私の光

イチゴ牛乳

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時が流れるのは速くて9月の下旬。
蓮も完全復活し、今では元気に学校に通っている。
こちらとしては蓮の身が心配なのだが本人が大丈夫だと言って…うん、やっぱり心配なものは心配だ。
一緒に暮らすことになったけど、家事全般、蓮がやっている状態で余計に心配だ。
…私が家事出来ないのが問題なんだけども……。
「あれ……、そう言えば何か忘れているような……」
んー?
なんだっけなー。
「ねぇ、まだ"笑鬼"、暴れてるんでしょ?」
「ああ、笑いながら人を殴る不良のことでしょ??でも路地裏に行かなければ大丈夫なんじゃないの?」
「それがさー、この間、路地裏以外のところでも暴れてたんだって」
「えー!ウソ!!?暫く繁華街に行けないじゃん!」
あ、あれ……?
"笑いながら人を殴る""繁華街""路地裏"……?
どうしよう……。
ギャル達の単語にメチャクチャ聞き覚えがあるんですが(汗)。
……そう言えば蓮のことがあって、結局行かないままだったな……。
そうと決まれば今日の夜に決行しないとなぁ。
しかも、蓮にバレないように。
うーむ、久しぶりに1人か。
タガが外れないようにしないとなぁ。



「おー、見事に男だらけだな(笑)。」
明らかに柄が悪い男達。
こいつ等全員、笑鬼に相手して(笑)もらうつもりなのか。
この場合は私もその内の1人なのだろうが。
そして、何故か騒ぎは起きているっぽいが中々見つからない。
長引きそうだなぁ。
あんまり長引き過ぎるのはあの子達にバレるから嫌なんだけどなぁ。
仕方がないか。

それから暫く繁華街に通うが笑鬼に遭遇することが1度たりともなかった。
そろそろ勘付いて来たから終わらせたいのに!!
時間帯を広めたから睡眠時間が足りないし。
そのせいで学校では欠伸の日々。
奏がいるからなるべく我慢はしているけど。
でも流石に限界が来て、今は保健室で休むために来ている。
「あら、大丈夫なの?顔色が悪いわよ?」
「……少し眠れば平気です」
「そう?」
保健室の先生は会話をしながらもテキパキとベットの準備を進める。
はいどうぞ、と通され横になると直ぐに眠気が襲って来た。
「なら私は用があるからゆっくりしていきなさい」
それを最後に私の意識は途切れた。


次に目が覚めたのは爆音によって。
「…う、るさ……。いったい何事?」
ベットから起き上がりカーテンを開けると誰も居なかった。
その間も爆音は消えない。
『仁科暁!!出て来いやぁぁあ!!』
ノイズ音と共に聞こえる怒号。
どうやら此処の生徒に喧嘩を売りに来たようだ。
校舎内からはざわめきが聞こえる。
物騒な世の中だなぁ。
学校に乗り込んで来るなんて頭可笑しいんじゃないの。
(せっかくの憩いの時間を邪魔しやがって!)
暫くすると殴り合うような音が聞こえて来た。
同時に校舎内からは悲鳴が聞こえる。
……喧嘩、始まったのか。
「面白そうだし、行ってみよう」
保健室を出て声が聞こえる方に向かうと校庭に辿り着いた。
様子を見ていて分かったことがある。
どうやらこの喧嘩は此処の生徒1人対多数らしい。
うーむ、何か割に合わない。
タイマンとかなら気になることはなかったのだろうが流石にこれはちょっとねぇ。
……仕方がない。
助太刀するか。
と言っても、喧嘩が出来ることがバレない程度にだが。
ないよりはマシでしょ。
取り敢えず、教室にカバン取りに行こっかなー。
欠伸を噛み殺しながら教室に入るとクラスメイト達は窓際に溜まって居た。
……蜜に集まる虫みたいだ。
誰も私が入って来たことに気がつかない。
「先生、気分が優れないので帰りますね?」
「えっ?あ、ああ」
頼りない返事だったが教室を出る。
あー、奏にバレるだろうなぁ。
と言うか正門から出ると言うことは窓際に溜まっている生徒や先生に見られるということ。
目立つなぁ。
でも、ほっとけないし。
あれこれ意味のないことを考えていると下駄箱に着いた。
おー?
状況的に1人の方が有利だ。
へー、あの生徒強いんだ。
大勢との戦い方を知ってるのかな?
って、あー、殴られた。
流石に体力の限界が来ているのだろ。
これまでの優勢だった状況が嘘のように弱くなっていく。
生徒はただ殴られ、蹴られの状態だった。
それと同時に相手は余裕の笑みを浮かべる。
えー、嬉しそうだけどその状態で勝ってもどうしようもないでしょ。
「はーい、ごめんなさーい!ちょっといいかなー??!」
喧嘩、最早いじめの中に入って行くと案の定、その場にいた全員が唖然としている。
おー、凄い間抜け面!!!
「んだ、てめえ!!?せっかくいいところだったのに邪魔してんじゃねぇぞ??!」
「えっ?いいところだったの??たかが1人相手にこの人数で"いじめ"てたんじゃないの???」
「…んの、クソブス!!!ふざけてんじゃねーぞ??!殺すぞ?!」
「はーい自他共に認めるブスでーす。ついでにふざけてないでーす」
明らかにふざけた態度を取る私に相手はみるみるうちに顔を真っ赤に染めていく。
「あー、後、早く此処を立ち去った方がいいよ?警察がもう直ぐ来るから」
実は私、此処に来る前にある"仕掛け"をしといたんだー。
用意周到に越したことはないでしょ?
「嘘言ってんじゃねねーぞ??!」
「…嘘と思うのなら耳を澄ませば?」
そう言うと以外と素直に従った。
するとみるみるうちに顔を青ざめさせていく。
……表情豊かだなぁ。
内心、感心していると相手達はバイクに乗って覚えてろよ!!と言い去って行った。
……負け犬の遠吠え?
クスクスと笑っていると学校前をパトカーが通り過ぎる。
少しすればその音も聞こえなくなる。
満足した私は帰ろうとすると後ろから声を掛けられた。
「お、おい!警察がなんで此処に来なかったんだよ!!」
その声に振り向くと赤髪の男の子。
うん、めっちゃ怪我が凄いな。
血だらけだし、土で汚れているし。
制服が白シャツだから余計に目立つ。
………あ、このネクタイの色は1年生…、奏と同じ学年の男の子だったのか。
「なんでって……、元々、警察が此処に来ることはなかったからだよ」
「は?」
「此処から離れたところで事故があったという情報を警察に流したんだよ。その住所がこの学校の前を通らないと行けない場所だったってだけ。」
そう告げると赤髪君は呆気にとられていた。
「そういう事だから、じゃあね」
今度は引き止められることなく正門を出た。
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