無慈悲な正義と女難

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第三章 現代編(春美の才覚)

26 春美を目の敵にする女①

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総長からクラブ"グランデ" "花"に敵対行為を繰返す寺崎里美を最優先で何とかしろと指示された隆之は懇意にしている興信所に里美の身辺調査を依頼した。その調査報告によると、春美から寝取ったパトロンから資金援助を受けていたので、世間的にはそのパトロンが里美の愛人と認識されているが、実際は広末専務の愛人で、広末に島田浩二を引き合わせたのも里美なのだろう。
春美は里美が何故自分に敵対行為を繰返す原因が、思い当たらないと言って首を傾げていた。ただ、銀座の老舗クラブ"花"の花江ママが、以前2が"花"で働いていた時、同僚ホステスの常連客を身体を使って奪っている里美に春美が注意した事で大喧嘩になったと話してくれた。その場は、花江ママが2人を諌め、無理矢理仲直りさせたらしいが、それ以降、ホステス達が里美を無視するようになり居心地が悪くなった里美は、春美と花江ママに"きっと後悔させてやるから覚悟していろ"と捨て台詞を残して辞めて行ったらしい。
上昇志向が高く客足来も上手かった里美を将来は銀座を背負って立つクラブママに育てようと目を掛けていたらしいが、自分の非を一切認めず、好意で注意してくれた同僚を何時迄も恨み蔑む性格が治っていないのだろうと語った。
大凡の事情を知った隆之は、クラブ"里"の開店当時、頻繁に接待で使っていた友人を思い出し、久々に呼び出した。軽くホテルのラウンジで飲んだ後、クラブ"里"に連れて行ってくらないかと頼むと、友人は
"きっと後悔するから止めておいた方が良い"
と全く乗ってこない。事情を聞くと、春美からパトロンを寝取り多額の資金を引き出した里美の店は、"花"や"グランデ"から売れっ子ホステスを高い支度金で次々と引抜き一時は飛ぶ鳥も落とす繁盛振りだったらしい。
ところが、引抜いたホステス達の馴染み客はともかくとして、里美がホステス達に紹介した客の殆どは、銀座のクラブに似つかない品の無い連中で、金払いも悪く、結果ホステス達は売掛金の回収で四苦八苦するようになっているらしい。
花江ママや春美は客の本性を見抜き、ツケ払いさせる客を厳選していたので、新人ホステスでも売掛金で悩むことも無く、働き易いクラブだと言われていたが、所詮は金で動く水商売の世界はそれだけではやっていけないのも現実だった。
花江ママは苦しいながらも昔の馴染み客などに声を掛け何とか持ち堪えていたが、集中的に売れっ子ホステスを引き抜かれた春美の店は30人いたホステスから18人を失い、"グランデ"はもう駄目だろうと巷で噂される状況まで至っていた。
そこに隆之が資金援助した事で当面の危機を乗越え、隆之に恩を返そうと奮起した春美は質の良いホステスを首都圏だけで無く関西圏まで駆けずり回り掻き集め、昔以上にクラブを繁盛させている。
一方、ジリ貧状態に至った里美の店は、高級キャバクラのような店に変わってしまい、ここ最近は顔を出していないと渋る友人を何とか説き伏せ一緒にクラブ"里"へ足を運んだ。
店の造りは高級クラブ風だったが、雰囲気や客層は"花"や"グランデ"と明らかに違う。おそらく他店から引抜いたと思われる少し年配のホステスが暇そうにしたいる一方、20歳前後のホステス達は忙しそうにボックスを渡り歩いている。
友人が高級キャバクラと言っていた通り、若い年齢層の客が殆どで、9時過ぎに隆之らが入店した後からも20代後半から30代前半くらいのグループが次々と入店している。何れのグループも1時間余りで帰ってしまうが、客入りはあるのでそれなりに繁盛しているように思えた。それでも11時を過ぎると客足も途絶え、残った客は隆之と友人だけになった。
「そろそろ出るか。俺は明朝から大阪出張で荷物の準備もあるからな」
