王妃になるなんて言ってないんですけど

むう子

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8話

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サイラス公爵令嬢、おはようございます 。もうすぐ食事をお運びしますね」 

わたしは髪を梳かしながらエナに返事をする。 

「エナ、おはよう。ありがとう。」 

「今日はドレス商人がくるの楽しみですわね。どんな最新のドレスを持ってくるのかしら」 

「ふふふ。そうね。エナの分も何か選びましょ。もちろんそれはお父様への請求で。」 

「まあッ、いいんですか?ありがとうございます♪」 

「ふふふ。もちろんっ。これからもエナにお世話になるんだもの。それくらいは当然よ。」 

「そんなっこれは皇后の命令ですから当たり前ですのよ。」 

「ふふ。皇后の命令でもお世話になるのは私よ。私からもお礼しないと気が済まないわ。それに国税を使うわけじゃないから安心してね。」 

「シア、嬉しいですわっ。」 

そこからはたわいない話しをしながらも食事を取り終えいつも通り読書をしながらドレス商人を待った。 

「なんだかだいぶ時間がかかってるみたいね……」 

「社交界で最新のドレスを着ていかに目立つかって必死なんでしょうね。
今回は社交界なので貴族たちしか居ませんがどの王妃候補のドレスが流行るかで令嬢達からどれくらい支持されるかが分かりますからね。」 

「なるほどね……」 

確かに王妃候補は令嬢たちの【あこがれ】になることは大きいだろうけど……。
それで貴族たちの指示が得られる訳無いのになあ。なんて思う。



コンコンッ 

「サイラス公爵令嬢お待たせしました。ドレス商のルエスでございます……。」 

ニッコリしながらもげっそりしたドレス商のルエスは服を並べる。 

「ルエス……だいぶお疲れのようですね」 

「え、いやいやそんなことございませんよ。今期のドレスは力作ばかりなので是非ゆっくりご覧になってください。」 

「ありがとう。可愛いドレスも綺麗なドレスもたくさんですわね。それに……この腰のレース部分だけや袖の部分だけもあるなんてびっくりだわ。
あ、そうだ。エナ、ドレスの横に椅子を用意してくださる?」 

「かしこまりました。」
「そうなんです!同じドレスでもレースや袖を付けるだけで見事に違うドレスに見えるでしょう。今季のドレスは遊び心を加えてみたのです。」 

「まあ。素晴らしいですわ。ルエス、そちらにお座りください。1人でゆっくりドレスを見てもいいかしら。」 

「いや、そんなこと出来ませんよ。お客様の前で座るなんてっ」 

「そのお客様が座っててって言ってるからいいんですよ。ドレス商もお客様も同じ人間でしょう?疲れた時は座ればいいんです。お客としてそう言ってるので気にしないで。ふふふ。ましてや王妃候補となれば泥棒の心配も無いでしょう?」 

「ご令嬢……お優しいお言葉感謝致します。」 

エナは何も言わずともすかさずお茶の用意をする。 
お茶を渡してもらったルエサはホッと一息つき、はっとしたように「こんな所ですみません御無礼とは承知ですがほんの少しお待ちください!!」とパッとスケッチブックを出し何かを書き出した。 

私はエナと顔を合わせ微笑んだ。 

「ご令嬢!こちらをご覧ください!!」 

私はルエスのスケッチを見た。 

そこにはシンプルだけどベースは薄い紫の肩を出し二の腕あたりからレースふわっとした袖にドレスは腰元から右側だけふわっとしたレースに花がレースに沿って飾られたドレスのスケッチがあった。 

「今、ご令嬢とお会いして思いついたドレスでございます!是非このドレスを1週間後の社交界で着ていただきたいと思ったのですがどうでしょう!?3日で仕上げてきますので是非に!!」 

「まあっとっても美しいドレスですわね。是非それを購入させてください。」 

「もちろんでございます!!」 

「あ、あとこれからお世話になるエナにも何か選びたくて。そちらはお父様の請求で購入してもいいかしら。」 

「もちろんでごさいます。それでしたら合わせてこちらで御用意してもよろしいでしょうか!!」 

「まあっ。エナもそれで良くて?」 

「ふふふ。もちろんです。有名なドレス商のルエスからドレスを用意していただけるなんてこんな嬉しい事はございませんもの」 

「感謝致します!寝ずにでも絶対に3日以内にお運びさせていただきますから楽しみにお待ち下さい!」 

「分かりました。楽しみにしてますね」 

そんなやり取りをし、あっという間にドレスが決まりルエスはそそくさと帰って行った。


「なんだか……最新のドレスを見るまでもなく決まっちゃったわね」 

「そうですわね。でも言うまでもなく1番シアに似合った美しいドレスをご用意して頂けるし最高ですわ。それに私まで作っていただけることになって嬉しいですわ」 

「ふふふ。そうね。3日後が楽しみね」 

「とっても楽しみですわ!あ、シアにも今お茶を用意しますね」 

そう言ってお茶を用意し、エナは部屋を出た。
わたしはありがとうと一息つくことにした。 

お父様は元気にやってるのかな。まだそんなに日は経ってないけど何せ子供の頃から私にべったりで国会があろうと何があろうと連れていかれてたからなあ。そんな事を考えてるとカツンっと窓から音がした。
なんだろうと窓の方に近寄ると窓の縁に手紙が落ちていた。 

