16 / 57
この世界の主人公
しおりを挟む
「お兄さん迷子?」
問いかける褐色の肌をした少女。
――こいつは……。
思わず目を見開いた。
俺はこの少女を知っている。
「何……?」
不思議そうに首をかしげる褐色の肌の少女。
俺は、大分板についてきた役に入る。
「いや、実はそうなんだ。父に連れてきてもらったんだけど、迷っちゃってね。どっちに行けばいいかもわからなくて。困っていたんだ」
「へぇ。この街は迷いやすいからね。そういう人、よく見るよ」
「やっぱり? 初めての街は難しいね」
「ふふ、大変だね。じゃあ私が表通りまで連れていってあげようか?」
「助かるよ。ところで、君の名前は?」
「私? 私はサーシャだよ」
「……やっぱり、そうなんだな」
「え?」
「いや、なんでもないよ。私はディミトリウスという名前だよ」
笑ってごまかし、偽名を名乗り。彼女の案内で歩き出す。
彼女は身なりこそ粗末だが、整った顔立ちをしている。
大きなパチリとした瞳が特徴的な庇護欲を唆りそうな容姿。
——間違いない。あのサーシャだ。
画面越しに見た顔。
しかし、見知った彼女の姿からは少し小柄に見えた。
小柄なだけではなく、少し細過ぎるように見える体つき、髪には色艶も見えない。
栄養状態が良くないのは明白だ。
その声は少し掠れていた。
だがその声音は妙に柔らかく、相手を安心させるような丸さを帯びる。
「一人で心細かったでしょ?」
「サーシャがいなかったら大変だったよ。商会のみんなとはぐれちゃってね」
「もう少し頑張って。もうすぐ表通りだよ」
「本当に?……表通りから離れてる気もするけど?」
軽く探りを入れる。
もちろん、気づいていた。
彼女の案内は、表通りなんかではなく奥へ向かってる事に。
「あ、うん。そうだよ……そういえばお兄さんのお父さん達、どこへ行く予定? そこまで連れてってあげようか? その代わり……少しお礼が欲しいな。私、こんな所に住んでいるくらいだから、結構苦労してるんだよ」
話題をうまく切り替える小さな体に、巧妙な頭脳。
「そうだね……いいよ。私の家は結構なお金持ちだからね……ふふ」
思わず笑みがこぼれた。
「そうなんだ、期待してるよ。ああ、もう少しで表通りだよ」
サーシャも笑った。
「そうなんだ」
「それで表通りに出たらどうするの? お兄さんのお父さん一緒に探してあげようか?」
「とりあえず表通りまででいいよ。後は自分で探す。その時に少しばかりはちゃんとお礼もしようじゃないか」
そう言って腰に付けた布の袋をジャラジャラと揺らす。
彼女の視線は、袋に釘付けになる。
まるで猫じゃらしを猫の前で揺らしたみたいに。
暫く俺たちは和やかな会話をしながら路地裏を進んだ。
そして、サーシャが言った。
「うん、ありがとう。さぁお兄さん着いたよ」
立ち止まるが、ここは、明らかに、大通りなどではない。
少し開けた広間のような場所だった。
――囲まれたな。
状況を察した。
四方の廃屋の影から、視線が刺さってきた。
「ここ、表通りじゃないよね?」
サーシャに問いかけるが、
「うん。そうだね。だけど——ここが、お兄さんの終着点ッ!。今だ……みんなツ!」
そう叫ぶと、サーシャは俺から距離を取る。
そして——あちこちから溢れ出す魔力。
「「「「大地よ、わが敵を縛る縄と成れ———ッ!」」」」
――これは……。
まるで合唱するように聞こえる詠唱。
「「「「【大地の拘束】」」」」
その声が消えた瞬間、空気が一変した。
足元の石畳がわずかに浮き、重力が歪む。
次の瞬間、土の縄が蛇のように這い出した。
四肢に絡みつくように足元から這い上がってくる、無数の触手のような縄。
ギチギチと音がなる。
「……ッ!」
瞬く間の拘束。
少しの腕力では、引きちぎれない土の縄が体に巻きつき身動きが取れない。
「やぁやぁ、皆、上出来だよ。久々の大物だ、今夜はご馳走だよ——ッ!」
豹変した声でサーシャが大笑いしながら手を叩く。
「やったねサーシャッ!」
「この人……お金持ち?」
その合図を受けたように、貧しい身なりの子どもたちが影から現れた。
その身なりはとても貧相だ。
「……やられたよ。こういう作戦か」
一人一人は幼くとても弱い。
だが、有利な場所に獲物を誘い込み、複数人で仕留める。
弱者が生きるために積み上げた工夫。