「お前も奥さんが亡くなって大変だな。今日は無理に誘った私に奢らせてくれ?」
「埋め合わせはそのうちと言う事で、今日はご馳になるかな。彼女、会計を頼む」
友人が席についていた30代前半くらいのホステスに告げると、ホステスは立ち上がりざまに隆之の耳元で囁き
「森下会長、"花"に戻りたいの花江ママにそれとなく話してくださらない」
と店の名刺をポケットに差し込み
「里美ママ、お客様がお会計だそうよ」
ホステスは哀願するような視線で隆之を見詰め
「本日はありがとうございました。またのご来店をお待ちしています」
優雅にお辞儀したベテランホステスが席を離れると、直ぐに奥からモデル並みのスタイルをした女が小さなトレイに伝票を載せて現れた。
「あら、信ちゃん、お久し振りね。最近、全然店に顔を出してくれないから心配していたのよ」
「接待で使う雰囲気じゃ無くなったので、ちょっと足が遠退いてしまってね。今日は連れが一度行って見たいと言うので、こう言っちゃママに失礼かも知れないが、接待は無理として、プライベートで飲みに来るには良い店だと思う」
「有難う、信ちゃんにそう言って貰えると嬉しいわ。色々事情があってこんな店にしちゃったけど、私も銀座の女、高級クラブを持つ夢を捨てていないから、暫く待ってくれれば、また接待に使って貰える店をオープンして見せるわ。それはそれとして、お連れの方を紹介してくださいな」
屈むようにして差し出された里美の名刺を受け取りながら、胸元が大きく抉れたドレスから覗く、推定G-cupの巨乳が今にもドレスから飛び出してくるような迫力に思わず目を奪われそうになってしまう。この女が、春美を目の敵にしている寺崎里美なのかと思いながら受け取った名刺に視線を移す。
「ママ、取り敢えず会計を済ましてくれないか?」
「あら、御免なさい。どっちに渡せば良いの?」
「あぁ、私が」
受け取った伝票を見ると6万3千円、1時間くらいで帰れば1人1万円余りで収まりそうな値段、これなら若いサラリーマンでも何とかなる額だと納得した。高級クラブを経営する才覚は無いかもしれないが、高級感を残しながらリーズナブルな料金で若い世代をターゲットにした商売を思い付く里美は、経営者として意外な才覚を有しているかもしれない。
それだけの才覚を持ちながら、異様なまで高級クラブに執着しているのは春美への対抗心だけなのかもしれない。財布を開きお札を取出した時、里美が財布の中を凝視し一瞬笑みを浮かべたのを隆之は見逃さなかった。
「里美ママ、随分森下に興味が有るようだな。森下は根っからの技術屋で、今は経営権を息子に譲り名誉会長をやっているが、一代で町工場から森下製作所を世界的大企業にまで育てた凄腕の経営者でもあるのだよ。あっ、森下は経営から一歩引いてはいるが、かなりのパテントを個人所有しているから、ママにその気が有れば良いパトロンになってくれるかもな」
友人の話を聞いた里美は怪しい笑みを浮かべ、お金を受け取ると先から立ち去った。
「じゃあ、悪いが俺は先に帰るからな。35分の電車に乗れば乗り換えの終電に間に合うから、貴様と違って定年過ぎの再雇用サラリーマンにタクシーは贅沢だからな」
友人は隣に座っていた若いホステスに何か耳打ちをするとダッシュで店を出て行った。少しして里美ママが戻って来て
「信ちゃん、帰ったみたいね」
すると、さっきまで友人の隣に座っていた若いホステスが
「連れの人にタクシーを呼んでやってくらって、さっきのお客様に頼まれたのですけど」
「後は私がお相手するから、美樹ちゃんは上がって良いわよ」
若いホステスを手で追い出すような仕草をした里美は、彼女が席から外れると、隆之の隣に腰を下ろし凭れ掛かるようにして豊満な乳房を押し付け
「お店は12時までなんだけど、少しお話しがしたくなったから付き合ってくださらない」
里美が潤んだ瞳を隆之に向ける。
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