ギフテッド――嘘つきな先生と両思いになるまで

ぬい

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【11】初めての彼氏

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 とりあえず、真中くんは実は良い人だったと発見した。
 なので私は気分が少し良くなり、数日後に推薦入試を受けた。
 無事に合格した。つまり私の遠方での一人暮らしも決まった。

 推薦組は、合格した後は、気楽である。
 ちなみに真中くんと舞莉ちゃんは、別の高校に推薦で決まった。
 大ちゃんは、地元の高校に通うそうで、そちらも推薦で決まった。

 私の身近で一般受験するのは、広大くんと秋葉ちゃんだった。
 秋葉ちゃんは広大くんと同じところである。
 そして、広大くんが、私と同じ高校だ。

 私の高校では、推薦が決まった生徒に、宿題が出た。勿論、一般の合格者にも春休みには入学前の宿題が出るのだが、さらに早く出たのである。その一つに、読書感想文があった。この際、何冊かが指定されていたのである。何が指定されていたかは忘れた。ただ、それは実家に無い本だったのは覚えている。

 そこで図書室に行くことにした。舞莉ちゃんにそれを伝え歩いていると、少ししてから、ちょっと後ろを真中くんが歩いていることに気がついた。この方向だと、生徒会室と図書室しかないようなものなので、目があったから、私は雑談を吹っかけた。嫌われてはいるのかもしれないが、良い人なのだから、会話してくれると判断したのだ。

「真中くんも図書室?」
「――まぁ」
「何借りるの?」
「おすすめある?」
「何系が好き?」
「普段読まないから、特に無い」
「ええと……じゃあ川端康成とかどうかな?」
「お前そんなの読んでんの?」
「んー、あんまり好きじゃないけど、読んだよ。そんなのっていう程じゃないよ」
「……」
「けど、なんかね、何度読んでも芥川が今一番好き!」
「……俺が言いたいのは、お前、純文学みたいに難しい本を読んでるのかって事」
「あ、ホラーとかミステリーも読むよ? あと、ファンタジー!」
「……へぇ」

 このような会話をしながら、私達は図書室に到着した。
 一体、何をおすすめしたらいいのだろうか。
 宿題のことを忘れて、そればかり考えていた。

 ひと気は全然なかった。なんで周囲に人がいなかったのかは忘れた。だが、二人っきりだったような記憶がある。間違いかも知れない。自信はない。

「雛辻、あのさ」
「なに?」
「俺、お前が好きだ」
「!」

 私は驚愕した。てっきり嫌われていると思っていたからだ。なんと真中くんは、ただの良い人ではなく、とても良い人だったのだ。私を好きになってくれるなんて、舞莉ちゃんと秋葉ちゃんと同じくらい良い人だったということだ。

「ありがとう! 本当にありがとう!」

 泣きそうなくらい嬉しかった。私が喜んでいると、なぜがほっとしたような顔で、真中君が言った。

「良かった。正直、嫌われてると思ってた」
「それは私のほうだよ!」
「俺、絶対振られると思ってた」

 その言葉を聞いて、やっと私は、自分の理解が間違っていたことに気がついた。
 ――振られる?
 つまり、つまりである。彼の言う「好き」とは、「恋愛対象としての好き」なのだ!

「教室戻ろう。雛辻、早く借りろ」
「あ、うん」

 私は混乱しながら、本を探した。最初は、何冊か見てから決めるはずだったのだが、一番最初に目に付いたリスト内の本を手にとった。同時に、色々考えていた。恋に恋するお年頃である。この時私は、自分が真中くんをどう思っているかなど、一切考えなかった。

 恋人ができた! 彼氏だ! 初めての彼氏だ!

 脳内で、そう喜んでいた。具体的なことは何も想像せず、ごくごく単純に、彼氏が出来たという事実に喜んでいた。告白なんてされたのは、小学生以来だ! その日の帰り、私達は携帯の連絡先を交換した。

 当時はまだ、あまり普及していなかったのだが、私も彼も遠方に進学が決まっていたので、親が持たせていたのだ。ちなみに真中くんと舞莉ちゃんは、学校の先生になりたい人が多く通う高校へと行くことになっていた。

 その日の夜、真中くんからメールがきた。これが、これが、彼氏か!

 喜んで私は返信したが、三通目くらいから、あきてきた。
 なので推薦の宿題の読書感想文を書き終わってから、再度メールした。
 またすぐ返ってきたのだが、次は他の宿題をやってから、返信した。

 そして寝た。起きて携帯電話を見たら、「おやすみ」と「おはよう」があった。
 私はこの時、恋人とは、携帯で挨拶をしなければならないのかと考えた。
 すっごくすっごく、面倒くさいではないか!

