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01.対を担う者
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「はぁぁぁ…………」
ようやく街にたどり着いたのはいいものの、宿を取る前に同行者に買い物に付き合ってほしいとと言われ、頭おかしいんじゃないかと率直に言ったらしばかれ頰に平手の跡がついた青年が噴水の縁に座っていた。
服装は適度な防具で下は質素なものになっているが、見た目以上に下着まで強靭で強固な防具となっている。
流石に武装は閉まっており彼女と喧嘩したような魔物退治屋にしか見えない。
確かに彼は害獣となる獣や魔物を狩りながら街を転々としているが彼はそんなしょっぱい職業についているのではない。
驚くなかれ、世の悪を統べる邪神を倒し世界を救うと予言されたのは彼なのだ。
その証拠に彼の首に二重の輪に二体の翼が生えたような刺青が入っている。これは産まれた時からあるものではないが、いわゆる彼らが信じる神という存在が「この者は救世主」という目印でつけた特別な刺青なのだ。
この救世主にならざるを得なくなった青年は神を信用してはいないが。
「もうそろそろ日が落ちそうだぞー。いつまであの店から出ないんだーちくしょう!」
そして同行者というのはなぜか全員女性なのが悩みである。
この青年、鈍感とか変な要素はなく皆が青年に好意を寄せていることは知っている。状況を見極めたいがためにあえてスルーしているのだ。
男もパーティーに入れようと何度も言うが彼女たちが頑なに必要ないというため中々募集することすらできない。
「もう精神的にくるものある…………」
邪神討伐より人間関係のせいで本気で救世主を辞めたいと思うこの頃、青年の隣に誰かが座った。
「よう、にいちゃん。なんかお疲れのようだな。よかったらおじさんがあの子らが戻ってくるまで愚痴を聞いてやるぜ?」
「…………ありがとうございます。そして、よくここまで来れましたね。あと軽いノリやめません?」
「そう言うなって。俺はお前が思うほど大層な人間じゃない。ま、そっちはそっちで大変そうじゃないか」
「ええ、もちろん!あの馬鹿はいく先々で問題ばっか起こして…………!俺が救世主だから融通きかせろなんて、その人達の生活だってあるし払う金は払いたい」
「未だに制御できてないのかよ。まああいつらは個性云々と言うより自分を前に押し出しすぎだろ。お前も頑張れよ」
「分かってますよーだ。そう言う師匠こそ大変だったんじゃないですか?街一つ滅ぼしたとか」
「師匠って呼ぶなよ。あれは悲惨だった、自我がまだ残ってたのに被害を最小限にするために殺さなきゃいけないのがなー。お前がいれば救えたかもな」
世間話をするような感覚でとある虐殺の裏側を語る救世主に師匠と呼ばれた男。
顔の下を包帯で巻き、髪さえ出さないようにフードを被った怪しい男はケラケラと笑いながらも、どこか悲しそうな表情をしていた、気がする。
「それじゃあ、またどっかでな。体には気をつけろよ」
「救世主に成ってから風邪一つひいてませんよ」
彼らの会話はなんとも不思議である。怪しい男が立ち去るまで二人とも顔どころか身体に視線すら向けなかった。
「さーて、俺もそろそろ迎えに行くか。どうせ荷物持ちなんだろうな…………」
この救世主の名はレイジ。後に世に紀伝が大量に発行され崇め祀られるほどになる自称、師匠に比べたら大したことのない男。
その師匠はその紀伝には一切出て来ない。知られるはずもない。
何故なら師は巨悪と呼ばれ、死神と呼ばれ、世界最悪の犯罪者と呼ばれる存在なのだから。
悲しい事に、かつて自分を救った救世主が巨悪と呼ばれ、大したことのない自分が救世主と呼ばれるなんて、なんと辛いことか。
ようやく街にたどり着いたのはいいものの、宿を取る前に同行者に買い物に付き合ってほしいとと言われ、頭おかしいんじゃないかと率直に言ったらしばかれ頰に平手の跡がついた青年が噴水の縁に座っていた。
服装は適度な防具で下は質素なものになっているが、見た目以上に下着まで強靭で強固な防具となっている。
流石に武装は閉まっており彼女と喧嘩したような魔物退治屋にしか見えない。
確かに彼は害獣となる獣や魔物を狩りながら街を転々としているが彼はそんなしょっぱい職業についているのではない。
驚くなかれ、世の悪を統べる邪神を倒し世界を救うと予言されたのは彼なのだ。
その証拠に彼の首に二重の輪に二体の翼が生えたような刺青が入っている。これは産まれた時からあるものではないが、いわゆる彼らが信じる神という存在が「この者は救世主」という目印でつけた特別な刺青なのだ。
この救世主にならざるを得なくなった青年は神を信用してはいないが。
「もうそろそろ日が落ちそうだぞー。いつまであの店から出ないんだーちくしょう!」
そして同行者というのはなぜか全員女性なのが悩みである。
この青年、鈍感とか変な要素はなく皆が青年に好意を寄せていることは知っている。状況を見極めたいがためにあえてスルーしているのだ。
男もパーティーに入れようと何度も言うが彼女たちが頑なに必要ないというため中々募集することすらできない。
「もう精神的にくるものある…………」
邪神討伐より人間関係のせいで本気で救世主を辞めたいと思うこの頃、青年の隣に誰かが座った。
「よう、にいちゃん。なんかお疲れのようだな。よかったらおじさんがあの子らが戻ってくるまで愚痴を聞いてやるぜ?」
「…………ありがとうございます。そして、よくここまで来れましたね。あと軽いノリやめません?」
「そう言うなって。俺はお前が思うほど大層な人間じゃない。ま、そっちはそっちで大変そうじゃないか」
「ええ、もちろん!あの馬鹿はいく先々で問題ばっか起こして…………!俺が救世主だから融通きかせろなんて、その人達の生活だってあるし払う金は払いたい」
「未だに制御できてないのかよ。まああいつらは個性云々と言うより自分を前に押し出しすぎだろ。お前も頑張れよ」
「分かってますよーだ。そう言う師匠こそ大変だったんじゃないですか?街一つ滅ぼしたとか」
「師匠って呼ぶなよ。あれは悲惨だった、自我がまだ残ってたのに被害を最小限にするために殺さなきゃいけないのがなー。お前がいれば救えたかもな」
世間話をするような感覚でとある虐殺の裏側を語る救世主に師匠と呼ばれた男。
顔の下を包帯で巻き、髪さえ出さないようにフードを被った怪しい男はケラケラと笑いながらも、どこか悲しそうな表情をしていた、気がする。
「それじゃあ、またどっかでな。体には気をつけろよ」
「救世主に成ってから風邪一つひいてませんよ」
彼らの会話はなんとも不思議である。怪しい男が立ち去るまで二人とも顔どころか身体に視線すら向けなかった。
「さーて、俺もそろそろ迎えに行くか。どうせ荷物持ちなんだろうな…………」
この救世主の名はレイジ。後に世に紀伝が大量に発行され崇め祀られるほどになる自称、師匠に比べたら大したことのない男。
その師匠はその紀伝には一切出て来ない。知られるはずもない。
何故なら師は巨悪と呼ばれ、死神と呼ばれ、世界最悪の犯罪者と呼ばれる存在なのだから。
悲しい事に、かつて自分を救った救世主が巨悪と呼ばれ、大したことのない自分が救世主と呼ばれるなんて、なんと辛いことか。
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