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星空の下で
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日も完全に落ち、雲一つ無い空に、輝く月と、満天の星の輝きが満ちていた。
それなりに視界は確保できてはいるが、夜道で馬車を走らせるのは危険だ。
これ以上馬に無理をさせるわけにも行かない。
馬を潰してしまったら、今回の稼ぎを持ち帰る事が出来ない。
野営するのによさげな岩陰を見つけると、馬車を止めた。
「今日は、ここで休むことにする」
「……あ、はい。分かりました」
「疲れたか?」
アリシアは少し眠そうな顔をしている。
顔には疲労の色が見えた。
「そうですね」
「まぁ、色々あったからな。そういえば、腹が減ったろう? 夕食にしよう」
そう言いながら、俺は馬車に積まれた代えのシャツを着る。
アリシアには少し申し訳ないと思う。
だが、イケメン裸というのは安くない。
「私もいいんですか……?(ようやく服を着てくれました)」
「ああ、俺が作ろう」
「でしたら私も何か手伝いましょうか……? 私も多少はお料理ができるので……」
「いや、疲れているだろう、休んでいると良い……」
「……でも、悪い気が……」
「気にするな、俺の方こそすまない……(シャツを着てしまってな)」
「……? いえ、謝られることは、何も……本当に何から何まで……」
「ここに座って、見ていてくれ」
敷物を敷いて、アリシアを座らせる。
「……本当に何も手伝わなくても?」
「ああ、俺の素晴らしい料理を見せてやろうではないか」
(凄い……、あんな風に魔術を……)
アリシアの目の前では展開、曲芸のようにさえ、見える料理が展開されていた。
目の前で、水や、風、火など、様々な系統の魔術を用いられ、瞬く間に料理が作られていく。
この世界の人間はある程度の魔術が皆使える。
だが、当然、系統によって得意不得意が明確に現れる。
複数の系統を自由自在に操れるということは、その人間が卓越した才能を持つことは示す。
アリシアは確信した。
(この人は……凄い魔術師なんですね)
それは予想できた事だった。
親指をパチンと一つ鳴らすだけで、体についた血液だけを燃やし尽くすことなど誰にでもできることではない。
この世界で他にできる人間がいるかも定かではない。
アリシアは偉大な魔術師達の話は聞いた事もある。
そう言った人間の書いた本も読んだこともある。
冒険者や軍人は、相手を倒すためにの力を魔術に求める。
研究者や、学者は深淵を求めて魔術を極める。
かつて魔術の高みを目指したアリシアにとって、彼らは、尊敬に値する人々なのだろう。
だが、アリシアの理想は少しだけ違った。
アリシアが魔術に夢中になれたのは、それが純粋に面白いと思えたからだった。
それが純粋に楽しいと思えたからだった。
アリシアが聞いた、出会った、優れた魔術師というのは本当に楽しいと思って、魔術を使っているのだろうか。
そんな事を常に思っていた。
彼女の師もそうだった。
彼は非常に優れた指導者だった。
だが、彼は決して魔術を使うことの楽しさを教えようとはしなかった。
魔術を深淵に至るための、高尚なものと捉えた厳格な考えの持ち主だった。
その考えを否定しようとは思わなかった。
だが、彼も初めは楽しいと思えたのではないか。
その気持ちをいつか失ってしまったのではないか。
高名になればなるほどに、
優れた存在になればなるほどに、忘れていく。
きっと、好きという純粋な気持ちでさえ、誰かと比べあって、競い合って、気づいたら濁っていく。
アリシアの目の前で展開されている魔術には一切の無駄がなかった。
彼が卓越した、魔力の制御能力の持ち主だと分かった。
だが、彼の魔術には同時に機能的に意味を見いだせない、無駄な動きも同時に垣間見えた。
それは、単に争い事の為に魔術を極めようとする武人や、研究のために魔術を極めようとする無機質な人間とはとは全く違った、遊び心を感じさせる。
(楽しそうですね)
その表情はとても輝いて見えた。
それは単に、優れた魔術師というだけではなく、純粋に魔術を使う事を楽しんでいるように見えた。
