僕らの距離

舵平 純生

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万感

片鱗 2

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卓席の隅に座る関が
腕時計を見ながら
小夜子ママへ目配せる

午後十時を過ぎ
未成年労基法時間の
労働禁止時刻に掛かり
 
小夜子ママは
常連客と清人の会話を
打ち切った

「ごめんなさいね
 清ちゃん帰す時間なの」

小夜子ママは清人の背を押し
裏口へ案内する

「お疲れ様 清ちゃん
 外に関ちゃん居るわよ」

軽く頭を下げる清人が
裏口のドアを開けた瞬間
小夜子ママは清人を呼び止めた

「清ちゃん」

振り返る清人が
小夜子ママの顔を見る

「明日も
 お願いね」

ママの言葉に
再度 頭を下げる清人は
扉が閉まるまで
小夜子ママの顔を見ていた


清人を見送り
カウンターへ戻ると
常連客の数名が
連なり席を立つ

「俺等も今日は帰るよ
 篠さん来るだろ?
 篠さん所の子って事は
 清人あの子も訳ありそうだな」
「家出人かい?」

詮索する常連客へ
隠さず苦笑する小夜子ママ

「詳しくは聞いてないの」

「この間 連れて来た子だろ?
 随分 雰囲気違うが
 何かあれば相談に乗るぞ」

常連客の親身な言葉に
快く応える小夜子ママ

「今日は早くから
 本当に ありがとう
 素敵な歓迎会になったわ」


常連客を外まで見送り
店内へ小夜子ママが戻ると
清人と話していた常連客が
カウンター席から立ち上がる

「俺も 帰った方がいい?」

店内へ残った
最後の常連客に
小夜子ママは微笑み

「まだ居て頂戴
 看板は消したから
 村上むらかみ君貸切よ」

「いいの?」
「勿論」

三十代半ばの村上は
新潟出身の市役所職員で
時々 女装姿で現れる

性的対象は女性だが
幼い頃から
キラキラ輝く綺麗な物や
可愛い物を好み身に付け

厳格な親の猛反対を喰らい
公務員に成る口実で
上京した変わり者でもある

「良かった
 清人君の綺麗な顔を見た
 余韻に浸りたい気分だった」

蕩ける表情で言葉通り
余韻に浸る村上は
店で一番高級な
カミュXOエレガンスの
ボトルを入れた

「ママも飲むだろ
 歓迎会の祝い酒」

「当然よ」

男気のある切符の良さは
男性的な村上の性格で
正直 女装が似合う容姿ではない

だからこそ
清人の容姿端麗に
見惚れていたのだろう

卓席を片付ける幸介は
カウンターに並び座る
村上と小夜子ママが
会話もせず
カミュを飲む背中を眺め

「なんだろうな
 この人達」

飽きれて肩を竦める幸介は
食器類を手に持ち
厨房へと姿を消した

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