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6話
しおりを挟むふう。終わった。我ながらいいお茶会にしたんじゃないかとパッとエナの方を見る。
「シア、他の侍女にシアが褒められたことお伝えしておきますね」
エナは側近という話も知ってるだけあって察しもよく私が頼むよりも先に言ってくれる。
「ありがとうエナ。ひとりでもここで炙り出せたらいいんだけど……。」
「きっとどこかの王女辺りが動くんじゃないかしら。誰かは言えないけどわがままで困ってる侍女が1人いるから。お茶会の準備も時間が限られてる中で部屋中花で飾れだのこんなドレス気に食わないだの。そんな王女が候補になれるなんて。一体どんな育ち方をしたのか」
「そう。その侍女も大変ね…。」
「本当に可哀想ですわ。私の仲良くしている子だから尚更腹が立つんです」
「エナのお友達がそんな目にあってるなんて……早く対処しなくちゃね」
「わがままな子だからすぐにシッポを出すはずですわ」
「ふふ。そうね。」
私はアップにしていた髪をエナに解いてもらった。
エナは執長に呼ばれひとりでゆっくり髪を梳かしながら考える。
もしそのわがままな子が王女だったら……
皇后陛下から見て王妃になってもらいたい令嬢は誰だろう。
正直どこかの王女の方が公爵令嬢よりメリットはあるはず。
だけどわがまま王女が国の王妃になってむゃくちゃにしちゃったっていう話が無いわけではないし。
どっちにしても侍女を困らせてしまうような令嬢や王女は無しよね……。
そんなことを考えながらも食事の時間までゆっくり小説を読むことにした。
食事前……
コンコンッ
「トレシア嬢、すみません……。今執長から報告されて……。今日はお茶会マナーだけで終わりのはずだったんだけど第2王子が本日の令嬢との食事のあと、それぞれの候補達と毎日10分ほど話に来ることになったみたいで。髪を溶かした後にごめんね。もう一度アップにしてもいいかしら。」
「いいわ。髪はそのままで。別に私は王妃になりたいわけじゃないから。それより急に出来た話ならそのわがままな子の侍女の方が大丈夫かしら…」
「わかりました。ではそのままとはいえ結った癖だけ綺麗に直させてもらいますわ。侍女も大丈夫だといいんですが……」
「みんなある程度準備はするでしょうけど食事前のメイド達や侍女もバタバタしてる中その侍女だけが令嬢のわがままにずっと付きっきりは辛いでしょうし……エナは裏でその侍女のフォローをしてあげて?私はこのままでなんともないから」
「シア……。ありがとう。じゃあ終わったら侍女のフォローに行かせてもらいますわ」
「ええ。私の侍女なのに他の侍女のフォローなんて頼んでごめんね」
エナは首を振り
「いいえ。私もあの子のこと気になってたから…行かせてくれて助かりますわ」
そう言いながらも急ぐことなくエナは丁寧に私の髪を梳かしてくれる。
「あとは自分でやるから大丈夫よ」
「いいえ、あの子のフォローはしてあげたいと思ってるけど私はシアの侍女なの。何があってもシアが優先ですわ」
エナは侍女としての仕事を真っ当するためとは言えないくらいわたしを大事に思ってくれているような目つきではっきり言い切る。その目になんだか照れ臭くなる。
普段は敵意の目ばかりだし、普段は敵意の目ばかりだし、親友のマリー以外にここまで大事に思ってくれる令嬢と出会えたことに関しては王妃候補になって良かったのかもしれないと思う。
「ありがとう。エナ」
「ふふ。実はね、私、侍女になることになった時、私皇后陛下からシアの事を頼まれて配属されたの。シアはいい子だけど敵が多いからって。でも正直皇后陛下や王子たちの前だけでいい子にしてるから周りに令嬢が寄り付かないんじゃないのって半分疑いながらも承諾する事にしたの。」
