ギフテッド――嘘つきな先生と両思いになるまで

ぬい

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【51】仕事

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 そして私は、この会社はブラックだと確信した。

 こんな感じで日々を過ごし、出来たって聞いたので、テストすることになった。

 さてこのテスト――非常に頭にきた。

 この頃には素が出ていた私には許せなかった。間違いだらけなのだ! 変なところしか無いって言っても良いと思った! 仕事って勉強とは違う。はっきりと確信した。

 私は面の皮が分厚いのだが、笑みを浮かべるのは流石に無理で、めっちゃ冷淡な顔だったのかなぁ、周囲もちょっとビビリ気味な中、バンバンバンバン間違いを指摘していった。新人はみんなテスト係だったので、システムとマーケティングの新人は全員いた。後で言われた。

「なんで変な名前入れて遊んでるのに、テストできるの!?」

 そんなことを言われても困る。そのテスト中、本来はテストする側で、テストの仕方を教えてくれるシステムの人が、私の後ろに三人ずっと立っていた。他の人は、みんなテストに回っていたけど、私の後ろの三人は、なんだか笑顔で、ずーっとメモっていた。

 普通はテストした人間が、メモるのだが、私はメモらなくていいからテストしまくれと命じられたのである。なので、しまくった。気づくと私たち四人だけになっていて、誰もいなかった。

 もう夜の十一時だった。帰らないとって思ったら、「まだいける!」と言われた。確かに体力的にはいけたし、変なところだらけだ! 頷いて私はずーっとやりつづけた! 結果、後ろに立っている人は、途中で何回かチェンジしていたのだが、ぶっ続けで私は翌日の夕方までテストし続けた。

 そして一度帰宅し、寝た。起きたら、もう会社が始まっている時間だった! 人生初めての遅刻だと焦った! 言い訳をすべきか!? 電車、乗り間違えたとか!? それとも風邪!? 昨日まで元気だったのに!? そう考えながら、煙草を吸いつつお化粧しつつ電話をかけるという、いつもの朝の作業をした。いや、いつもは電話はしないのだが。正仲さんの携帯(会社支給品)にかけた。

「もしもし、あの、申し訳ありません。今起きました!」

 結局そのまんま言ってしまった。

『おう、気にするな』
「あ、ありがとうございます! 多分十一時には着きます!」
『――おう』

 それだけだった。怒られないことにホッとしながら会社に行くと、正仲さんがしばらく私を見ていた。

「てっきり休みかと思った」
「え?」
「徹夜でシステムのやつらのテストの手伝いしてたんだろ? 帰りに休暇届出す余裕無かったんだと思ってた。いやぁ、働き者だな。俺なら三日は休むな。むしろ、テスト、手伝わない」
「え」
「偉い偉い、よく頑張ったな。さて、資料作ってくれ」
「なんのですか!?」
「お前の専門ってテストだったっけ?」
「心理学です!」
「大学じゃねぇよ!」

 こうしてまた商品についての考察が始まった。
 システムで出したデータを統計するためのSQLは、組めるのが結城さんと正仲さんと私しかいないってことになったのである。

 きっとみんな統計知らないんだなぁと思っていたら違った。みんな、長いSQLが苦手だったのだ。特に()が入っているのがダメだったような覚えがある。その後完成したSQLを、システムにくっつけた。その日、会社にお客様がやってきた。

「結城ー、久しぶり!」

 第一声がそれだった。結城さんと正仲さんと私と青田くんと凪さんが、その場にはいた。青田くんと凪さんは、私たち三人が作ったものの動作チェックをしていたのだ。

「政宗、遅い」
「俺にしてはクソ早ぇだろうが」

 すっごく口の悪い人だという印象だった。
 そして以前聞いた名前だなと思っていたら、正仲さんと凪さんが、すっごく腰を折った。
 それを見て、私と青田くんも慌ててお辞儀した。

「あ、良いって良いって。今じゃ、てめぇらのほうが偉いんだからな! 俺ただの無職だし!」
「だから戻れって言ってるだろ」
「絶対嫌だ、こんなブラック」

 私は、初めて私と同じ意見の人に出会い、感動した!
 感動していると、その人が画面を眺め始めた。SQLの方だ。

「結城は相変わらず」
「この歳で変わったら奇跡だろ」
「上昇志向が足りねぇなぁ。正仲は上達してるのに」
「ありがとうございます」
「けど新人に負けてる時点で、二人共終わってんな」

 そう言ってから、その人が私を見た。

「勉強して簡単にしたのか? 面倒くさかったのか?」
「面倒で――あ、いえ! 非常に勉強いたしました!」

 実は、結城さんと正仲さんは、SQLをとっても丁寧に書くのだ。私は面倒だったので、途中で簡単にして、一部短くしたのだ。他の人々は短いのしか得意じゃないが、やっぱり全員簡単に書いていたので、私は簡単に書くというのはSQLが得意じゃないということだと思っていた。なのだが、違ったようだった。

「名前なんだっけ?」
「雛辻と申します。名刺を持って参ります」
「別にいらねぇよ。今日暇?」
「暇です、残業が無ければ!」
「なになに、もう残業させられてんの!? うっわぁ可哀想」
「ですよね!」

 思わず言ってしまった。するとその場にいた全員が吹き出した。なぜだ!

「お前酒好き?」
「大好きです!」
「うわぁ、見えねぇ。あと煙草吸うだろ」
「やっぱり匂いでわかります?」
「いや、不思議とそっちはない。俺も吸うからマヒってんのかもだけど。ほらさ、この会社いると、吸いたくならねぇ? 本数増えねぇ?」
「ものすごく分かります! 増えます! 学生時代の倍くらいになっちゃいました!」
「何吸ってんの?」
「赤マルです!」
「へぇ。何本?」
「二箱です!」
「気が合うな! 俺も赤マルで二箱! よし! 飲みに行くぞ!」
「は、はい! ……はい!?」
「結城半休出しといて」
「ま、待って下さい!」
「なに? 俺と飲みに行くの嫌!? 彼氏から男と飲むなとか言われてんの!?」
「別れてからいないですバカー! そうじゃなくて、まだお昼の十一時半です!」
「定時待てって事か? 失恋直後でショックで飲めないとか!?」
「いや、こんな時間に飲み屋さん開いてるのかと思って! 普通五時からです!」
「なんという純粋な疑問! おめぇ図太いなおい! 安心しろ! 俺の行きつけは二十四時間やってっから!」

 このようにして、誰にも引き止められず、私は昼間からお酒を飲みに向かった。
 政宗さんと二人でだ。
 今思えば、政宗さんがすごい人だと、この時点で気づくべきだった。


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