そう、サーシャは俺をここに連れ込んで嵌めたのだ。
「悪いね。私たちも生きるのに必死なんだよ。何の苦労も知らないお兄さんみたいな人には、わからないだろうけどさ」
サーシャは黒い笑みを浮かべる。
「お前がこの子らの頭。そして、俺はまんまとつかまってしまった可哀想な獲物。全てお前の計算通りということか……」
「まぁ、そういうこと……ッ! まぁ、お兄さんの命まで取らないから安心して——」
喜色を浮かべたその顔で、金貨の袋に手を伸ばした瞬間。
「はははッ! 素晴らしいぞ、サーシャよ!」
思わず吹き出すように笑った。
「な、何……! 一体——(この人、感じが変わった……—ッ!?)」
「お前は、合格だ……ッ!」
全身の魔力を流し込み土の縄を灰燼に帰す。
大抵の魔術は術者の力量が違えば、魔力だけで無力化できる。
全身の拘束を解くと、自由になった手足で、
「なんで——ッ!」
驚愕を浮かべるサーシャとの間合いを詰め、彼女を地へ伏せさせる。
「——うッ!」
間髪入れず、うめき声をあげる彼女の背後から腕を極める。
「いいか、拘束魔術というのはこういう風にかけるのだ」
超多重の拘束魔術で全身を拘束する。
彼女は芋虫みたいに地面に転がっていた。
「「「「「「サーシャッ!」」」」」」
周りの少年少女達が悲鳴を上げ、名前を呼ぶ。
「捕まえた……。捕まえたぞ。ふふ……あはははッ!」
歓喜の高笑いを上げる俺を前に、
「み、みんな……逃げろ! や、ばい……ッ!」
蒼白に染まった表情で叫ぶサーシャ。
「ど、どうする……?」
「サーシャッ!」
「た、助けないと……」
「いいから……逃げて、私なら大丈夫だから……ッ!」
絞り出すように言うサーシャ。
「なぁ、お前達も俺の下に来る気は無いか……ッ!? 特別に合格にしてやるぞ」
「あの人怖い……」
「どうしようッ!!」
「ヤバイよッ! アイツッ!」
だが、周りからの反応は悪い。
――俺のようなイケメンに怯えるとは……。
「だ、大丈夫……。後から……後から……追いかけるから……絶対に追いかけるから……」
絞り出すような声のサーシャ。
「……行こう……」
「嫌だよ……。サーシャを置いていくなんて……」
「で、でも……うん……そうだね……」
僅かな、逡巡の後に少年少女たちは逃げ出す。
とても、思い切りが良かった。
仲間が捕まる事を事前に想定しておいたのだろう。
「絶対に、絶対に帰ってきてよねサーシャッ! 待ってるから!」
そう言って最後まで残っていた、少女が逃げ出す。
「……」
その声にサーシャは応えない。
四方八方に散り散りに足音が遠ざかっていった。
静寂。路地に俺と彼女だけが残る。
「二人だけになってしまった」
「そうだね……。ヘマしたな。騙されちゃったよ。何? お兄さん猫被ってた訳?」
「それはお互い様だろ、サーシャ」
俺は彼女に笑いかける。
「……そうだね。でも、それでどうするの? 私を殺すの? それとも、お金? 見てわかるでしょ? お金なんて持ってないよ? それとも体が目当て?(その笑顔、恐いよ)」
「殺す? 冗談だろ。やっと捕まえた俺の獲物だ。金も要らん。腐るほどあるからな。では体か? 体と言えば体だな。俺を襲ったツケ……先ずは、その体で払ってもらう事にしよう」
「私なんかの、貧相な体がいいの?」
「そうだなお前がいい、俺はお前が欲しい……ふふ」
そうサーシャの耳元で甘く囁く。
「ふーん、私が欲しいんだ? じゃあ具体的にどうして欲しいの?(この人あれだ、少女趣味《ロリコン》っていう奴だ……。聞いたことある……ッ!)」
「ここではな、まずは、二人きりでゆっくり話したい。まずは、お前をどこか静かなところへ連れて行く……」
「へ、へぇー。そうなんだ……た、楽しみだなぁ(——何とかして、逃げないと、考えろ、考えろッ!——)」
サーシャは引きつる顔で必死に軽口を叩きながら、如何にしてこの状況から逃げ出すのか考えていた。
だが、拘束魔術を掛けられている上に、上から組み伏せられている。
抜け出しようがない。
「……そうだな、あそこが良いな。ここから距離も近い……」
「へぇ、近いんだ」
「ああ。いい場所だぞサーシャ」
「た、楽しみだなぁ……」
サーシャは必死に考え、この状況を脱するために思考する。
その時、突然――。
「その子を放せッ!」