「やっぱりそうだったのね。実際わたしに敵意のある令嬢は多い中で敵意を持たずに接してくれるから皇后陛下が動いてくれたのかなって初めて会った時に思ってたの」
「あら。バレてたのね。そう。でも本当にいい子だったから今は心からシアの侍女として働きたいと思ってるわ。王妃になって欲しいくらいに。皆私みたいに疑ってるだけの令嬢もきっと多いはずよ。」
「エナ……ありがとう。正直私も今まで敵意のある目や裏がある目はたくさん見てきたから…。王子達と一緒で疑い深くなりすぎてそうじゃない令嬢にも対してこうやって勘違いを起こさせていたのは私だったのよね。こうやってエナに出会えてとっても嬉しいの。王妃候補にならなければ気づかないままだったかもね。あっエナ。そろそろ時間押してるんじゃない?」
「まあっいつの間にか話し込んじゃいました。ちょっとフォローしに行ってきます!」
エナはバタバタと焦って部屋を出た。
その間私は先程飾ってもらったバラを見つめながら考える。
王妃になってほしい…か。王妃になりたいわけじゃないけど人としてそんなこと言われて嬉しくない訳が無い。
けどもしエレンと結婚する事になったら……
ぶるぶる!駄目…友達とウエディングドレスなんて考えられないわっ。
(レシア……シア!)
なんだか誰かに呼ばれてるような……
パッと声が聞こえてきた窓の方を見る。
「っな、どうしたの!?」
私はびっくりするも小さな声で返事をする。
(窓を開けてくれ)
「??」
セオドアのジェスチャーで窓を開けろと言ってるのが分かりソッと窓を開ける。
ストンッ
「シア。会いに来たよ」
「セオドア…まだ1日しか経ってないけど……」
「ははったしかにな。でも今日早速試しに通信機を使ってみたら出なかっただろ?」
「あっ……」
何かあった時に録画出来るのはありがたいなとその日が来るまではと大事に机にしまってた。
まさかセオから連絡が来てたなんて……
「はあ……何のためにネックレス型にしたんだか」
「ごめんねセオドア……ってそれでもここに来たらダメじゃない。本来会えるのは両親だけだし……誰かに見られてたらまずいでしょ?」
「本当の候補って訳じゃないからいいんじゃないか?」
「もう!他の令嬢が見かけたら困るって分かってるくせに。ほんっと2人とも困った兄弟なんだから」
「兄弟?エレンもシアを困らせてるのか?」
「違うわ。急遽決まったみたいだけど今日から毎日候補者全員と10分間話に来るって。そんなことしてたらエレンの体が持たないでしょうに」
「……エフレインが。そうか。」
エレンは僕を見て逃げて母のバラ園へ向かったシアと仲良くなった。
僕は正直初めはどうせ興味無い振りをした令嬢に騙されてるだけだと思っていた。
けれど……ちょくちょく顔を合わせるようになり、俺自身もトレジアに惹かれていった。
だが僕のせいでエレンは人間不信になりシア以外の女の子には上辺でしか絡まなくなった。
もし、僕があの時、あの令嬢を相手にしなければエレンまで人間不信にするようなことは起こらなかった。
だから俺に出来ることはトレシアを守ることしかない。
分かってるのにこうやって顔を見に行ってしまう。
だがエレンがこうやって動き出したなら僕はシアを守りながらエレンを応援しよう。そう心に誓った。
「ま、それだけだよ。何かあった時のためのネックレスだから肌身離さずにきっちり付けるんだぞ。じゃあ僕は戻るよ」
「ええ。ありがとう。」
これだけのために来てくれたのね……。
たしかにネックレス型の通信機なのに付けずに机にしまっておくなんて何かあってからじゃあ遅いものね。
今はそうそう無いだろうけど昔は毒殺なんていうのもあったみたいだし。
勝負時につけようと思っていたけれどこれからは毎日つけよう。
コンコンっ
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