王妃になるなんて言ってないんですけど

むう子

文字の大きさ
6 / 20

6話

しおりを挟む


    ふう。終わった。我ながらいいお茶会にしたんじゃないかとパッとエナの方を見る。 

「シア、他の侍女にシアが褒められたことお伝えしておきますね」 

エナは側近という話も知ってるだけあって察しもよく私が頼むよりも先に言ってくれる。 

「ありがとうエナ。ひとりでもここで炙り出せたらいいんだけど……。」 

「きっとどこかの王女辺りが動くんじゃないかしら。誰かは言えないけどわがままで困ってる侍女が1人いるから。お茶会の準備も時間が限られてる中で部屋中花で飾れだのこんなドレス気に食わないだの。そんな王女が候補になれるなんて。一体どんな育ち方をしたのか」 

「そう。その侍女も大変ね…。」 

「本当に可哀想ですわ。私の仲良くしている子だから尚更腹が立つんです」 

「エナのお友達がそんな目にあってるなんて……早く対処しなくちゃね」 

「わがままな子だからすぐにシッポを出すはずですわ」 

「ふふ。そうね。」


私はアップにしていた髪をエナに解いてもらった。 

エナは執長に呼ばれひとりでゆっくり髪を梳かしながら考える。
もしそのわがままな子が王女だったら……
皇后陛下から見て王妃になってもらいたい令嬢は誰だろう。
正直どこかの王女の方が公爵令嬢よりメリットはあるはず。
だけどわがまま王女が国の王妃になってむゃくちゃにしちゃったっていう話が無いわけではないし。
どっちにしても侍女を困らせてしまうような令嬢や王女は無しよね……。 

そんなことを考えながらも食事の時間までゆっくり小説を読むことにした。 

食事前……
コンコンッ
「トレシア嬢、すみません……。今執長から報告されて……。今日はお茶会マナーだけで終わりのはずだったんだけど第2王子が本日の令嬢との食事のあと、それぞれの候補達と毎日10分ほど話に来ることになったみたいで。髪を溶かした後にごめんね。もう一度アップにしてもいいかしら。」 

「いいわ。髪はそのままで。別に私は王妃になりたいわけじゃないから。それより急に出来た話ならそのわがままな子の侍女の方が大丈夫かしら…」 

「わかりました。ではそのままとはいえ結った癖だけ綺麗に直させてもらいますわ。侍女も大丈夫だといいんですが……」 

「みんなある程度準備はするでしょうけど食事前のメイド達や侍女もバタバタしてる中その侍女だけが令嬢のわがままにずっと付きっきりは辛いでしょうし……エナは裏でその侍女のフォローをしてあげて?私はこのままでなんともないから」 

「シア……。ありがとう。じゃあ終わったら侍女のフォローに行かせてもらいますわ」 

「ええ。私の侍女なのに他の侍女のフォローなんて頼んでごめんね」
エナは首を振り
「いいえ。私もあの子のこと気になってたから…行かせてくれて助かりますわ」 

そう言いながらも急ぐことなくエナは丁寧に私の髪を梳かしてくれる。 

「あとは自分でやるから大丈夫よ」 

「いいえ、あの子のフォローはしてあげたいと思ってるけど私はシアの侍女なの。何があってもシアが優先ですわ」 

エナは侍女としての仕事を真っ当するためとは言えないくらいわたしを大事に思ってくれているような目つきではっきり言い切る。その目になんだか照れ臭くなる。
普段は敵意の目ばかりだし、普段は敵意の目ばかりだし、親友のマリー以外にここまで大事に思ってくれる令嬢と出会えたことに関しては王妃候補になって良かったのかもしれないと思う。 

「ありがとう。エナ」 

「ふふ。実はね、私、侍女になることになった時、私皇后陛下からシアの事を頼まれて配属されたの。シアはいい子だけど敵が多いからって。でも正直皇后陛下や王子たちの前だけでいい子にしてるから周りに令嬢が寄り付かないんじゃないのって半分疑いながらも承諾する事にしたの。」 

「やっぱりそうだったのね。実際わたしに敵意のある令嬢は多い中で敵意を持たずに接してくれるから皇后陛下が動いてくれたのかなって初めて会った時に思ってたの」 

「あら。バレてたのね。そう。でも本当にいい子だったから今は心からシアの侍女として働きたいと思ってるわ。王妃になって欲しいくらいに。皆私みたいに疑ってるだけの令嬢もきっと多いはずよ。」 

