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魔王城は今日も賑やか
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最近、魔王ウェーンはある人間にお熱らしい。そういう噂が城下町で流れていた、が、そんなのはいつもの事だ。
魔王軍は種族問わず腕の立つ者、策略に長けている者をスカウトし強くなっている。だからこそ住民は過酷な魔界での生活に怯えず暮らせるのだ。
さて、いつもは北町健五の視点だが興を変えて魔王城に目を向けてみよう。
~●~●~●~●~
「魔王様、このパガンにもう一度あの男と戦わせてください!」
「ダメ、ヌシが倒れたらお主の跡を見つけるのが大変だからの」
「パガンの命はどうでもいいんだ」
「なんの!我が武士道は雄々しく戦い美しく散る!よい戦いに命を散らす覚悟だ!」
実はこのやりとりはあの日以来、毎日されている茶番に近いものになっていた。パガン本人は真剣そのものだが仕事を放り出して私事の戦いをしようとするのを止めるだけの茶番だが。
「パガン、妾に溜息をつかせる気か?」
「滅相もない!このパガン、魔王様に心労を煩わせる事は一切しておりませぬ故に!」
パガンという男、鬼人族の大男は魔王軍将軍であり魔界四天王と呼ばれる者たちの三番目に位置している実力者だ。
ただし、戦いと戦争以外の頭は控えめに言って衰えている。率直に言うと馬鹿なのである。
「ねーねー、魔王様ー、城下町にいいスイーツ店が出来たからお忍びで食べに行きませんか?」
「エラルト!お前は口を開けば甘味の話ばかり、しかも魔王様を気軽に誘うとは何事か!」
「ふむ、ヌシが進める店はこの前に全部制覇したからのぅ。時間が空いたら行ってみるとするかの」
「…………この前というのは書類だけ残った執務室の件じゃなかろうの?」
「うむ、その時だ」
はぁぁ、と執事らしい初老の男が深い溜息を吐いた。
魔王ウェーンは弱小貴族から実力で魔王まで成り上り、執事はその時からずっとウェーンに仕えている。だからこそ性格も分かっており止めてもいつの間にか実行してる時が多々ある。
それが誰もが知る魔王ウェーンに対しての一番の悩みでもあった。
しかし、それはいい方によく転がり悪い方には転がったとしても魔王だけが損をするというので全員が全員という訳ではないが諦めている。
いい方に転がったという成功例は軍に人間を参入させる事だ。元々、魔界の魔獣は人間界よりもはるかに凶暴で潜在的に強い人間を、稀に魔王直々にスカウトして取り込んでいる。
スカウトに成功した人数は軽く千人を超えていた。しかも、ほとんどが無名で才能を開花させるのに少し苦労するが十年もあれば立派に軍の一員となる実力者となる。
強い人間もスカウトするが、その時は四天王か執事、魔王直々に話に行くこともある。
しかし、人間界と戦争中なのにここまでのんびりした空間になってる魔王城。ギスギスした空気もなくかなり平和的になっている。
「爺や、いつになったら人間界と和解できるかのぅ?」
「分かりませんな。全ての魔族を悪とみなし傲慢に人こそが正義だと語ってる連中に灸を吸えないと意味がないのじゃ」
「むぅ、それに比べてケンゴは素晴らしいぞ。妾らが直接行くと例外一つ除いて敵意を持たれるのに、あやつだけ何も妾側に敵意や害意を一切持っておらんかった。ああゆう人間が溢れかえればいいのにのぅ」
そもそも、どうして人間界と魔界が戦争中なのか。実はこの場で最年長である執事の爺やですら知らない。
なんとなく戦争をしなければいけない
そういう固定観念が人間界にある、という事だけはとっくの昔に魔族によって解明されている。
魔族の人間界に詳しい学者の研究によると、人間界で信仰している神がそうさせているとの事だ。
スカウトした人間から話を聞いても「あれ、本当に何で戦争をしてるんだ?」という反応になるから無意識的な洗脳をかけられている事を解明したのだ。
「と、説明口調で語ってみたり」
「またキュロスの妄想が始まったでござるな」
「妄想じゃないもん!知らない人への説明だもん!」
ギャーギャーワーワーと重要な会議でもないのに四天王同士がつまらない言い合いを始める。
その隙に魔王がいなくなった事はまだ気づいていない。
「なっ!魔王様が逃げ出したぞー!」
「魔力を辿るのじゃ!昨日と一昨日の分の書類仕事をさせるのじゃっ!ぐぁあっ!?」
「おじいちゃん興奮したからまた腰やらかしたよ!医療班!」
魔王城は大騒ぎ、毎日のように四天王同士の口論に週に一度の爺やのギックリ腰、そして毎日のように逃げ出す魔王。
これが魔界の日常。魔王は何しに行ったかって?
お熱の人間をまたスカウトしに行ったのさ~
まあ、居なかったらしいけどね。その代わりちょっとだけ怪我をして帰ってきたから誰かと手合わせしてきたのかな?