その姿はまるで、かつて抱いていた、理想の姿の体現とさえ思えた。
彼となら分かち合えたのではないか。
本当は他の誰とも分かち合えなかった、自らの理想や、夢を。
憧憬の眼差しを向けながらも、アリシアの心の中に、思わずこみ上げてくる感情があった。
卓越した魔術師である彼と、全ての魔術を失った自分。
比べることさえ、嫉妬することさえ、おこがましいのだろう。
(もし……、私も……、魔術が使えていたら……)
その胸にチリチリとした感情が疼いた。
その感情は、胸を酷く締め付けた。
まるで、自分の諦めた夢を叶えたそんな存在を前にした、そんな気がして。
(でも……、もう……私には……)
アリシアの心の奥底でまだ、熱を持つ願いが、彼女の目頭を少しだけ熱くさせた。
俺は、アリシアの前で、無駄に洗練された、無駄の無い無駄な動き、即ち無駄な動きを用いて料理を作る。
動作の一つ一つに、行使する魔術の全てに合理的な意味はない。
真の料理人とは、味だけではなく、作るところでも客を楽しませるのだ。
料理の素材は馬車に載せて置いた魔道具で冷蔵していた為に鮮度は良い。
それには、味だけではなく、その能力を向上させるのに、効果的な高級な魔物の肉なども含まれる。
素材の良さを生かしつつ、調理し味付けをする。
――俺の料理は完璧だ。だが、しかし、最高の隠し味とは、何か? それは、イケメンの俺が作ったという事実そのもの。
「もう、直、完成だ」
「あ……はい」
料理を完成させると、アリシアの前に料理を置いた。
月明りと夜の闇に揺らめく焚き火、穏やかな雰囲気を演出していた。
先ほど血飛沫と生首を見たアリシアとしては肉料理は少し避けて欲しかった。
しかし、焚き火と小さなランタンに照らされた、湯気を上げるジューシーなステーキと、ボウルに盛られた、色とりどりな野菜や、スープの鼻腔をくすぐる香りに彼女の胃袋は収縮し小さく、ぐぅとなった。
「……凄い美味しそうですね……」
「ふふ……、美味しそうではない、美味しいのだ。さぁ食べてみると良い……」
「あ、はい」
「さぁ……」
「では……いただきます」
二人は月明りに照らされながら。夕食を食べ始めた。
それなりに視界は確保できてはいるが、夜道で馬車を走らせるのは危険だ。
これ以上馬に無理をさせるわけにも行かない。
馬を潰してしまったら、今回の稼ぎを持ち帰る事が出来ない。
野営するのによさげな岩陰を見つけると、馬車を止めた。
「今日は、ここで休むことにする」
「……あ、はい。分かりました」
「疲れたか?」
アリシアは少し眠そうな顔をしている。
顔には疲労の色が見えた。
「そうですね」
「まぁ、色々あったからな。そういえば、腹が減ったろう? 夕食にしよう」
そう言いながら、俺は馬車に積まれた代えのシャツを着る。
アリシアには少し申し訳ないと思う。
だが、イケメン裸というのは安くない。
「私もいいんですか……?(ようやく服を着てくれました)」
「ああ、俺が作ろう」
「でしたら私も何か手伝いましょうか……? 私も多少はお料理ができるので……」
「いや、疲れているだろう、休んでいると良い……」
「……でも、悪い気が……」
「気にするな、俺の方こそすまない……(シャツを着てしまってな)」
「……? いえ、謝られることは、何も……本当に何から何まで……」
「ここに座って、見ていてくれ」
敷物を敷いて、アリシアを座らせる。
「……本当に何も手伝わなくても?」
「ああ、俺の素晴らしい料理を見せてやろうではないか」
(凄い……、あんな風に魔術を……)
アリシアの目の前では展開、曲芸のようにさえ、見える料理が展開されていた。
目の前で、水や、風、火など、様々な系統の魔術を用いられ、瞬く間に料理が作られていく。
この世界の人間はある程度の魔術が皆使える。
だが、当然、系統によって得意不得意が明確に現れる。
複数の系統を自由自在に操れるということは、その人間が卓越した才能を持つことは示す。
アリシアは確信した。
(この人は……凄い魔術師なんですね)
それは予想できた事だった。
親指をパチンと一つ鳴らすだけで、体についた血液だけを燃やし尽くすことなど誰にでもできることではない。