「エナ……ありがとう。正直私も今まで敵意のある目や裏がある目はたくさん見てきたから…。王子達と一緒で疑い深くなりすぎてそうじゃない令嬢にも対してこうやって勘違いを起こさせていたのは私だったのよね。こうやってエナに出会えてとっても嬉しいの。王妃候補にならなければ気づかないままだったかもね。あっエナ。そろそろ時間押してるんじゃない?」 

「まあっいつの間にか話し込んじゃいました。ちょっとフォローしに行ってきます!」 

エナはバタバタと焦って部屋を出た。 

その間私は先程飾ってもらったバラを見つめながら考える。 

王妃になってほしい…か。王妃になりたいわけじゃないけど人としてそんなこと言われて嬉しくない訳が無い。
けどもしエレンと結婚する事になったら……
ぶるぶる!駄目…友達とウエディングドレスなんて考えられないわっ。


(レシア……シア!) 

なんだか誰かに呼ばれてるような……
パッと声が聞こえてきた窓の方を見る。 

「っな、どうしたの!?」 

私はびっくりするも小さな声で返事をする。 

(窓を開けてくれ) 

「??」
セオドアのジェスチャーで窓を開けろと言ってるのが分かりソッと窓を開ける。 

ストンッ 

「シア。会いに来たよ」 

「セオドア…まだ1日しか経ってないけど……」 

「ははったしかにな。でも今日早速試しに通信機を使ってみたら出なかっただろ?」 

「あっ……」
何かあった時に録画出来るのはありがたいなとその日が来るまではと大事に机にしまってた。
まさかセオから連絡が来てたなんて…… 

「はあ……何のためにネックレス型にしたんだか」 

「ごめんねセオドア……ってそれでもここに来たらダメじゃない。本来会えるのは両親だけだし……誰かに見られてたらまずいでしょ?」 

「本当の候補って訳じゃないからいいんじゃないか?」 

「もう!他の令嬢が見かけたら困るって分かってるくせに。ほんっと2人とも困った兄弟なんだから」 

「兄弟?エレンもシアを困らせてるのか?」 

「違うわ。急遽決まったみたいだけど今日から毎日候補者全員と10分間話に来るって。そんなことしてたらエレンの体が持たないでしょうに」 

「……エフレインが。そうか。」


エレンは僕を見て逃げて母のバラ園へ向かったシアと仲良くなった。
僕は正直初めはどうせ興味無い振りをした令嬢に騙されてるだけだと思っていた。
けれど……ちょくちょく顔を合わせるようになり、俺自身もトレジアに惹かれていった。
だが僕のせいでエレンは人間不信になりシア以外の女の子には上辺でしか絡まなくなった。
もし、僕があの時、あの令嬢を相手にしなければエレンまで人間不信にするようなことは起こらなかった。
だから俺に出来ることはトレシアを守ることしかない。
分かってるのにこうやって顔を見に行ってしまう。
だがエレンがこうやって動き出したなら僕はシアを守りながらエレンを応援しよう。そう心に誓った。 

「ま、それだけだよ。何かあった時のためのネックレスだから肌身離さずにきっちり付けるんだぞ。じゃあ僕は戻るよ」 

「ええ。ありがとう。」 

これだけのために来てくれたのね……。
たしかにネックレス型の通信機なのに付けずに机にしまっておくなんて何かあってからじゃあ遅いものね。
今はそうそう無いだろうけど昔は毒殺なんていうのもあったみたいだし。
勝負時につけようと思っていたけれどこれからは毎日つけよう。 

コンコンっ
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

転生令嬢と王子の恋人

ねーさん
恋愛
 ある朝、目覚めたら、侯爵令嬢になっていた件  って、どこのラノベのタイトルなの!?  第二王子の婚約者であるリザは、ある日突然自分の前世が17歳で亡くなった日本人「リサコ」である事を思い出す。  麗しい王太子に端整な第二王子。ここはラノベ?乙女ゲーム?  もしかして、第二王子の婚約者である私は「悪役令嬢」なんでしょうか!?

側近女性は迷わない

中田カナ
恋愛
第二王子殿下の側近の中でただ1人の女性である私は、思いがけず自分の陰口を耳にしてしまった。 ※ 小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

放蕩な血

イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。 だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。 冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。 その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。 「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」 過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。 光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。 ⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。

四人の令嬢と公爵と

オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」  ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。  人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが…… 「おはよう。よく眠れたかな」 「お前すごく可愛いな!!」 「花がよく似合うね」 「どうか今日も共に過ごしてほしい」  彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。  一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。 ※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...