え、短いって?まあ、これ番外編みたいなものだしこの話の字数は空白と改行除いて1981文字だもん。ギリ2000文字なくても短くていいよね。
魔王軍は種族問わず腕の立つ者、策略に長けている者をスカウトし強くなっている。だからこそ住民は過酷な魔界での生活に怯えず暮らせるのだ。
さて、いつもは北町健五の視点だが興を変えて魔王城に目を向けてみよう。
~●~●~●~●~
「魔王様、このパガンにもう一度あの男と戦わせてください!」
「ダメ、ヌシが倒れたらお主の跡を見つけるのが大変だからの」
「パガンの命はどうでもいいんだ」
「なんの!我が武士道は雄々しく戦い美しく散る!よい戦いに命を散らす覚悟だ!」
実はこのやりとりはあの日以来、毎日されている茶番に近いものになっていた。パガン本人は真剣そのものだが仕事を放り出して私事の戦いをしようとするのを止めるだけの茶番だが。
「パガン、妾に溜息をつかせる気か?」
「滅相もない!このパガン、魔王様に心労を煩わせる事は一切しておりませぬ故に!」
パガンという男、鬼人族の大男は魔王軍将軍であり魔界四天王と呼ばれる者たちの三番目に位置している実力者だ。
ただし、戦いと戦争以外の頭は控えめに言って衰えている。率直に言うと馬鹿なのである。
「ねーねー、魔王様ー、城下町にいいスイーツ店が出来たからお忍びで食べに行きませんか?」
「エラルト!お前は口を開けば甘味の話ばかり、しかも魔王様を気軽に誘うとは何事か!」
「ふむ、ヌシが進める店はこの前に全部制覇したからのぅ。時間が空いたら行ってみるとするかの」
「…………この前というのは書類だけ残った執務室の件じゃなかろうの?」
「うむ、その時だ」
はぁぁ、と執事らしい初老の男が深い溜息を吐いた。
魔王ウェーンは弱小貴族から実力で魔王まで成り上り、執事はその時からずっとウェーンに仕えている。だからこそ性格も分かっており止めてもいつの間にか実行してる時が多々ある。
それが誰もが知る魔王ウェーンに対しての一番の悩みでもあった。
しかし、それはいい方によく転がり悪い方には転がったとしても魔王だけが損をするというので全員が全員という訳ではないが諦めている。
いい方に転がったという成功例は軍に人間を参入させる事だ。元々、魔界の魔獣は人間界よりもはるかに凶暴で潜在的に強い人間を、稀に魔王直々にスカウトして取り込んでいる。
スカウトに成功した人数は軽く千人を超えていた。しかも、ほとんどが無名で才能を開花させるのに少し苦労するが十年もあれば立派に軍の一員となる実力者となる。
強い人間もスカウトするが、その時は四天王か執事、魔王直々に話に行くこともある。
しかし、人間界と戦争中なのにここまでのんびりした空間になってる魔王城。ギスギスした空気もなくかなり平和的になっている。
「爺や、いつになったら人間界と和解できるかのぅ?」
「分かりませんな。全ての魔族を悪とみなし傲慢に人こそが正義だと語ってる連中に灸を吸えないと意味がないのじゃ」
「むぅ、それに比べてケンゴは素晴らしいぞ。妾らが直接行くと例外一つ除いて敵意を持たれるのに、あやつだけ何も妾側に敵意や害意を一切持っておらんかった。ああゆう人間が溢れかえればいいのにのぅ」
そもそも、どうして人間界と魔界が戦争中なのか。実はこの場で最年長である執事の爺やですら知らない。
なんとなく戦争をしなければいけない
そういう固定観念が人間界にある、という事だけはとっくの昔に魔族によって解明されている。
魔族の人間界に詳しい学者の研究によると、人間界で信仰している神がそうさせているとの事だ。
スカウトした人間から話を聞いても「あれ、本当に何で戦争をしてるんだ?」という反応になるから無意識的な洗脳をかけられている事を解明したのだ。
「と、説明口調で語ってみたり」
「またキュロスの妄想が始まったでござるな」
「妄想じゃないもん!知らない人への説明だもん!」
ギャーギャーワーワーと重要な会議でもないのに四天王同士がつまらない言い合いを始める。
その隙に魔王がいなくなった事はまだ気づいていない。
「なっ!魔王様が逃げ出したぞー!」
「魔力を辿るのじゃ!昨日と一昨日の分の書類仕事をさせるのじゃっ!ぐぁあっ!?」
「おじいちゃん興奮したからまた腰やらかしたよ!医療班!」
魔王城は大騒ぎ、毎日のように四天王同士の口論に週に一度の爺やのギックリ腰、そして毎日のように逃げ出す魔王。
これが魔界の日常。魔王は何しに行ったかって?
お熱の人間をまたスカウトしに行ったのさ~
まあ、居なかったらしいけどね。その代わりちょっとだけ怪我をして帰ってきたから誰かと手合わせしてきたのかな?
え、短いって?まあ、これ番外編みたいなものだしこの話の字数は空白と改行除いて1981文字だもん。ギリ2000文字なくても短くていいよね。
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