と正義感に満ちあふれた少年の声が、路地裏に響いた。
――まさか……。
その声を知っていた。
忘れもしない。
その声は、かつて、幼きに日に幾度もなく耳にした声。
そして、レクス・サセックスという存在が決して無視できない声。
この世界で、自分の存在を唯一脅かす可能性のある人物の声。
「もう一度言う、その子を離すんだ――ッ!」
振り返ると、そこには燃えるような赤い髪をした少年がいた。
その少年の瞳は、正義感を湛えた、どこまでも透き通るような大海を思わせる碧眼。
その少年の端正な顔は、幾度となく見た、まさしくその顔あった。
――こんなところで会う事になるとは……。
その少年の名を呟く、
「ローラン」
この世界の主人公と言える人物のその御名を――。
問いかける褐色の肌をした少女。
――こいつは……。
思わず目を見開いた。
俺はこの少女を知っている。
「何……?」
不思議そうに首をかしげる褐色の肌の少女。
俺は、大分板についてきた役に入る。
「いや、実はそうなんだ。父に連れてきてもらったんだけど、迷っちゃってね。どっちに行けばいいかもわからなくて。困っていたんだ」
「へぇ。この街は迷いやすいからね。そういう人、よく見るよ」
「やっぱり? 初めての街は難しいね」
「ふふ、大変だね。じゃあ私が表通りまで連れていってあげようか?」
「助かるよ。ところで、君の名前は?」
「私? 私はサーシャだよ」
「……やっぱり、そうなんだな」
「え?」
「いや、なんでもないよ。私はディミトリウスという名前だよ」
笑ってごまかし、偽名を名乗り。彼女の案内で歩き出す。
彼女は身なりこそ粗末だが、整った顔立ちをしている。
大きなパチリとした瞳が特徴的な庇護欲を唆りそうな容姿。
——間違いない。あのサーシャだ。
画面越しに見た顔。
しかし、見知った彼女の姿からは少し小柄に見えた。
小柄なだけではなく、少し細過ぎるように見える体つき、髪には色艶も見えない。
栄養状態が良くないのは明白だ。
その声は少し掠れていた。
だがその声音は妙に柔らかく、相手を安心させるような丸さを帯びる。
「一人で心細かったでしょ?」
「サーシャがいなかったら大変だったよ。商会のみんなとはぐれちゃってね」
「もう少し頑張って。もうすぐ表通りだよ」
「本当に?……表通りから離れてる気もするけど?」
軽く探りを入れる。
もちろん、気づいていた。
彼女の案内は、表通りなんかではなく奥へ向かってる事に。
「あ、うん。そうだよ……そういえばお兄さんのお父さん達、どこへ行く予定? そこまで連れてってあげようか? その代わり……少しお礼が欲しいな。私、こんな所に住んでいるくらいだから、結構苦労してるんだよ」
話題をうまく切り替える小さな体に、巧妙な頭脳。
「そうだね……いいよ。私の家は結構なお金持ちだからね……ふふ」
思わず笑みがこぼれた。
「そうなんだ、期待してるよ。ああ、もう少しで表通りだよ」
サーシャも笑った。
「そうなんだ」
「それで表通りに出たらどうするの? お兄さんのお父さん一緒に探してあげようか?」
「とりあえず表通りまででいいよ。後は自分で探す。その時に少しばかりはちゃんとお礼もしようじゃないか」
そう言って腰に付けた布の袋をジャラジャラと揺らす。
彼女の視線は、袋に釘付けになる。
まるで猫じゃらしを猫の前で揺らしたみたいに。
暫く俺たちは和やかな会話をしながら路地裏を進んだ。
そして、サーシャが言った。
「うん、ありがとう。さぁお兄さん着いたよ」
立ち止まるが、ここは、明らかに、大通りなどではない。
少し開けた広間のような場所だった。
――囲まれたな。
状況を察した。
四方の廃屋の影から、視線が刺さってきた。
「ここ、表通りじゃないよね?」
サーシャに問いかけるが、
「うん。そうだね。だけど——ここが、お兄さんの終着点ッ!。今だ……みんなツ!」
そう叫ぶと、サーシャは俺から距離を取る。
そして——あちこちから溢れ出す魔力。
「「「「大地よ、わが敵を縛る縄と成れ———ッ!」」」」
――これは……。
まるで合唱するように聞こえる詠唱。
「「「「【大地の拘束】」」」」
その声が消えた瞬間、空気が一変した。
足元の石畳がわずかに浮き、重力が歪む。
次の瞬間、土の縄が蛇のように這い出した。
