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第64話 さようなら、ノジャ
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「ここだよ」
その声が聞こえた方、ノジャの方を見ると、ノジャを捕らえたヨミがいた。
「油断だね」
「ノジャ!」
俺は叫び、ノジャに手を伸ばしたが、ノジャを抱えたヨミは飛び上がった。
ヨミの隣にはコノヨがいた。
アキラが杖を構える。
「我々の神様。油断してくれて良かった」
「確かに油断していたが……もう良いと思ったのじゃ。伊吹との旅ももう終わりじゃ」
ヨミはその言葉を聞いた後、俺を睨んだ。
「もう、終わりでいいのじゃ」
ノジャは目を伏せた。
「ヨミが相手ではもうダメだしのう。手加減してたじゃろ?」
「ああ。我々の神様。我々をよくわかっている」
「退けることはできても、殺せぬ。もう良いのじゃ」
ノジャは目を開き、俺を見た。
「伊吹。ありがとう」
「ノジャ、待てよ。殺されるんだぞ!」
「良いのじゃ。旅はたくさんできたからのう」
ヨミは俺を睨んだまま、ノジャをコノヨに渡した。そして、大剣の柄を握る。
「ヨミ」
その行動を見たノジャはヨミを制止した。
「わしがおとなしいのは何故かわかるか?」
「……わかる」
ヨミは大剣から手を離した。
「では、最後の大仕事をするかのう」
ノジャの体が光り輝く。
ノジャの体は大きくなり、大人の女性のようになった。髪がさらに伸び、耳が長くとんがった。
どこかで見たことがある。
「さようなら。伊吹」
世界が真っ白に輝く。
目を開くと、見慣れているけど、見慣れない景色が広がっていた。
俺は歩道にいた。
車道には車が行き交い、制服やスーツ姿の人たちが歩いていた。
「え、ここは……」
ノジャも杏奈もいなかった。
いつもの通学路だ。
周りの人々は好奇の目で俺を見ていた。
俺は自分の服装を見てみると、イマジン界で手に入れた服のままだった。
「そういえば、俺はどういう扱いになってるんだ。それを確かめるくらい良いだろう」
俺は現代日本にとっては奇妙な格好のまま、街中を歩くことになった。
家は普通にあった。いつも通りの自宅だ。
よくある二階建ての家。
「あ! 鍵がない」
俺の荷物は杏奈に預けていたのだ。
俺は仕方なく、インターホンを鳴らした。
「どちら様ですか?」
母さんの声だ。
「俺だよ。伊吹。開けて」
「伊吹? 誰かしら……」
インターホンの向こうで、困惑している母さんの声がわかる。
「伊吹だって。あ、変な格好だから、わかんない?」
母さんは無言だった。
「母さん?」
「お家を間違えているのではないかしら」
俺は聞き間違いをしているのだろうか。
それとも、何かの冗談なのか。
「いや、俺、田仲伊吹で、母さんの息子だよ?」
「うちには息子は二人しかいません」
え? 俺には兄弟が二人いる。弟と兄だ。
「すみません。他を当たってください」
そう言われて、インターホンは閉じられてしまった。
何が起きているんだ?
俺は一旦、冷静になるために、近くの公園に行くことにした。
すると、学校からの帰り途中であろう弟の純が歩いていた。
「純!」
俺が叫ぶと、怪訝そうな顔をした純だった。
俺を不審な目で見ながら、距離を取るように歩いた。
「純? 俺だよ。伊吹。家を長く開けていたから、忘れたとか?」
純はその言葉にビクッとして、走り去った。
「純!」
何であんな顔をしていたんだ。まるで、俺は不審者だ。
不審者のような格好だが、顔は伊吹のままだろう。
「何で……」
俺は困惑したまま、公園に着いた。
ベンチに座り、物事を整理しようと思った。
その声が聞こえた方、ノジャの方を見ると、ノジャを捕らえたヨミがいた。
「油断だね」
「ノジャ!」
俺は叫び、ノジャに手を伸ばしたが、ノジャを抱えたヨミは飛び上がった。
ヨミの隣にはコノヨがいた。
アキラが杖を構える。
「我々の神様。油断してくれて良かった」
「確かに油断していたが……もう良いと思ったのじゃ。伊吹との旅ももう終わりじゃ」
ヨミはその言葉を聞いた後、俺を睨んだ。
「もう、終わりでいいのじゃ」
ノジャは目を伏せた。
「ヨミが相手ではもうダメだしのう。手加減してたじゃろ?」
「ああ。我々の神様。我々をよくわかっている」
「退けることはできても、殺せぬ。もう良いのじゃ」
ノジャは目を開き、俺を見た。
「伊吹。ありがとう」
「ノジャ、待てよ。殺されるんだぞ!」
「良いのじゃ。旅はたくさんできたからのう」
ヨミは俺を睨んだまま、ノジャをコノヨに渡した。そして、大剣の柄を握る。
「ヨミ」
その行動を見たノジャはヨミを制止した。
「わしがおとなしいのは何故かわかるか?」
「……わかる」
ヨミは大剣から手を離した。
「では、最後の大仕事をするかのう」
ノジャの体が光り輝く。
ノジャの体は大きくなり、大人の女性のようになった。髪がさらに伸び、耳が長くとんがった。
どこかで見たことがある。
「さようなら。伊吹」
世界が真っ白に輝く。
目を開くと、見慣れているけど、見慣れない景色が広がっていた。
俺は歩道にいた。
車道には車が行き交い、制服やスーツ姿の人たちが歩いていた。
「え、ここは……」
ノジャも杏奈もいなかった。
いつもの通学路だ。
周りの人々は好奇の目で俺を見ていた。
俺は自分の服装を見てみると、イマジン界で手に入れた服のままだった。
「そういえば、俺はどういう扱いになってるんだ。それを確かめるくらい良いだろう」
俺は現代日本にとっては奇妙な格好のまま、街中を歩くことになった。
家は普通にあった。いつも通りの自宅だ。
よくある二階建ての家。
「あ! 鍵がない」
俺の荷物は杏奈に預けていたのだ。
俺は仕方なく、インターホンを鳴らした。
「どちら様ですか?」
母さんの声だ。
「俺だよ。伊吹。開けて」
「伊吹? 誰かしら……」
インターホンの向こうで、困惑している母さんの声がわかる。
「伊吹だって。あ、変な格好だから、わかんない?」
母さんは無言だった。
「母さん?」
「お家を間違えているのではないかしら」
俺は聞き間違いをしているのだろうか。
それとも、何かの冗談なのか。
「いや、俺、田仲伊吹で、母さんの息子だよ?」
「うちには息子は二人しかいません」
え? 俺には兄弟が二人いる。弟と兄だ。
「すみません。他を当たってください」
そう言われて、インターホンは閉じられてしまった。
何が起きているんだ?
俺は一旦、冷静になるために、近くの公園に行くことにした。
すると、学校からの帰り途中であろう弟の純が歩いていた。
「純!」
俺が叫ぶと、怪訝そうな顔をした純だった。
俺を不審な目で見ながら、距離を取るように歩いた。
「純? 俺だよ。伊吹。家を長く開けていたから、忘れたとか?」
純はその言葉にビクッとして、走り去った。
「純!」
何であんな顔をしていたんだ。まるで、俺は不審者だ。
不審者のような格好だが、顔は伊吹のままだろう。
「何で……」
俺は困惑したまま、公園に着いた。
ベンチに座り、物事を整理しようと思った。
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