この世界で他にできる人間がいるかも定かではない。
アリシアは偉大な魔術師達の話は聞いた事もある。
そう言った人間の書いた本も読んだこともある。
冒険者や軍人は、相手を倒すためにの力を魔術に求める。
研究者や、学者は深淵を求めて魔術を極める。
かつて魔術の高みを目指したアリシアにとって、彼らは、尊敬に値する人々なのだろう。
だが、アリシアの理想は少しだけ違った。
アリシアが魔術に夢中になれたのは、それが純粋に面白いと思えたからだった。
それが純粋に楽しいと思えたからだった。
アリシアが聞いた、出会った、優れた魔術師というのは本当に楽しいと思って、魔術を使っているのだろうか。
そんな事を常に思っていた。
彼女の師もそうだった。
彼は非常に優れた指導者だった。
だが、彼は決して魔術を使うことの楽しさを教えようとはしなかった。
魔術を深淵に至るための、高尚なものと捉えた厳格な考えの持ち主だった。
その考えを否定しようとは思わなかった。
だが、彼も初めは楽しいと思えたのではないか。
その気持ちをいつか失ってしまったのではないか。
高名になればなるほどに、
優れた存在になればなるほどに、忘れていく。
きっと、好きという純粋な気持ちでさえ、誰かと比べあって、競い合って、気づいたら濁っていく。
アリシアの目の前で展開されている魔術には一切の無駄がなかった。
彼が卓越した、魔力の制御能力の持ち主だと分かった。
だが、彼の魔術には同時に機能的に意味を見いだせない、無駄な動きも同時に垣間見えた。
それは、単に争い事の為に魔術を極めようとする武人や、研究のために魔術を極めようとする無機質な人間とはとは全く違った、遊び心を感じさせる。
(楽しそうですね)
その表情はとても輝いて見えた。
それは単に、優れた魔術師というだけではなく、純粋に魔術を使う事を楽しんでいるように見えた。
その姿はまるで、かつて抱いていた、理想の姿の体現とさえ思えた。
彼となら分かち合えたのではないか。
本当は他の誰とも分かち合えなかった、自らの理想や、夢を。
憧憬の眼差しを向けながらも、アリシアの心の中に、思わずこみ上げてくる感情があった。
卓越した魔術師である彼と、全ての魔術を失った自分。
比べることさえ、嫉妬することさえ、おこがましいのだろう。
(もし……、私も……、魔術が使えていたら……)
その胸にチリチリとした感情が疼いた。
その感情は、胸を酷く締め付けた。
まるで、自分の諦めた夢を叶えたそんな存在を前にした、そんな気がして。
(でも……、もう……私には……)
アリシアの心の奥底でまだ、熱を持つ願いが、彼女の目頭を少しだけ熱くさせた。
俺は、アリシアの前で、無駄に洗練された、無駄の無い無駄な動き、即ち無駄な動きを用いて料理を作る。
動作の一つ一つに、行使する魔術の全てに合理的な意味はない。
真の料理人とは、味だけではなく、作るところでも客を楽しませるのだ。
料理の素材は馬車に載せて置いた魔道具で冷蔵していた為に鮮度は良い。
それには、味だけではなく、その能力を向上させるのに、効果的な高級な魔物の肉なども含まれる。
素材の良さを生かしつつ、調理し味付けをする。
――俺の料理は完璧だ。だが、しかし、最高の隠し味とは、何か? それは、イケメンの俺が作ったという事実そのもの。
「もう、直、完成だ」
「あ……はい」
料理を完成させると、アリシアの前に料理を置いた。
月明りと夜の闇に揺らめく焚き火、穏やかな雰囲気を演出していた。
先ほど血飛沫と生首を見たアリシアとしては肉料理は少し避けて欲しかった。
しかし、焚き火と小さなランタンに照らされた、湯気を上げるジューシーなステーキと、ボウルに盛られた、色とりどりな野菜や、スープの鼻腔をくすぐる香りに彼女の胃袋は収縮し小さく、ぐぅとなった。
「……凄い美味しそうですね……」
「ふふ……、美味しそうではない、美味しいのだ。さぁ食べてみると良い……」
「あ、はい」
「さぁ……」
「では……いただきます」
二人は月明りに照らされながら。夕食を食べ始めた。
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