【完結】イマジン 準備号〜仲間が強すぎるので、俺は強くならなくて良いらしい〜

夜須 香夜(やす かや)

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第63話 アカツキの死

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 ノジャは俺の横から前に出て、アキラの方へ行こうとした。俺もそれについていく。
「ヨミ」
 気絶しているヨミを見て、ノジャは涙を浮かべた。
「すまない。すまない……」
「捕まえておくか?」
「いや、殺す」
 ノジャはそう言った。
「でも、それをするのはわしじゃ。わしがトドメを刺す」
 ノジャはどこに持っていたのか、黒い刃の短剣をかざした。
 ノジャがヨミに短剣を振りかざした瞬間、何かの影がヨミとノジャの間に来た。
 赤いものが飛び散る。
「アカツキ……」
 目が覚めたのか、ヨミの声が聞こえた。
 ヨミとノジャの間にはアカツキがいた。
「庇うなんて」
 俺は呟いた。
 ノジャの短剣はアカツキの腹に浅く刺さっていた。
 これなら、致命傷にはならないだろうと俺は思った。
「これくらい庇ったうちにならないよ」
 アカツキはそう言ったが、跪いた。
 ノジャが短剣を引き抜くと、一歩下がって、アカツキを見下ろす。
「バカなやつじゃ。これは普通の剣ではないぞ」
「は?」
 アカツキの目は輝いたまま、ノジャを見た。
「そうだな。アカツキはバカだからな」
 アカツキの後ろにいるヨミは、くつくつと笑う。
「俺にチャンスをくれるとはな!」
 ヨミはそう言って、立ち上がる。ボロボロの体を引きずりながら、後ずさる。
「ヨミ?」
 アカツキはヨミの方を向いた。顔は見えないので、どのような表情をしているのだろうか。
「その剣はダメだ、アカツキ」
 ヨミは笑顔になる。
「どういうこと?」
 アカツキの声は少し震えていた。
「これは、わしの世界の人間を必ず殺してしまう剣なのじゃよ。これは呪われた剣なのじゃ」
 アカツキはまたこちらを見た。
 目は見開かれていて、じっとこちらを見ているだけだ。
 腹から少し溢れる血ではわからないが、ノジャがそう言うなら、死んでしまうということだ。
「うぐ……うううう」
 アカツキは突然うめき出した。
 体はガクガクと震え、膝立ちすらできなくなったのか倒れてしまう。
「なんで、体が寒い。ヨミ……ヨミ、助けて」
「ありがとう。アカツキ」
 ヨミはそれだけ言って、にこりと笑い、影の中に消えてしまった。
「ヨミーー!」
 アカツキは叫ぼうとしたが、声が掠れていた。
 そして、アカツキは少し震えたと思ったら、動かなくなってしまった。
 死んでしまった。
 目の前で、人が死んだ。
「……すまない」
「ノジャ。殺す必要があったのか?」
「ある」
 ノジャはゆっくりと俺の顔を見た。
 目はとても真剣で、殺さなくても良いじゃないかと言える雰囲気ではなかった。
 アカツキと戦っていた皐月がやって来た。
「姉さんの方が気になる」
「そうだな。俺たちは行ってくるけど、伊吹とノジャも来るよな?」
「あ、ああ」
 アカツキは他のギルドの人に任せて、杏奈の所へ向かうことにした。

 俺たちは杏奈が行ったであろう方向を走っていた。
 戦闘が行われていたからなのか、街に人はいなかった。窓から様子を伺う人がたまに見えた。
 開けた広場に着くと、杏奈が腰に手を当てて一人で立っていた。
「杏奈!」
「アキラ、みんな」
 杏奈はこちらを振り向くと駆け寄ってきた。
「どうだった?」
 俺がそう聞くと、杏奈は複雑な表情を浮かべた。
「深手は負わせたけど、逃げられた」
「こっちも似たような感じだな」
 俺たちはとりあえず、ギルドへ戻ろうとしたが、再び地震が起きる。
「またか?」
 俺たちは辺りを見渡すが、誰もいなかった。
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