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第九話 奇妙な道連れ
しおりを挟む「でちさんや、でちさんは何が好きなんだ?」
「でちちー」
「…………ところで背負ってるバックパックには何が入ってるんだ?」
「でちっ、でちち」
「うん、やっぱり何言ってるかさっぱり分からない」
謎の二頭身生物が勝手についてきて2日が経った。
小人みたいで人間に近いんだろうけど勇者時代にとある事情で本物の小人を見たことがあったが、彼らは普通の人間を小さくしただけでこんな珍妙な姿じゃなかった。
ずっと観察してたけど生態がよく分からない。
探求心が強いメリルなら何年もかけて解き明かそうとするだろう。
流石に2日じゃ短すぎるのはわかってる、せめて鳴き声(?)くらい理解したいものだ。
ちなみに俺は彼(?)のことをでちさんって呼んでる。
名前の由来はもちろん『でち』としか喋ったことがないところからだ。
「でちち?」
「何考えてるのか考えてたんだよ」
「でちー」
何か伝えたいようだが、何を言ってるかさっぱりだ。
パタパタと腕を振って何かを表しているが、本当に何を言いたいんだ?
でちでちと言いながら歩き、たまに俺によじ登ったり謎の行動が多すぎる。
こんなの引っ付けて町に行って大丈夫なのか?
「やあ、でちさん。今日もいい天気だね」
「でちの旦那!今日はこっちに来るのか」
「でちちー」
うん、ちょっと待とうか。
「あの、この子とご知り合いで?」
「ん?あんたでちさんを知らないのか?」
通りすがりの旅人らしき人物に聞くと「何当たり前なこと言ってるんだ」という顔をされた。
「もしかしてあんた別の大陸から来た?それならでちさんを知らねぇか」
「でちちー」
「そういうのは良いから、一度こっちには来たことあるけど見かけたことすらないぞ」
「魔王が倒される少し前から現れたんだ。そん時に魔物に荒らされた村の援助をしてくれたんだ。見た目は変だし何考えてるか怪しいけど、あの時の俺らにとっちゃ大助かりさ」
「でちー!」
まるで誇るようにどや顔で両腕を上げたでちさんはそのままコロンと後ろに倒れた。
なんか愛嬌を振りまくってる感があるな。
でも食事とかは自分で用意した物しか食べないし、緑の野菜っぽいのはたまにそこらへんに生えているのを抜いて美味しそうにかじってる。
肉はいらないのかと差し出したら威嚇された。解せぬ。
まあ、そんな感じで今まで過ごしてきたわけだが、でちさんと一緒で町に来たらすんなりと入れてくれた。
「でちさん!また来てくれたんだね」
「でち公が帰ってきたかぁ。随分早いお帰りだったな」
「その人が新しいお友達?結構かわいい顔をしてるわね」
「でちちー!」
でちさんがいるだけで身元不明の行商人に対してこんなに信頼を得られるのか…………
外から来た人が見たら明らかに怪しいのになんやかんやですごい人(?)だな。
でも、なんか悔しいな。
20回も繰り返したのに、こんな小さなところで苦しんでる人がいることに俺が気付かないって。
背負いすぎなのかもしれない、傲慢なのかもしれないけど正直に言うと腑に落ちない。
「でち?」
「お前はいつも能天気そうだな」
「でちー!」
この鳴き方は喜んでるのか?
まあ、笑顔だから褒められてると思ってるんだろう。
さて、それじゃあ俺も商売を始めるか。
「王都で買った品、あるよー!」
~●~●~●~●~
「お、おい!いったいどうなってる!」
「子供をこっちに来させるな!」
帝国に最も近い港町で凄惨な事件が起きた。
この町で坊ちゃん(笑)と呼ばれていたデブルという男が晒されるように惨殺された。
その遺体の状況というのは酷い有様で、もはや人型をとどめていないただの肉塊になっていたとと一応述べておこう。
傷跡から火傷だけでなく凍傷らしい痕まで残っていた。
こんな殺され方は拷問に等しいだろう。
だが、こんな姿になるようかつ気疲れないうちに殺せるのはいったい何者なのか。
「これは何のありさまだ?」
「あなたは、異国の騎士様で?」
「そうだ。いったい何が起こっている?」
「この町のを取り仕切ってる町長のドラ息子が殺されたんだ。いつ殺されてもおかしくはないと思ってたがこんなに早く殺されるとは…………」
海を渡ってやってきた騎士の鎧に包まれた人物は野次馬をかき分けて死体を見に行く。
「…………メリルか、それとのジャンヌか」
それを見て一言、誰にも聞こえないように兜の中で呟く。
騎士、アリエルは既にデブルを殺害した手下人をの予想ができていた。
恐らくこの男に何かの悪評があったのだろうと予想した。
しかし、論理は抜けているが正義感が強い二人がここまでする見当はつかなかった。
「どうでもよいか」
「どうでもよいって、騎士様はなんでここに?」
「人探しをしてここまできた。リクトという名の…………今は行商人をやっている人を知らないか?」
その言葉を発した瞬間、空気が凍った。
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