悪役転生〜主人公に全てを奪われて追放される踏み台悪役貴族に転生した〜

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邂逅

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 アリシアは重い瞼をこじ開け、意識を取り戻した。
 目の前に広がっていたのは、彼女が一度も目にした事が無い光景。
 木造と思われる建築物の床に彼女は転がされている事に気づく。
 室内は薄暗く、少しかび臭いがした。

(体が……これは魔封じの縄?)

 手足が縛られ、口には猿ぐつわがされている。
 自分の手足を縛る縄には、不思議な刻印が施されていた。

(私は……、どこかへ連れてこられた?)

 後頭部に鈍い痛みがまだ少し残っている。
 アリシアは自身の状態をそう冷静に推察する。
 縛られ続けていたのか、その手足に感じる圧迫感と、全身に痺れや痛みを感じる。

(か、固い……)

 アリシアは手足に必死に力を入れてみるが、その縄は切れる様子がない。
 ギチギチと音がするが、緩む気配すらない。
 口が自由であればこの縄に噛みついたり、口で縄をほどこうとも試みれるのだが、猿ぐつわを噛まされていては、どうしようもない。

「んッ! んッ! んッー!!」

 必死に手足を動かすが猿ぐつわを外す事も出来ない。
 暫くの間、なんとかこの状況を打開しようと必死に足掻くアリシアであったが、状況は好転しない。
 うつ手が思いつかない。

(なんとかしないと……逃げないと……)

 アリシアの中で、焦燥感が湧き起ってくる。
 
「んッ! んッ! んッー!!」

 焦りが大きくなるほど、恐怖も強くなる。
 ギチギチと必死になって手足を動かし、拘束を解こうと試みる。

「んッ! んッ! んッ!」

 必死にも足掻くが体力を失っていくばかり。
 無力な自分。抗う気力も衰えていく。
 少しずつ、抗う気力が衰え、黒い闇がアリシアの中で広がっていく。
 絶望という暗闇が。

(どうして、私が……)

 アリシアの瞳からは涙が滲みだし、体は震え始めた。
 心細くなった、彼女の脳裏に浮かぶのは、穏やかな村での生活、父と母の顔、そして、自分の幼馴染のあの少年の顔。

(もし、あの人が、ここに来たら……)

 自分を連れ去ったであろう、あの顔を思い出すと自分のこれから迎える末路を想像せずにはいられない。 
 緊張と、恐怖が高まっていく中。

 突然、ギイっという音がして扉が空いた。

「……ッ!」

 アリシアはビクッと反応すると音の方を凝視する。

「よ、よぉ……げ、元気かぁー?」

 そんな事を言いながら、男が入ってきた。
 その声にアリシアは聞き覚えがあった。
 そう自分を攫ったあの男の声だ。

(……あの人は……ッ!)

 丁度、その人物の事を考えていた。

「ったくよぉ、あいつは頭固いんだよなぁ。孕ませなきゃぁいんだろ? 見つけたのは俺なんだぁ。味見くらいさせろよなぁ……」

 その男は顔を赤らめ、酒瓶片手にこの部屋に入ってきた。
 少しぎこちなく歩き、その下腹部は何故か、異常な膨らみを見せていた。

(嫌)

 世間知らずなところが多いことは自覚していた。
 だが、アリシアの女としての本能が、この男が自分に対して何をしようとしているのか理解した。

「さ、さぁ、お、お楽しみと、いこうぜぇ……」
「んーッ! んーッ!」

 恐怖に怯えるアリシアに、男が下衆な笑みを浮かべて近寄ってきた。

「か、可愛いがってやぁあるから、さぁ、ひひッ お、俺は女の扱いが上手いんだぜぇッ!」
「んッ! んッ! んんッ!」

 アリシアは、その縛られた手足で必死に、男から逃げようともがくが、距離をとることもできない。

「ひひッ そ、その顔……、ふひひッ たまんなぃぜぇ……ッ!」

 一歩、一歩と、男が近づいてくる。

(誰か——、誰か、助けて——ッ! 誰か助けてくださいッ!)

