僕らの距離

舵平 純生

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凄絶

沈殿

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年代物の軋む木製ベッドから
掛布団を床へ降ろし
気休め程度の防音対策に
苦笑する隆行は

神経を研ぎ澄ませ
掛布団の上へ
胡座を描き
身を潜める

腕時計の針は
無情にも遅く

床上の掛布団へ
寝転んだ隆行は
物音を立てず
潜む虚しさを知った


幼い清人が
膝を抱え
泣いていた
あの頃

甘ったれた
泣き虫だと
軽蔑し

甘えが許される
清人の部屋へ
呼びに行く事さえ
腹立たしく

父の退居後
階段手摺を二回叩き
合図を送っていた

家庭教師が下す評価と
全国共通テスト結果が
隆行の価値観でしかなく

成績通知書を握りしめ
階段を登る隆行は

涙を拭きながら
階段を降りる清人の
幼稚さを憎んだ

父親との対面は
緊張と圧迫が混ざり
随時 複雑な心境で
疲労が絶えず

それでも
父親が隆行に掛ける期待は
信頼性のある絆でもあった


薄暗い部屋の中
掛布団の上で
膝を抱え蹲り

停電した日の
清人を思い出す

隆行の部屋の
同じ場所で
恐怖と戦いながら
眠り込んだ清人を抱き上げ

華奢な躰の清人が
想像以上に暖かく
そして細い柔肌の腕が
空気の様に軽かった記憶

隆行は掌を眺め
滑らかな清人の
僅かに残る肌感触を
握りしめた瞬間

フロアの照明が消え
人が動く気配を察し
隆行は 静かにドアの隙間から
フロアを覗き込んだ

常備灯の暖色系に染まる
見慣れたフロアの中

貴賓室から出て来た父親が
ソファーに座り寝付いた清人へ
ブランケットを掛け

横に腰掛けた父親の手元が
タブレットに照らされ
時間だけが過ぎてゆく

数分後 
フロアから背を向け
ドアの前へ座る隆行は

「清乃」と清人を呼ぶ
父親の声に 凍りついた

身の毛が弥立ち
武者震いにも似た
緊張が走り

息を止め ゆっくり立ち上がり
ドアの隙間から
ソファーを見下ろした

父親が清人の首筋へ
唇を這わせ
目覚めた清人は
目を閉じたまま躰を捩り
濃厚な接吻を交わす

清人の視線が天井を泳ぎ
二階から見下ろす隆行と
一瞬 目が合うと

清人は父親の頭を抱え込み
すぐさま目を逸らした

「ベッド...」

言い掛けた言葉も
唇を塞がれ

隆行は清人の視界から
逃れる様に
身を屈め隠れる

だが 
浴室側に数箇所並ぶ常備灯が
ソファーを照らす事で
幾重にも反射する
ふたりのシルエットが
映し出された

シャツのボタンを外す
父親の影が生々しく
清人の躰を這う背中が
揺れ動き

ソファーの背もたれで
死角になる清人の姿はなく

父親の背中の影と
細く長い脚の影が重なり

ソファーの軋み音と
息遣いが 聞こえ出し

体位が変わり
ソファーの肘掛けに
清人の上半身が乗り

背面から挿入する父親は
清人の背中へ唇を這わせ
肩から細い首を晒す
清人の頭が上がり

湾曲する腰元を掴む父親が
激しく腰を突き上げると

清人の口から
喘ぎ声が洩れ

隆行は咄嗟に
耳を塞いでいた
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