手紙を開くとマリーの結婚式の日時が書いてあった。
【マリー・クラーク令嬢、イネス・ロバーツ公爵が 結婚式を先伸ばすとのことです。詳しくは社交界当日にお会いできるよう場を設けますのでその時にお話ください】 

マリー…何かあったのかしら…それとも…私に気を使って結婚式を先伸ばした?もしそうなら絶対行くから気にしないでって伝えないと…。 

それにしても伝達係を用意するって皇帝陛下は仰ったけどシークレット騎士なのかしら。こんな窓に手紙を置いて直ぐに消えるなんてさすがだわ。

この後はゆっくり食事を取りいつも通り読書をしながらゆっくり過ごしていた。


コンコンッ
「シアっはっトレシア令嬢!急遽大広間に集まるようにとのことです」
夕方になり焦るように部屋に入ってくるエナ。 

「え?どういうこと?」 

「私にもまだそこまでは……。とりあえず大広間へ」 

「分かったわ」 

エナと一緒に大広間に向かい席に着くもののみんな何があったのかとソワソワしていた。 

ゴホンっ
執長の咳払いで一瞬でザワザワしていた空気が静かになった。 

「本日にて第2王妃候補エミリー・ウォーカー王女、第8王妃候補リシアン・ホワード王女は王妃候補から外れていただきます。」 

「なっそれはどうしてでしょう!?まだマナー期間で何も問題はありませんでしょう!?」
リシアン王女は咄嗟に怒りながら文句を言う。 

「……。王女達はドレスを何着お選びになりましたか?」 

「そんなっ皇室ともなればドレスは同じものを着るのは恥ずかしいことではありませんか」
エミリー王女も咄嗟に返事した。 

「いいえ。ドレス商ルエスから説明がございませんでしたか?1着のドレスに何かを加えるだけでドレスは変化することができると」 

「聞きましたが王妃候補なるものが同じドレスを着るなんて考えられませんわ…。」
エミリー王女は静かに下を向きながら言う。 

「これは皇后のお考えです。今はそんな時代ではない。今は国が安定しデル(お金)に余裕があるとはいえいつ何が起こるか分からないため国民から徴収する国税を無駄に使うことのないようにとの考えです。」 

「それなら!トレシア・サイラス公爵令嬢も侍女なんかにドレスを用意したとのことじゃございませんか!」 

「それは国税からの支払いではございませんので私からは何とも」 

「そんなのおかしいわっ。それなら私も父に請求すればなにも問題ないのでしょう!?」 

(シア…ごめんなさい…。私のせいで) 

エナは自分のせいで飛び火が飛んできたと小さい声で私に謝る。 

(ううん。わたしがエナにお世話になるからとお礼したかっただけだからエナは何も悪くないわ) 

「ゴホンッ。始めからそのお考えがあれば良かったのでしょうが今更にそう仰っても意味が無いでしょう。それに王妃になってもこの考えは変わりませんので無駄遣いをすることは出来ません。そしてトレシア令嬢あなたは何故侍女にドレスを用意されたのでしょう」 

「私は侍女のエレナ・ボルパン令嬢にこれからお世話になるという意味を込め贈り物をしたかったために父の請求でドレスを購入することに致しました。」 

「そういう意味のあるものであれば今回に限りよろしいでしょう。ただ、今後は今回のようなこともございましたので家族の請求で購入するのは避けた方がよろしいかと思われます。何かあれな侍女や私達にお聞きください」 

「わかりました。ご忠告感謝いたします。」 

「なっっそれだけじゃないわ!トレシア令嬢は昨晩「リシアン王女。ここで他の令嬢を貶めようと嘆いていてはあなたの国の品位に関わりますよ!」
執長はリシアン王女の言葉を遮断する。 

「お言葉ですがリシアン王女はサイラス公爵令嬢が昨晩男の人を部屋に連れ込んでいた事を伝えようとされたのです」 
執長からから話を遮断されグッと下を向くリシアン王女をフォローするように侍女がリシアン王女の言いたかった内容を淡々と告げた。

ガチャッ 

「すまないね。それは私だ」
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