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第1章 全ての始まりの記録
abyss:37 悪夢(メア)
しおりを挟む刀を顔の前に構え自分に覚悟を言い聞かせる。
「いま!主人を救出する為にこれまで培った私のすべてをここに出し切る!」
ゴォン
音と振動でエレベーターが地下1階に到着。
おそらくドアが開くと同時に何かしらの一斉攻撃をされるだろう。
夜春は今いるエレベータの端っこの隙間に身を隠しジャケットからスモークグレネードを3つほど投げる。煙幕がエレベーター内に充満し、視界を塞ぐ。
ドアが開きスモークが外に漏れ始める。
ゴゴゴゴン・・・・
俯瞰図で確認していた通路はエレベーターの幅と同じ広さ、高さ、光る真っ白な壁に真っ直ぐ奥まで続いている。
白と黒色のお揃いの戦闘服を着た男女混合の二軍落ち戦闘員たちが待ち構えている。
手にはマシンガン、ハンドガンが握られていた。
全員が無表情で感情が死んだ目をしている。
ドガガガガガガガガガ!!!!バババババババ!!!
外からマシンガンで一斉射撃されエレベーター内は蜂の巣にされる。
煙幕が充満していたため夜春の位置が特定されることはなかった。
ドガガガガガガガガガ!!!!バババババババ!!!
マシンガンを撃ってきた集団は弾が切れたらマガジンをリロードする。
リロードの瞬間を狙い廊下に漏れた煙幕に隠すように手持ちの手榴弾とスタングレネードを戦闘員の足元に全部ぶん投げる。
故に手榴弾とスタングレネードが自分たちの足元に転がってきていることに気がつかなかった。
バァン! ババァン!!! バシュンピカー!
マシンガンを撃っていた前線の集団は普通の手榴弾より威力のある爆発をくらい廊下や壁面に噴き飛ばされた。
前列の多くの戦闘員たちが盾になったおかげで手榴弾の被害を辛うじて受けなかった戦闘員たちは同時に投げられたスタングレネードによって視界と聴覚をやられ動きが止められる。
煙幕の中から低い姿勢と瞬足で飛び出してきた夜春は梢から貰ったサイバーパンクな刀を体重を乗せた古武術と零距離格闘術の動きにプラス遠心力で舞うように斬りつけ猛進する。
戦闘員の服が防刃・防弾仕様になっていても達人の領域が振るう刀の前で防御力は皆無になる。
夜春の地を這うような素早い動き、黒い服が漆黒の残像を残し流れるように戦闘員たちの間をすり抜ける。
夜春がすり抜けた後は、血飛沫を飛ばし両手足、首、胴体のどこかを斬り落とされた屍か辛うじて生きている戦闘員が地べたに次々と崩れ落ちていく。
夜春は戦闘員たちの動作、初動、銃口の向きを確認しながら無駄な動作なく弾を避け続ける。
夜春の瞬足に目と体の反応が追いつけずマシンガンやハンドガンは戦闘員同士の撃ち合いになった。少しでも自分の手を煩わせずに敵戦力を削いで体力を温存しておきたい。
戦闘員の防刃服を斬りすぎたため、刀に刃こぼれが出来て切れ味が悪くなってきた。
戦闘員が爆弾を投げようとしていたのを目視。そいつの頭に向かって刀をぶん投げる。
刀は頭に突き刺さり、手に持っていた爆弾は戦闘員の足元に落ちる。
ドゴォオオオン!!!
周囲を巻き込んで爆発した。
夜春は倒れている戦闘員の下に隠れ、両手で耳を塞ぎ口を開けて爆発の衝撃をやり過ごす。
黒煙で視界が見えにくいが呼吸を止め、倒れた戦闘員が持っていたマシンガン2丁を足で踏むように弾く。回転しながらマシンガンが両手に収まる。
戦闘スタイルを中距離攻撃に切り替えた。
ドガガガガ!!! ドガガガガ!!!
パルクールするような動きで広い通路内を縦横に飛び回りマシンガンで戦闘員の頭を吹き飛ばしていく。
弾がなくなればマシンガンを戦闘員の喉や眼球に突き刺し、倒した戦闘員から新しいマシンガンを奪っていく。
首にマシンガンの紐をかけていればそれを引っ張り倒してもう片方の手に持っているマシンガンで撃ち抜く。
飛び散る返り血、肉片を全身に浴びながら夜春の進撃は全く止まることはなかった。
マシンガンを持っている戦闘員を倒し切ると次にマチェットを持っている戦闘員たちがいた。残りの残弾で何人か倒したがマシンガン戦闘員がいなくなったので新しいマシンガンの補充はできそうにない。
もうちょっと楽をしたかったが無いものはない。
マシンガンをトンファーのように振り回す。
マチェットを余裕で躱し、受け止め、受け流しつつ銃口で突き刺し、銃身で殴りつける。
頭部、顔面、首、肩、腕、胴体、下腹部の急所を的確に打撃で潰していく。
これだけ敵が殺られているのに夜春が通り過ぎた後はとても静かだった。
痛みを感じないのだろう、うめき声すらあげない。僅かに息があるものがモゾモゾともがいて服が擦れる音だけをさせて失血で静かに死んでいくのをただ待っているだけだった。
敵側が殺しに掛かってきているとはいえ、たった1人の侵入者に為す術がなくただ殺されに行っているだけだった。
元・人間をどれだけ殺しても夜春の勢いは止まらない。
どれだけ血を浴びても表情すら変わらなかった。
13年間探し続け、会いたいと願い続けた愛する主人にようやく会うことができる。知らない他人を気遣う必要はなく、命令されているといえ自分を殺しに掛かってくる人間相手に情けは無用。
人殺しは今回が初めてではない。悪の組織は数え切れないほど潰してきた。
二ヶ月前の任務で海外のテロ組織を潰してきた。
涙は枯れ果て、罪悪感は微塵も感じなくなっている。
(私が選んだ人生、私の選択に後悔はない)
マチェット軍団相手に少し疲れを感じてきた。
ちょうどぶん殴っていたマシンガンの耐久がなくなり打撃武器の限界がきた。
「さすがに数が多すぎなんだけど」
マシンガンから手を離し、ジャケットの中からハンドガンを取り出す。
パンパンパンパパパパン!!!
