声だけカワイイ俺と標の塔の主様

鷹椋

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第3章 声だけカワイイ俺と引きこもりの侯爵子息

3-3

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 呼び止めるアルベルトの声に、思わずびくっと肩が跳ねる。

「なんでしょう?」

 俺は足を止め、あくまで平静を装い返事する。
 バレたか? やっぱりバレてしまったのか??

「君、文字は読める?」

 もじ……文字……?

「読めますけど……」
「共用語以外は? ワモネア語とか、オルバルヌ語とか、」

 言いながらアルベルトが指さしたのは、ソファの前に置かれたテーブルの上。そこに積み重なっている本の山。

「ワモネア語なら。オルバルヌ語? は、読め――」

 ません、と。そう言いかけて、俺ははたと動きを止める。
 テーブルの上の本を、まじまじと見つめる。

「……読めます、ね」

 なんだこれ。知らないはずなのに単語の意味が分かるんだが。
 1冊、手に取って開いてみる。すると、いくつかの文章に目を通すうちに、文法らしきものも理解できるようになって。ものの十数秒で、俺は完全にオルバルヌ語を「読める」と言える状態に。

「えっ、すごいねリズ! そんな珍しい言語分かるんだー!」

 ミリーが感心したように声をあげる。

「……まあね」

 反応に困ったので、とりあえずそう言っておく。
 ふと、刺激されたのは前世の記憶。……え?『よくある転生特典』?
 ああ、でもたしかに。振り返ると俺、ワモネア語を学んだ時もたいして苦労しなかった気が。一度で覚える俺を、当時の家庭教師は「記憶力のいい子」くらいにしか思ってなかったみたいで、俺自身もそこまで気にしてなかったんだよな。そもそも父が「出来て当然」みたいなスタンスだったし。
 そうか、これって、前世持ちなことに由来するスキル的なやつだったのか……

「決めた。リズは朗読係にする」
「朗読係?」
「そう。僕の目のことはミリーから聞いてるだろう? 本を読むときも、かなり顔に近づけないと駄目で、それはそれで疲れるんだよね。だからリズに代わりに読んでほしくて」
「は、はあ……」

 薄紅色の瞳からは、先ほどまではなかった俺への関心が見てとれる。
 ついでに俺の性別について、気づいてくれてもいいんだぞ?

 そんな期待も虚しく。
 結局、最後の最後まで、俺が男だとバレることはなかった。アルベルトの使用人(♀)として、俺の雇用が決定してしまう。

「あー、よかった! アルベルト様、リズのこと気に入ってくれたよー!」

 まるで肩の荷が下りたと言わんばかりに「よかった、よかった」と繰り返すミリー。
 ? そんなにマジックバッグを持つのが嫌だったのか?

「リズ、これから一緒に2人で頑張っていこうね! 私たち2人で!!」
「お、おう」

 ミリーの高いテンションに気圧されつつ、俺は頷いて返す。

 彼女がどうしてこんなにも喜んでいたのか――本当の理由を知るのは、もう少し後になってからのこと。
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