 翌日、学校へと行った。この日私は、舞莉ちゃんや秋葉ちゃん、その他の親しい女友達に、彼氏ができたと伝えようと思っていた。しかし、伝える前に、みんな知っていた。先に学校に来ていた真中くんが喋っていたのだ。

 それから周囲には囃したてられた。みんな楽しそうに私達をネタにする。

 どこが好きなのかだとか、いつから好きなのかだとか、もう質問攻めだ。

 この時聞いた話によると、真中くんは修学旅行で同じ班になり、私を好きになったと言っていた。修学旅行の記憶が曖昧なので、一体どこで好きになったのかはわからない。そして真中くんは、いつも大ちゃんに相談していたそうだ。大ちゃんはお幼馴染なだけあり、私についてとても詳しいのである。私が小説を書いていることも、この時既に大ちゃんは熟知していた。私の方も、大ちゃんがオタクであり、同人誌ばっかり読んでいるのを知っていた。

 なんでも大ちゃんは、私が一人になるタイミングは図書室に行く場合しかないから、告白するならその時にすべきであると、真中くんに伝えていたそうだ。そしてあの日、私が図書室に行くと、舞莉ちゃんと話しているのが聞こえたため、ついてきたそうである。最初から、告白する気だったそうだ。

 はっきりいって、最初から私は、この状態に嫌気が差していた。
 私は、目立ったり、知らないところで自分の話をされるのが、とても嫌いなのだ。
 本来は。だけど、なんだか、そうなっちゃう場面が、それまでの人生で沢山あった。

 だから仲の良い人にだけ話したかったのに、クラス中が知っている。
 しかも、面白がっている感じ!
 早退したくなった。

 まぁそのようにして付き合い始め、メールのやりとりが始まった。
 三日目くらいから、電話して良いかと聞かれるようになった。
 最初は頷いたのだが――一日目から、私は苦しんだ。

 だって、三時間も電話しているのだ。私は、五分くらいを想定していたのだ。
 それでも一週間の間、私は平均三時間ほど彼と電話をした。
 電話以外に、「おやすみ」と「おはよう」のメールもした。

 恋人とは、大変である。私が読んでいた本には、携帯電話が登場するものなど無かったため、これが普通なのだと思っていた。実際、普通なのかもしれない。だが、私には無理なのだ。電話もメールも、この頃から、嫌いだったのだろう!

 一週間半くらいで、もうこれ以上は無理だと判断し、「高校から出ている宿題が忙しくてごめん」と言って、電話もメールもしないことに決めた。この理由に、真中くんは納得してくれた。宿題がたくさん出ているのを、彼は知っていたのだ。もちろん私は、入学直前にほとんど全部やる予定だったが、それは黙っておいた。

 そして二週間ちょっとしたある日、お休みの日にお出かけしようという話になった。
 私は携帯は嫌いだが、対面で話すのは嫌いではない。
 それに、初デートだ!

 喜んで出かけた。行き先は、縄文時代の土器が飾ってある博物館みたいな所だった。なんでここだったのかは、よく覚えていない。二人で、縄文時代と弥生時代について語り合ったことは、よく覚えている。デートっていうより、歴史の復習だった気がしてならない。

 ただ一つ、デートっぽいことをした。手を繋いだのだ!

 そして――ものすごい違和感を覚えた。断言して生理的嫌悪などではない。
 だが、こう、直感とでも言えば良いのだろうか。
 真中くんと手を繋いでいるのは無理だと思ったのだ。

 慣れていないからだろうか?
 最初はそう考えたのだが、その後、放課後に何度か手を繋ぎ、おかしいと気付いた。
 なんだか、嫌だったのである。

 こうして三週間くらい経過し、卒業式を終えた翌日かその後くらいに、私は言った。

「別れよう!」

 普段は押しに弱い私であるが、こういうことは案外きっぱり言えるようだった。
 真中くんは、特に理由を聞くでもなく、「わかった」と言った。
 こうして私達は、別れた。

 ちなみに現在、真中くんは舞莉ちゃんと結婚して、二人共学校の先生をしている。
 なぜなのか、私の周囲には、教員が多い。

 後で聞いた話だが、なんでも真中くんは、付き合って数日で、私の側は別に真中くんを好きではないようだと確信し、付き合っていくうちに好きになってくれることを期待していて、遠恋になるわけだからと携帯で連絡していたのだが、それを拒否された頃から別れを覚悟していたと言っていた。




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