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最終章
清濁
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ズボンの後ろポケットから
携帯を取り出す久我は
着信名を確認しつつ
清人へ〝親父〟からの
着信を示す携帯画面を
見せる
携帯に応答する久我は
数回 了承の返答をし
電話を切った
戸惑う清人を見下ろし
不穏な空気を醸し出す久我は
少々 困り果てる顔を繕う
不安が満ちる清人の顔に
堪えきれず
吹き出す久我
「御節料理 取りに来いっとさ」
瞬時に清人の表情が
驚き顔に変わり
「老人ふたりじゃ
食い切れないらしい」
久我は清人の頭を撫で
清人の顔を覗き込み
「心配すんな」
更に清人の頭を
ポンポンと軽く叩き
携帯をポケットへ戻す
「後 初詣がてら
出掛ける予定があるから
車を使いたいらしい」
清人の腕を持ち
部屋から移動すると
久我は着ている服の
匂いを嗅ぎ
「風呂 頼んでいいか?」
必ず戻る約束を
清人へ示した
コクリと頷く清人の顔から
戸惑いの色が薄らぎ
玄関ドア前で
久我を送り出しす
車のドアを開く久我は
砂利を踏み鳴らし
清人の方へ走り戻ると
清人の頭を抱え込み
脳天に唇を添え
再度 車の方へ
走っていった
フロントガラス越しの久我へ
手を振る清人は
照れくさい笑みを浮かべ
後方を眺め
車をバックする久我は
数回 切返し方向転換を済ませ
窓から腕を出し
清人へ合図を送り
車を発進させた
砂利を踏む
車輪の音が遠ざかり
口ずけされた脳天に
手を翳す清人は
慌ただしく浴室へ向い
浴室中へ
シャワーをぶちまける
服が濡れるのも
気にせず
浴槽へ洗剤を吹きかけ
鏡を磨き
心が弾む気持ちを
思い出していた
〝久我が家へ訪れる〟
ただ それだけ
ただ それだけで
幸せだった記憶が
湯水の如く溢れ出し
清人の細胞
ひとつひとつが
神経と筋肉を踊らせ
血が駆け巡る
ダストモップで
床を磨く清人は
モップを投げ捨て
キッチンの流し台を開け
開封前の米袋を確認し
一通りシンク周りを
手際よく拭きあげると
炊飯器を磨き
数分 流した水道も
透明度を増し
米を研ぐ指先が
緩やかに舞う
弾む心が
高鳴る鼓動を奏で
忙しく歩き廻る足さえも
軽快なリズムを刻み
立ち上がる蒸気が
幸せの象徴だった
淡く香しい匂いを放つ
炊き上がりの音と同時に
微かに遠くから
砂利を踏む車輪の音が
微かに聞こえた
しゃもじを片手に持つ清人は
数回 振り向いたものの
蒸らし時間に そわつき
車が停る音
車のドアが閉まる音
砂利を踏む音
玄関ドアが開く音
そして
足音を立てず
歩み寄る人影
全てを五感で捉えながら
蒸らし上がりの音が鳴り
清人は炊飯器の蓋を開け
昇る湯気を浴び
ふっくら炊けた米粒を
炊飯器の底から
ふんわりと混ぜほぐし
しゃもじで掬った米粒を
指先で摘み味見をする清人は
満面の笑みを浮かべ
振り返る
だが
視線の先に
映る人影は
壁に寄り掛かる
神城 隆一の
姿だった
携帯を取り出す久我は
着信名を確認しつつ
清人へ〝親父〟からの
着信を示す携帯画面を
見せる
携帯に応答する久我は
数回 了承の返答をし
電話を切った
戸惑う清人を見下ろし
不穏な空気を醸し出す久我は
少々 困り果てる顔を繕う
不安が満ちる清人の顔に
堪えきれず
吹き出す久我
「御節料理 取りに来いっとさ」
瞬時に清人の表情が
驚き顔に変わり
「老人ふたりじゃ
食い切れないらしい」
久我は清人の頭を撫で
清人の顔を覗き込み
「心配すんな」
更に清人の頭を
ポンポンと軽く叩き
携帯をポケットへ戻す
「後 初詣がてら
出掛ける予定があるから
車を使いたいらしい」
清人の腕を持ち
部屋から移動すると
久我は着ている服の
匂いを嗅ぎ
「風呂 頼んでいいか?」
必ず戻る約束を
清人へ示した
コクリと頷く清人の顔から
戸惑いの色が薄らぎ
玄関ドア前で
久我を送り出しす
車のドアを開く久我は
砂利を踏み鳴らし
清人の方へ走り戻ると
清人の頭を抱え込み
脳天に唇を添え
再度 車の方へ
走っていった
フロントガラス越しの久我へ
手を振る清人は
照れくさい笑みを浮かべ
後方を眺め
車をバックする久我は
数回 切返し方向転換を済ませ
窓から腕を出し
清人へ合図を送り
車を発進させた
砂利を踏む
車輪の音が遠ざかり
口ずけされた脳天に
手を翳す清人は
慌ただしく浴室へ向い
浴室中へ
シャワーをぶちまける
服が濡れるのも
気にせず
浴槽へ洗剤を吹きかけ
鏡を磨き
心が弾む気持ちを
思い出していた
〝久我が家へ訪れる〟
ただ それだけ
ただ それだけで
幸せだった記憶が
湯水の如く溢れ出し
清人の細胞
ひとつひとつが
神経と筋肉を踊らせ
血が駆け巡る
ダストモップで
床を磨く清人は
モップを投げ捨て
キッチンの流し台を開け
開封前の米袋を確認し
一通りシンク周りを
手際よく拭きあげると
炊飯器を磨き
数分 流した水道も
透明度を増し
米を研ぐ指先が
緩やかに舞う
弾む心が
高鳴る鼓動を奏で
忙しく歩き廻る足さえも
軽快なリズムを刻み
立ち上がる蒸気が
幸せの象徴だった
淡く香しい匂いを放つ
炊き上がりの音と同時に
微かに遠くから
砂利を踏む車輪の音が
微かに聞こえた
しゃもじを片手に持つ清人は
数回 振り向いたものの
蒸らし時間に そわつき
車が停る音
車のドアが閉まる音
砂利を踏む音
玄関ドアが開く音
そして
足音を立てず
歩み寄る人影
全てを五感で捉えながら
蒸らし上がりの音が鳴り
清人は炊飯器の蓋を開け
昇る湯気を浴び
ふっくら炊けた米粒を
炊飯器の底から
ふんわりと混ぜほぐし
しゃもじで掬った米粒を
指先で摘み味見をする清人は
満面の笑みを浮かべ
振り返る
だが
視線の先に
映る人影は
壁に寄り掛かる
神城 隆一の
姿だった
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