四肢に絡みつくように足元から這い上がってくる、無数の触手のような縄。
ギチギチと音がなる。
「……ッ!」
瞬く間の拘束。
少しの腕力では、引きちぎれない土の縄が体に巻きつき身動きが取れない。
「やぁやぁ、皆、上出来だよ。久々の大物だ、今夜はご馳走だよ——ッ!」
豹変した声でサーシャが大笑いしながら手を叩く。
「やったねサーシャッ!」
「この人……お金持ち?」
その合図を受けたように、貧しい身なりの子どもたちが影から現れた。
その身なりはとても貧相だ。
「……やられたよ。こういう作戦か」
一人一人は幼くとても弱い。
だが、有利な場所に獲物を誘い込み、複数人で仕留める。
弱者が生きるために積み上げた工夫。
そう、サーシャは俺をここに連れ込んで嵌めたのだ。
「悪いね。私たちも生きるのに必死なんだよ。何の苦労も知らないお兄さんみたいな人には、わからないだろうけどさ」
サーシャは黒い笑みを浮かべる。
「お前がこの子らの頭。そして、俺はまんまとつかまってしまった可哀想な獲物。全てお前の計算通りということか……」
「まぁ、そういうこと……ッ! まぁ、お兄さんの命まで取らないから安心して——」
喜色を浮かべたその顔で、金貨の袋に手を伸ばした瞬間。
「はははッ! 素晴らしいぞ、サーシャよ!」
思わず吹き出すように笑った。
「な、何……! 一体——(この人、感じが変わった……—ッ!?)」
「お前は、合格だ……ッ!」
全身の魔力を流し込み土の縄を灰燼に帰す。
大抵の魔術は術者の力量が違えば、魔力だけで無力化できる。
全身の拘束を解くと、自由になった手足で、
「なんで——ッ!」
驚愕を浮かべるサーシャとの間合いを詰め、彼女を地へ伏せさせる。
「——うッ!」
間髪入れず、うめき声をあげる彼女の背後から腕を極める。
「いいか、拘束魔術というのはこういう風にかけるのだ」
超多重の拘束魔術で全身を拘束する。
彼女は芋虫みたいに地面に転がっていた。
「「「「「「サーシャッ!」」」」」」
周りの少年少女達が悲鳴を上げ、名前を呼ぶ。
「捕まえた……。捕まえたぞ。ふふ……あはははッ!」
歓喜の高笑いを上げる俺を前に、
「み、みんな……逃げろ! や、ばい……ッ!」
蒼白に染まった表情で叫ぶサーシャ。
「ど、どうする……?」
「サーシャッ!」
「た、助けないと……」
「いいから……逃げて、私なら大丈夫だから……ッ!」
絞り出すように言うサーシャ。
「なぁ、お前達も俺の下に来る気は無いか……ッ!? 特別に合格にしてやるぞ」
「あの人怖い……」
「どうしようッ!!」
「ヤバイよッ! アイツッ!」
だが、周りからの反応は悪い。
――俺のようなイケメンに怯えるとは……。
「だ、大丈夫……。後から……後から……追いかけるから……絶対に追いかけるから……」
絞り出すような声のサーシャ。
「……行こう……」
「嫌だよ……。サーシャを置いていくなんて……」
「で、でも……うん……そうだね……」
僅かな、逡巡の後に少年少女たちは逃げ出す。
とても、思い切りが良かった。
仲間が捕まる事を事前に想定しておいたのだろう。
「絶対に、絶対に帰ってきてよねサーシャッ! 待ってるから!」
そう言って最後まで残っていた、少女が逃げ出す。
「……」
その声にサーシャは応えない。
四方八方に散り散りに足音が遠ざかっていった。
静寂。路地に俺と彼女だけが残る。
「二人だけになってしまった」
「そうだね……。ヘマしたな。騙されちゃったよ。何? お兄さん猫被ってた訳?」
「それはお互い様だろ、サーシャ」
俺は彼女に笑いかける。
「……そうだね。でも、それでどうするの? 私を殺すの? それとも、お金? 見てわかるでしょ? お金なんて持ってないよ? それとも体が目当て?(その笑顔、恐いよ)」
「殺す? 冗談だろ。やっと捕まえた俺の獲物だ。金も要らん。腐るほどあるからな。では体か? 体と言えば体だな。俺を襲ったツケ……先ずは、その体で払ってもらう事にしよう」
「私なんかの、貧相な体がいいの?」
「そうだなお前がいい、俺はお前が欲しい……ふふ」
そうサーシャの耳元で甘く囁く。
「ふーん、私が欲しいんだ? じゃあ具体的にどうして欲しいの?(この人あれだ、少女趣味《ロリコン》っていう奴だ……。聞いたことある……ッ!)」
「ここではな、まずは、二人きりでゆっくり話したい。まずは、お前をどこか静かなところへ連れて行く……」
「へ、へぇー。そうなんだ……た、楽しみだなぁ(——何とかして、逃げないと、考えろ、考えろッ!——)」
サーシャは引きつる顔で必死に軽口を叩きながら、如何にしてこの状況から逃げ出すのか考えていた。
だが、拘束魔術を掛けられている上に、上から組み伏せられている。
抜け出しようがない。
「……そうだな、あそこが良いな。ここから距離も近い……」
「へぇ、近いんだ」
「ああ。いい場所だぞサーシャ」
「た、楽しみだなぁ……」
サーシャは必死に考え、この状況を脱するために思考する。
その時、突然――。
「その子を放せッ!」
と正義感に満ちあふれた少年の声が、路地裏に響いた。
――まさか……。
その声を知っていた。
忘れもしない。
その声は、かつて、幼きに日に幾度もなく耳にした声。
そして、レクス・サセックスという存在が決して無視できない声。
この世界で、自分の存在を唯一脅かす可能性のある人物の声。
「もう一度言う、その子を離すんだ――ッ!」
振り返ると、そこには燃えるような赤い髪をした少年がいた。
その少年の瞳は、正義感を湛えた、どこまでも透き通るような大海を思わせる碧眼。
その少年の端正な顔は、幾度となく見た、まさしくその顔あった。
――こんなところで会う事になるとは……。
その少年の名を呟く、
「ローラン」
この世界の主人公と言える人物のその御名を――。
2
あなたにおすすめの小説
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした
高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!?
これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。
日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。
ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが
夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない!
絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。
ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。
おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!?
これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!
帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~
キョウキョウ
ファンタジー
普通の会社員だった佐藤隼人(さとうはやと)は、ある日突然異世界に招かれる。
異世界で勇者として10年間を旅して過ごしながら魔王との戦いに決着をつけた隼人。
役目を終えて、彼は異世界に旅立った直後の現代に戻ってきた。
隼人の意識では10年間という月日が流れていたが、こちらでは一瞬の出来事だった。
戻ってきたと実感した直後、彼の体に激痛が走る。
異世界での経験と成長が現代の体に統合される過程で、隼人は1ヶ月間寝込むことに。
まるで生まれ変わるかのような激しい体の変化が続き、思うように動けなくなった。
ようやく落ち着いた頃には無断欠勤により会社をクビになり、それを知った恋人から別れを告げられる。
それでも隼人は現代に戻ってきて、生きられることに感謝する。
次の仕事を見つけて、新しい生活を始めようと前向きになった矢先、とある人物が部屋を訪ねてくる。
その人物とは、異世界で戦友だった者の名を口にする女子高生だった。
「ハヤト様。私たちの世界を救ってくれて、本当にありがとう。今度は、私たちがあなたのことを幸せにします!」
※カクヨムにも掲載中です。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる