51 / 80
【51】仕事
しおりを挟む
そして私は、この会社はブラックだと確信した。
こんな感じで日々を過ごし、出来たって聞いたので、テストすることになった。
さてこのテスト――非常に頭にきた。
この頃には素が出ていた私には許せなかった。間違いだらけなのだ! 変なところしか無いって言っても良いと思った! 仕事って勉強とは違う。はっきりと確信した。
私は面の皮が分厚いのだが、笑みを浮かべるのは流石に無理で、めっちゃ冷淡な顔だったのかなぁ、周囲もちょっとビビリ気味な中、バンバンバンバン間違いを指摘していった。新人はみんなテスト係だったので、システムとマーケティングの新人は全員いた。後で言われた。
「なんで変な名前入れて遊んでるのに、テストできるの!?」
そんなことを言われても困る。そのテスト中、本来はテストする側で、テストの仕方を教えてくれるシステムの人が、私の後ろに三人ずっと立っていた。他の人は、みんなテストに回っていたけど、私の後ろの三人は、なんだか笑顔で、ずーっとメモっていた。
普通はテストした人間が、メモるのだが、私はメモらなくていいからテストしまくれと命じられたのである。なので、しまくった。気づくと私たち四人だけになっていて、誰もいなかった。
もう夜の十一時だった。帰らないとって思ったら、「まだいける!」と言われた。確かに体力的にはいけたし、変なところだらけだ! 頷いて私はずーっとやりつづけた! 結果、後ろに立っている人は、途中で何回かチェンジしていたのだが、ぶっ続けで私は翌日の夕方までテストし続けた。
そして一度帰宅し、寝た。起きたら、もう会社が始まっている時間だった! 人生初めての遅刻だと焦った! 言い訳をすべきか!? 電車、乗り間違えたとか!? それとも風邪!? 昨日まで元気だったのに!? そう考えながら、煙草を吸いつつお化粧しつつ電話をかけるという、いつもの朝の作業をした。いや、いつもは電話はしないのだが。正仲さんの携帯(会社支給品)にかけた。
「もしもし、あの、申し訳ありません。今起きました!」
結局そのまんま言ってしまった。
『おう、気にするな』
「あ、ありがとうございます! 多分十一時には着きます!」
『――おう』
それだけだった。怒られないことにホッとしながら会社に行くと、正仲さんがしばらく私を見ていた。
「てっきり休みかと思った」
「え?」
「徹夜でシステムのやつらのテストの手伝いしてたんだろ? 帰りに休暇届出す余裕無かったんだと思ってた。いやぁ、働き者だな。俺なら三日は休むな。むしろ、テスト、手伝わない」
「え」
「偉い偉い、よく頑張ったな。さて、資料作ってくれ」
「なんのですか!?」
「お前の専門ってテストだったっけ?」
「心理学です!」
「大学じゃねぇよ!」
こうしてまた商品についての考察が始まった。
システムで出したデータを統計するためのSQLは、組めるのが結城さんと正仲さんと私しかいないってことになったのである。
きっとみんな統計知らないんだなぁと思っていたら違った。みんな、長いSQLが苦手だったのだ。特に()が入っているのがダメだったような覚えがある。その後完成したSQLを、システムにくっつけた。その日、会社にお客様がやってきた。
「結城ー、久しぶり!」
第一声がそれだった。結城さんと正仲さんと私と青田くんと凪さんが、その場にはいた。青田くんと凪さんは、私たち三人が作ったものの動作チェックをしていたのだ。
「政宗、遅い」
「俺にしてはクソ早ぇだろうが」
すっごく口の悪い人だという印象だった。
そして以前聞いた名前だなと思っていたら、正仲さんと凪さんが、すっごく腰を折った。
それを見て、私と青田くんも慌ててお辞儀した。
「あ、良いって良いって。今じゃ、てめぇらのほうが偉いんだからな! 俺ただの無職だし!」
「だから戻れって言ってるだろ」
「絶対嫌だ、こんなブラック」
私は、初めて私と同じ意見の人に出会い、感動した!
感動していると、その人が画面を眺め始めた。SQLの方だ。
「結城は相変わらず」
「この歳で変わったら奇跡だろ」
「上昇志向が足りねぇなぁ。正仲は上達してるのに」
「ありがとうございます」
「けど新人に負けてる時点で、二人共終わってんな」
そう言ってから、その人が私を見た。
「勉強して簡単にしたのか? 面倒くさかったのか?」
「面倒で――あ、いえ! 非常に勉強いたしました!」
実は、結城さんと正仲さんは、SQLをとっても丁寧に書くのだ。私は面倒だったので、途中で簡単にして、一部短くしたのだ。他の人々は短いのしか得意じゃないが、やっぱり全員簡単に書いていたので、私は簡単に書くというのはSQLが得意じゃないということだと思っていた。なのだが、違ったようだった。
「名前なんだっけ?」
「雛辻と申します。名刺を持って参ります」
「別にいらねぇよ。今日暇?」
「暇です、残業が無ければ!」
「なになに、もう残業させられてんの!? うっわぁ可哀想」
「ですよね!」
思わず言ってしまった。するとその場にいた全員が吹き出した。なぜだ!
「お前酒好き?」
「大好きです!」
「うわぁ、見えねぇ。あと煙草吸うだろ」
「やっぱり匂いでわかります?」
「いや、不思議とそっちはない。俺も吸うからマヒってんのかもだけど。ほらさ、この会社いると、吸いたくならねぇ? 本数増えねぇ?」
「ものすごく分かります! 増えます! 学生時代の倍くらいになっちゃいました!」
「何吸ってんの?」
「赤マルです!」
「へぇ。何本?」
「二箱です!」
「気が合うな! 俺も赤マルで二箱! よし! 飲みに行くぞ!」
「は、はい! ……はい!?」
「結城半休出しといて」
「ま、待って下さい!」
「なに? 俺と飲みに行くの嫌!? 彼氏から男と飲むなとか言われてんの!?」
「別れてからいないですバカー! そうじゃなくて、まだお昼の十一時半です!」
「定時待てって事か? 失恋直後でショックで飲めないとか!?」
「いや、こんな時間に飲み屋さん開いてるのかと思って! 普通五時からです!」
「なんという純粋な疑問! おめぇ図太いなおい! 安心しろ! 俺の行きつけは二十四時間やってっから!」
このようにして、誰にも引き止められず、私は昼間からお酒を飲みに向かった。
政宗さんと二人でだ。
今思えば、政宗さんがすごい人だと、この時点で気づくべきだった。
こんな感じで日々を過ごし、出来たって聞いたので、テストすることになった。
さてこのテスト――非常に頭にきた。
この頃には素が出ていた私には許せなかった。間違いだらけなのだ! 変なところしか無いって言っても良いと思った! 仕事って勉強とは違う。はっきりと確信した。
私は面の皮が分厚いのだが、笑みを浮かべるのは流石に無理で、めっちゃ冷淡な顔だったのかなぁ、周囲もちょっとビビリ気味な中、バンバンバンバン間違いを指摘していった。新人はみんなテスト係だったので、システムとマーケティングの新人は全員いた。後で言われた。
「なんで変な名前入れて遊んでるのに、テストできるの!?」
そんなことを言われても困る。そのテスト中、本来はテストする側で、テストの仕方を教えてくれるシステムの人が、私の後ろに三人ずっと立っていた。他の人は、みんなテストに回っていたけど、私の後ろの三人は、なんだか笑顔で、ずーっとメモっていた。
普通はテストした人間が、メモるのだが、私はメモらなくていいからテストしまくれと命じられたのである。なので、しまくった。気づくと私たち四人だけになっていて、誰もいなかった。
もう夜の十一時だった。帰らないとって思ったら、「まだいける!」と言われた。確かに体力的にはいけたし、変なところだらけだ! 頷いて私はずーっとやりつづけた! 結果、後ろに立っている人は、途中で何回かチェンジしていたのだが、ぶっ続けで私は翌日の夕方までテストし続けた。
そして一度帰宅し、寝た。起きたら、もう会社が始まっている時間だった! 人生初めての遅刻だと焦った! 言い訳をすべきか!? 電車、乗り間違えたとか!? それとも風邪!? 昨日まで元気だったのに!? そう考えながら、煙草を吸いつつお化粧しつつ電話をかけるという、いつもの朝の作業をした。いや、いつもは電話はしないのだが。正仲さんの携帯(会社支給品)にかけた。
「もしもし、あの、申し訳ありません。今起きました!」
結局そのまんま言ってしまった。
『おう、気にするな』
「あ、ありがとうございます! 多分十一時には着きます!」
『――おう』
それだけだった。怒られないことにホッとしながら会社に行くと、正仲さんがしばらく私を見ていた。
「てっきり休みかと思った」
「え?」
「徹夜でシステムのやつらのテストの手伝いしてたんだろ? 帰りに休暇届出す余裕無かったんだと思ってた。いやぁ、働き者だな。俺なら三日は休むな。むしろ、テスト、手伝わない」
「え」
「偉い偉い、よく頑張ったな。さて、資料作ってくれ」
「なんのですか!?」
「お前の専門ってテストだったっけ?」
「心理学です!」
「大学じゃねぇよ!」
こうしてまた商品についての考察が始まった。
システムで出したデータを統計するためのSQLは、組めるのが結城さんと正仲さんと私しかいないってことになったのである。
きっとみんな統計知らないんだなぁと思っていたら違った。みんな、長いSQLが苦手だったのだ。特に()が入っているのがダメだったような覚えがある。その後完成したSQLを、システムにくっつけた。その日、会社にお客様がやってきた。
「結城ー、久しぶり!」
第一声がそれだった。結城さんと正仲さんと私と青田くんと凪さんが、その場にはいた。青田くんと凪さんは、私たち三人が作ったものの動作チェックをしていたのだ。
「政宗、遅い」
「俺にしてはクソ早ぇだろうが」
すっごく口の悪い人だという印象だった。
そして以前聞いた名前だなと思っていたら、正仲さんと凪さんが、すっごく腰を折った。
それを見て、私と青田くんも慌ててお辞儀した。
「あ、良いって良いって。今じゃ、てめぇらのほうが偉いんだからな! 俺ただの無職だし!」
「だから戻れって言ってるだろ」
「絶対嫌だ、こんなブラック」
私は、初めて私と同じ意見の人に出会い、感動した!
感動していると、その人が画面を眺め始めた。SQLの方だ。
「結城は相変わらず」
「この歳で変わったら奇跡だろ」
「上昇志向が足りねぇなぁ。正仲は上達してるのに」
「ありがとうございます」
「けど新人に負けてる時点で、二人共終わってんな」
そう言ってから、その人が私を見た。
「勉強して簡単にしたのか? 面倒くさかったのか?」
「面倒で――あ、いえ! 非常に勉強いたしました!」
実は、結城さんと正仲さんは、SQLをとっても丁寧に書くのだ。私は面倒だったので、途中で簡単にして、一部短くしたのだ。他の人々は短いのしか得意じゃないが、やっぱり全員簡単に書いていたので、私は簡単に書くというのはSQLが得意じゃないということだと思っていた。なのだが、違ったようだった。
「名前なんだっけ?」
「雛辻と申します。名刺を持って参ります」
「別にいらねぇよ。今日暇?」
「暇です、残業が無ければ!」
「なになに、もう残業させられてんの!? うっわぁ可哀想」
「ですよね!」
思わず言ってしまった。するとその場にいた全員が吹き出した。なぜだ!
「お前酒好き?」
「大好きです!」
「うわぁ、見えねぇ。あと煙草吸うだろ」
「やっぱり匂いでわかります?」
「いや、不思議とそっちはない。俺も吸うからマヒってんのかもだけど。ほらさ、この会社いると、吸いたくならねぇ? 本数増えねぇ?」
「ものすごく分かります! 増えます! 学生時代の倍くらいになっちゃいました!」
「何吸ってんの?」
「赤マルです!」
「へぇ。何本?」
「二箱です!」
「気が合うな! 俺も赤マルで二箱! よし! 飲みに行くぞ!」
「は、はい! ……はい!?」
「結城半休出しといて」
「ま、待って下さい!」
「なに? 俺と飲みに行くの嫌!? 彼氏から男と飲むなとか言われてんの!?」
「別れてからいないですバカー! そうじゃなくて、まだお昼の十一時半です!」
「定時待てって事か? 失恋直後でショックで飲めないとか!?」
「いや、こんな時間に飲み屋さん開いてるのかと思って! 普通五時からです!」
「なんという純粋な疑問! おめぇ図太いなおい! 安心しろ! 俺の行きつけは二十四時間やってっから!」
このようにして、誰にも引き止められず、私は昼間からお酒を飲みに向かった。
政宗さんと二人でだ。
今思えば、政宗さんがすごい人だと、この時点で気づくべきだった。
0
あなたにおすすめの小説
二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)
MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。
かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。
44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。
小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。
一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。
ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
白衣の下 I 悪魔的破天荒な天才外科医と惨めな過去を引きずる女子大生の愛情物語。先生っひどすぎるぅ〜涙
高野マキ
キャラ文芸
弟の主治医と女子大生の甘くて切ない波乱の愛情物語。主治医は天才的外科医(性格に難あり)女子大生のミチルは破天荒で傍若無人な外科医の手綱を操ることができる?
東京、神戸 オーストラリア、アメリカ西海岸に及ぶ二人の世界。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる