく。

スマホが示す座標のビルの前に来る。
何一つ灯りがなく、暗く冷たい空気が奥から流れてきている。
俯瞰図を見ながら地下に続く階段を降りていく。
薄暗いが僅かに光がともされている地下空間だった。
薄汚れて埃まみれの空間だが、最近の足跡が壁に向かって伸びていた。それを辿って近寄ると壁が左右に開閉し、中にもう一枚白い壁が現れた。

ガガガン・・・・

白い壁が左右に開く。車両3台は運べそうな大きなエレベーターがあった。
夜春はエレベーターの中に誰もいないことを確認。中に入る前に自分のジャケットとズボン、に装備してある残りの武器をチェックした。
スマホの内部構造を俯瞰図から断面に切り替えるとこのエレベーターが地下に下がっていく。エレベーターの中に入る。
地下はB1しかないがかなり深いところまで降りていくようだ。
ボタン押しドアが閉まる。
壁に背を向け目の前の何もない空間を警戒する。

ガガガン・・・・

ゴォオオオオオオオオ

機械音を響かせながら下へ下へとエレベーターは地下に潜っていく。

「やるじゃないか」
壁を背にしていた夜春の左隣から唐突に声がした。
夜春は全身がビクッ!っとなる。
油断はしていない。周囲の気配、警戒はMAXしていた。
自分の隣は何もないし、誰もいない。
エレベーターの壁の中から黒いヘルメットを被った男がトコトコと出てきたのだ。
(どうやって壁の中にいた?)

パンパンパンパン!!!

驚きつつも冷静に問答無用で胴体とヘッドに銃弾をぶち込んだ。
銃弾はヘルメット男の身体を簡単に貫通し背後の壁が火花を散らす。
ヘルメット男の姿にノイズが走る。
「いきなり撃つとは、相手が何か重要な情報を持っているかもしれないとは考えないのかね、君は」
ホログラムによる立体映像だ。気配がなく壁をすり抜けて現れたのは実体がないからだ。
「あなたがボス?」
立体映像に銃を向ける意味はないが、警戒しながら話しかける。
黒いヘルメットの顔部分に笑顔と泣き顔の顔文字が交互に表示される。
「いかにも、ただ自己紹介は省かせていただく。自己紹介は、そうだな最終ゴールまで辿りつけたら教えてやろう。辿りつけたらな」
「私が探している主人がここにいるって聞いたんだけど、早く返しなさいよ」
「部下がネタバレしてしまったのか。それは困ったな、計画が狂ってしまったじゃぁないか。確かにあいつはまだ生きている。
私の計画はお涙頂戴の感動の再会をさせてやった後に息子共々まとめて殺すつもりだったんだがな」
「…………」
「部下によるネタバレは面白くない。下で待ち伏せしている迎撃部隊に命令オーダー変更を伝えよう。とな。
旦那に会いたかったらせいぜい死なずに死ぬ気で頑張りたまえ!」
「なんで私たちにそこまで固執するの? 彼が、私たちがあなたに何をしたのよ」
「ふぅ、これもネタバレになるか、面白みに欠けるから言わないつもりだが
─── あの野郎…………! いつもいつもいつもお前との惚気のろけ話ばかりしやがって! 俺の嫁は世界一! 子供は天使可愛い! って勘に障るんだよ!!! 他人の幸せなんかどうなろうといい!!! 
は…………!!!」
ヘルメット男は何かを言いかけたところで言葉に詰まりだまった。

夜春はこの男の発言から二つの質問が浮かんだ。
1つ、主人とヘルメット男は昔から馴染みがあること。口ぶりから13年前の爆発直前も一緒にいたこと。
2つ、自分と息子のことについてなんて言っていたのかもっと知りたかったこと。
どちらを質問するか考えたがネタバレをこれほど嫌うヘルメット男はきっと事実は話さないだろう。
「嫉妬? 主人が私たちの事なんて言っていたこともっと聞かせてちょうだい」
「うるさいうるさい! バーカバーカ! 誰が教えてやるもんか! 真実と真相を知りたかったら最深部の私のところまで来れるものなら来てみろ! やーい!」
ヘルメット男は癇癪かんしゃくを起こし手足をバタバタさせている。
登場時の冷静さをすでに無くしているようだ。
(まるで子供ガキね)
かと思いきや
「そろそろ下に到着だ。準備したまえ」
と急に冷静になってアドバイスをくれる。
(解離性同一症?)

ヘルメット男の不可解な言動と態度に違和感しかなかった。
「すぐにブッ潰してあげるから震えて待っていなさい」
夜春はヘルメット男を睨んで告げる。
「ふ、は! では戻る。君の旦那には君がここで死んだと伝えておくさ」
そう言ってヘルメット男はエレベーターのドアに向かって歩き、ドアの壁の中に消えていった。

夜春はジャケットから武器を選び攻撃の準備を完了した。
「さーて準備運動は終わったし、ここから本気マジで行くわよ」

ゴゴゴゴン……

エレベーターが止まり、大きなドアが左右に開いていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

処理中です...