まだどれだけ戦闘員が残っているのかわからなかったが体力回復のためハンドガンに切り替えた。
(持っているマガジンがなくなったらナイフで切り抜けるしかないわね)
パパパパパン!パンパンパパン!!!
次々に戦闘員たちを撃ち殺していく。
◆◆◆
戦闘員たちの後方に1人の外国籍の男がいた。
アメリカ人のこの男は7年前にテロ行為を起こそうとした組織にいた。
大量の武器を揃え、大型爆弾を市街地に輸送し爆発させ都市機能が麻痺したところで銀行を襲う計画だった。
数ヶ月の準備をして計画は完璧だった。が、1人の特別捜査官の襲撃によって組織は壊滅した。
仲間が全員死ぬか捕まった中で彼だけが運よく逃げ延び日本に密入国できた。
新世界都市の旧・高層区を根城にしていた悪い企業のボディーガードとして身をひそめていたが、5年前のバブル崩壊時に負債を抱えた企業の上層部ごと失踪という形でAXに誘拐され本拠地で人体実験を受けた。
ついさっき侵入者排除の命令が下り配置についた。
(侵入者は1人、最前列の奴らが頑張って片付けてくれるだろ)
と、楽な最後尾のポジションに回った。
この男に感情と記憶が消されなかったのは、実験結果が戦闘員ほどではないがそこそこ優秀だったためだ。
最前列で爆発音が何度かして銃撃戦の音を聞いていた。
いつまでも鳴り止まない銃撃音を聞いて
「たった1人に何を手こずっているんだよ」
と最後尾の自分までは辿り着けないと余裕でいた。
しかし戦闘解除の指示がこない。銃撃音は徐々に近づいてきている。
「ファック! 相手は何者だ!!!」
遠目に死闘を繰り広げている戦闘員たちの隙間から敵の姿が見えた。
(───!!!!)
脳裏に蘇る最悪の記憶。
漆黒の影のように動き回り、どれだけ近かろうと弾が当たらず接近戦によるナイフで悉く惨殺されていく当時の仲間たち。
(見間違えるはずもない。あの姿は組織を壊滅さやがった女だ! なぜいる!?)
闇組織の情報網の中で賞金が掛けている暗殺対象の一人…………
「確かコードネームは─── 悪夢!」
男は間違いなく殺されると知り、他の戦闘員たちを押しのけて反対側の通路に駆け出した。
パン!
「ウガァ!」
男は背後から背中を撃たれ倒れ込む。
(まだ俺まで距離があったはずだ!)
振り向くと他の戦闘員たちを倒しながら男を睨んでいる夜春と目があった。
(こいつからは逃げられない…………!)
絶望し腰が抜けた男は立ち上がる気力がなくなっていた。
倒れた男の目の前では戦闘員たちが倒され数が減っていく。
気がつけば自分以外の戦闘員は全員いなくなっていた。
男に銃口を向け静かに歩み寄る夜春。
「あなた、さっき面白い名前を口にしたわよね。
悪夢って。どこで会ったのかしら?」
どんな聴力しているんだ、と思ったがそんなことより男は恐怖から汗が吹き出し喉が渇き上手く喋れない。
「こんなところでその名前で呼ばれるとはね。仕留め損ねた生き残りってところかしら」
男は最後の力を振り絞り銃を向けようとしたが
パパン! カチッ
銃を向ける前の動作で夜春に頭を撃たれ絶命した。
「なんでもいっかぁ」
他に戦闘員がいないか周囲を確認し壁に背中をつける。
「疲れたぁあーーーー!!!多すぎでしょー!!!!こいつらの食料と食費どうしてんのよ!!!」
その場にへたり込む。
「敵さんけっこう殺ったなぁ。みんなちゃんと成仏してください」
筋肉疲労から全身がブルブルと小刻みに震える。
「主人を取り戻したら普通の主婦したいな…………」
もうすぐ実現出来そうな3人で暮らす家庭を想像しちょっとウルっときた。
「いかんいかん、油断はダメ!」
と両頬をパチンと叩き立ち上がる。
ふぅーと一呼吸し顔を引き締める。
スマホで位置を確認するとこの先の本拠地まであと少しだ。
最後の男が着ていた戦闘服を無造作に掴み顔についた血をゴシゴシと落とす。
マガジンが切れた銃を捨て男の持っていた銃を拾う。
夜春は静かに本拠地に歩みを進めた。
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