 アリシアは、辺りを見回し猿ぐつわを噛まされた口で必死に助けを求めるが、その声が誰かの耳に届くことは無い。
 男はそんな様子を見て、まるで、美味しそうな、ごちそうを前にした獣の様に涎を流す。

「に、逃げるなって……ふひひ……」

 男のズボンは内圧から張り、その先端が向かってくる。

「んッ! んッ! んッ!」
「へへへ、大人しくしりゃぁ、良くしてやるからさぁ……」

 男は舌なめずりをし、アリシアに掴み掛かる。

「つ、捕まえたぁッ!」
「んーッ! んー! んんーッ!」

 縛られた手足を必死にバタバタさせて必死に抵抗する。
 だが、その拘束された少女の非力な力は、大柄の男の前では全く無力であった。

「あ、暴れるなって……」
「んッ! んッ! んッ!」

 アリシアは肩を掴まれ、地面に押し倒され、男にのしかかられてしまう。

「ひひッ!」
「んーッ! んーッ! んーッ!」

 アリシアの緊張と恐怖はピークに達した。

(ああ、ローラン)

 空白に支配されていく意識の中で、その時何故か彼女の脳裏には幼馴染の少年の顔が浮かんだ。

「が、我慢できないぜぇ……。ハァ……。ハァ……」

 男の手がアリシアの服に掛かり、強引に服を引っ張り、ビリビリと音を立てながら、服を破いてゆく。

(……なんで今、あなたの事ばかり……)

 アリシアはまるで、白昼夢の様に、かつて幼馴染の少年と過ごした日々を思い出す。
 一緒になって遊んだ思い出、
 少し得意げに魔術を教えてあげた思い出、
 交わした言葉。朗らかに笑う顔。

「……おおッ! 嬢ちゃんい、意外とあ、あるじゃねぇか……」

 柔らかな乳房を包む布地と、その滑らかな肢体を隠す下半身の布地を残して彼女の服は全て破かれてしまった。
 その生まれたままの姿を、簡素な下着を残して曝け出してしまう。

「う、美味そうだぜぇ!」

 ハァ ハァと息を荒げる、男の息は更に荒くなり、涎はぽたぽたと滴り落ち、アリシアの瑞々しい素肌に落ちて行く。
 深い絶望の底に沈んでいくアリシア。

(……ああ、ローラン……。私は、もしかして、あなたの事が好きだったのでしょうか……?)

 運命を受け入れようとする少女は自問する。
 だが、こんな状況になってさえ、アリシアは彼の事を好きなのかさえ分からなかった。

(でも……もし、そうだったなら……)

 もはや抵抗もできずに体は硬直し始めた。
 もう、耳も聞こえず、眼もよく見えなかった。
 恐怖で頭の中は、真っ白になっていく。

(私は……)

 深い闇に落ちて消え去っていく意識の中で、脳裏には、記憶の中の幼馴染の少年の笑顔だけが映っていた。

「い、いただきまぁーすッ!」

 興奮した男の手が、彼女の肌を守る最後の砦である、布地にかろうとしていた。

 その瞬間——。

「その女を放せ——ッ!」

 と、叫び飛び込んでくる誰かの声を耳にした。

「な、なんだぁ……?」
「もう一度言う、その女を離せ……—ッ!」

 アリシアを襲っていた男は思わず手を止めた。
 朦朧とした意識で音のほうを見ると、一人の少年とも、大人の男性とも取れるような年頃の男が立っていた。

(ローラン?)

 極限状態のアリシアは思わずその少年に幼馴染の少年を幻視した。

 彼女の意識が少しずつ、輪郭を帯び、その顔を確認すると、

 その髪は燃える様な赤髪ではなく、サラサラと揺れる金髪をしていた。
 その瞳は、海を思わせるエメラルド・グリーンでは無く、青空を思わせるようなターコイズ・ブルーをしていた。
 そして——その顔は、彼女が今まで見た男性の顔で最も整って見えた。
 アリシアは思わず心の中で呟く。

(あなたは、一体、誰ですか……?)
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