究極生命体のダンジョン作り!

雷川木蓮

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動かざること山の如し

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「あむあむあむっ、あ、それアタシの!」

「うっさい!私が先に取ったんだから私のに決まってる」

うっさいのはお前だ、と言いたいが俺は静かに立ち食いしている。騒がしいところにいるからこそ優雅たれ、誰かが言ったと思う。

さて、状況を説明しよう。会食が始まってやや5分で修羅場と化した。見渡す限り、おっさんが12人で爺さんが6人、他のギルドマスターらしいおっさんと爺さん達の中を見て数人、と言うことらしい。

まだ男性の事しか言ってないが、問題は女性陣だ。

女性陣はうちのギルドマスター含めて21人がここにいる。一部は普通の人、多分お目付役の人たちだろ思う。なんでお目付役の人だと思ったかというと、残りがゴツいからだ。

いや、体型的な事じゃなくて装備がゴツいんだ。装備がガチガチの鎧をつけて飯のを取り合いながら殴り合ってる姿を見ると、何というか、その、新人だってことは分かる!

「喧嘩屋、あれには関わらない方がいい」

「うん、知ってる」

うちのギルドマスターがそう言ってくるけど本当に関わりたくない。

ああいう女達ってこの世界のヤンキーというやつだろう。絡まれたら滅茶苦茶うざったい。前の世界でも、俺が住んでた街にヤンキーというか暴走族がいっぱいいたからたまに絡まれることがあった。話が通じない奴らばっかりだったのでその時の対応は拳で語り合う他なかった。

うん、俺の経験からあいつらはあの時の暴走族と変わらない感じを出してる。触れたら周りが火傷する、ただ迷惑な存在。

「ちゅーちゅー」

「…………………………………………」

ハピはここで出された花の蜜を吸ってるし、メジェドさんは俺の周りをウロウロしてるだけ。俺にとってはとてもつまらない。

話しかけてくるのは誰もいない。チラチラ見られることはあっても会話はしない。とても寂しい状況に置かれている。

「テメェ、ふざけんなよ!」

「アンタこそ横取りを!」

近くでは品が無い女達が取っ組み合いの喧嘩をしている。それを止めようと必死になる者もいるが止められないらしく、弾き飛ばされている。

あーあ、なんで俺こんな客観的に見てるんだろう?あの中に混じるにしても面倒事しか起きる気がしない。だって何かとトラブル体質だから。

こういう言葉を聞いた事がある。『この世は不思議なもの。強くなりたくない、戦いが好きではない者ほど、理不尽な戦いに巻き込まれるものだ』と。

確かにダンジョン経営しながら人を間接的に殺したけど、殺す事に関してあまりいい気はしない。

あの時は相手が盗賊みたいな輩だったから薄れてたけど、普通の冒険者だったら、俺はどうするんだろうか?どうなるんだろうか?

弱肉強食という言葉で、そいつが弱かったのが悪いという言葉で割り切れるのだろうか?

そして、こんな世界で直接、俺の手で誰かを殺す事があるのだろうか?

あー、未来の事を考えても仕方がない。未来を考える奴は神様になるつもりか、と馬鹿にされる民族もいたりするんだ。

だから今は目先の事を考えよう。そう、この会食からどうやって退出するかだ。

「あ、これ美味しい」

まあ、会食だし美味しいものを食べながら考えるけど。流石は王が住む城での食事だ、

「まあまあ、そこらへんに…………」

「ババアは黙ってろ!」

「誰がババアだ!」

はい、止めに入った人も参戦しました、と。何この連鎖的な喧嘩は?徐々に喧嘩する雰囲気が広がっていってる。

そんな中でも変わらないのが男性陣とうちのギルドマスターだけだな。会話しながら食べてる、ハピとメジェドさんもそうだけどな。

あ、このポテトサラダもどき美味しい。

「やったなこんにゃろう!」

ガッシャーン

「くっ、皿を投げるな!」

その皿、俺に当たりましたが?当たっても無視してくるんでしょうかね?ん?しかもこの皿は肉が乗ってたらしくてベッタベタになったんだけど。

「喧嘩屋、大丈夫?」

「これくらいなんともない」

着物が汚れそうだか、汚れは全く吸い込まずに下に落ちていった。魔法や呪いを反射できるのは知ってたが、汚れも付きにくいんだな。

さて、そんな事は気にせずに食べていこう。誰かと話をして情報を引き出さねば。そのギルドに誰がいる、どんな奴らがいるか、誰か気の会う人はいないかなぁ?

「おら死ねやぁ!」

「無駄だよ!」

魔法と剣を交えた喧嘩が始まった。喧嘩屋として参加したろうがいいかもしれないが、場所が場所だ。王城をぶっ壊すとなればタダじゃおかないと思う。

はぁ、やれやれだな。やっぱり面倒ごとに巻き込まれるのかぶへっ!

「あ」

「あ」

「ん?」

「…………………………………………」

俺の顔面に魔法が当たった。ついでにかけてた伊達眼鏡が壊された。

壊れた眼鏡が俺の顔から滑って地面に落ちる。しん、と静まり返った空間が辺りを占める。ギルドマスターは表情には出てないものの、少し焦ってる感じがする。

俺に魔法を当てた奴と喧嘩してた奴も動きは止まって

「アンタが避けるから当たったじゃない!」

「はぁ?テメェのコントロールが下手くそだからだろうが!」

「あぁん?ふざけんじゃないわよ!」

と、まあ再び喧嘩をし始めた。それにつれて周りの数人も衝突して喧嘩を始めて修羅場と化す。

おい、俺の被害を省みる奴は誰もいないのか?

「喧嘩屋、大丈夫?」

「もう声かけてくれるのはギルドマスターだけか……」

「なんか、こんなとこに、連れてくるんじゃなかった」

「この会食はいつもこうなのか?」

「いや、今年は荒れすぎ」

今年は馬鹿が馬鹿やってるだけか。まだ若いってのもあるだろうけど、あそこまで暴れたらダメでしょ。

それでもうちの使い魔は全く何も変わらないし、もう外に出ようかなぁ。

ドカン!ガッシャァー!

今度は机が飛んできた。でも、それは桜吹雪をふるって人がいない横にぶっ飛ばした。というか粉々に砕けたんだけどな。

いい加減、喧嘩を止めたらどうかなぁ?会場が戦場になってるし…………

「喧嘩屋、逃げよう」

「ストレートに言うな。賛成だ」

ギルドマスターとの短いやり取りを終わらせ、ハピを肩の上に乗せてゆっくりこっそりと会場を出ていった。

後日、あの時に一切動じなかった俺の姿を見て誰かが山のようだと言ったらしい。

どんな事をされてもなかなか動じない。動かざること山の如し、というやつだな。

そして、この件が過ぎた後に俺のあだ名が『不動山の喧嘩屋』と呼ばれる事になったのは非常にどうでもいい話だ。

不動山って不動産に似てるよね。俺の感想はそれだけ。以上、会食終わり!
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