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第3章 声だけカワイイ俺と引きこもりの侯爵子息
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「そういえば、ダンジョンでリンゴとかフルーツもたくさん手に入ったんだけど。いる?」
「……わあ、いいの? ありがとー!」
ん……? 今、妙な間が開いた気が。
不思議に思い、ミリーを見る。
「フルーツあるならお菓子でも作ろうかなー?」
にこにこ笑っている姿は……普段と変わらない?
ただの気のせいだろうか。
首を傾げ、俺は使い終わった道具を片づける。
〈標の塔〉の効果なのか、小さな物は出しっぱなしにしておくとゴミと見なされて、時間経過で消えてしまうらしい。面倒でも、できるだけマジックバッグにしまうことを推奨された。
それにしても、本当になんでも揃っている。
料理するにあたって、ミリーが管理している食材や調理器具保管用のマジックバッグを借りたのだが。物を出し入れする際、中に何が入っているかも大体分かるので、その多さに驚かされる。
俺には使い道すら分からないのもあるぞ……
「ミリーって、いつか塔での仕事が終わったら、やっぱり料理人になるのか?」
「えっ? あー、私はね、料理は大好きなんだけどっ」
ミリーはちょっと困ったような顔で言い淀み、俺を見る。
「まあ、リズも秘密? 明かしてくれてるから、私も教えちゃっていいかな……えっとね、私、実はちょっとだけ獣人の血が入ってて。お母さんが獣人のハーフなの。だからつまり、そういうこと」
ああ、と俺は彼女の言いたいことを理解する。そして、ミリーが少々複雑な立場にいることも。
この大陸では、かつて、獣人たちが迫害を受けていた時期があった。
今はもう時代が変わって、あからさまな排除対象にはなっていないが、当時の名残はまだ一部で色濃く残っていて。
たとえば、特定の職業につけなかったりするのだ。
料理人は、そのうちのひとつ。「美味しい」とそれまで大絶賛していた料理でも、作ったのが獣人と分かった途端、手のひらを返したように怒り出す人間が、悲しいことに、まだこの世の中には存在していた。
「私ね、実はこのこと侯爵様に言ってなくて。でも、魔眼持ちのアルベルト様にはすぐバレちゃったの。あの時は、血の気が引いたなあ……相手はよりにもよって高位貴族だもん。その場で殺されてもおかしくなかったんだ。でも、アルベルト様はそんな私をクビにしないでくれて。今でも黙認して雇い続けてくれてる。私が作った料理を『美味しい』って食べてくれるの。
貴族なんて意地悪で、卑怯で、まったく良いイメージなかったのに、あの方は本当に良い人なんだ。っ、だから私、アルベルト様には、」
言いかけたミリーが、ふいに顔をあげる。
どうしたのだろうと視線を追えば、ちょうど緑色の小鳥――文鳥がやってきたところで。
一枚の紙になったそれをミリーは手に取り、広げる。
「あっ、リズ。アルベルト様からのお呼び出しだよっ、本読んでほしいって!」
さあ行きなさい、と満面の笑みで扉を指してくる。
……はいはい。
それじゃ、ひと仕事しに行きますか。
「……わあ、いいの? ありがとー!」
ん……? 今、妙な間が開いた気が。
不思議に思い、ミリーを見る。
「フルーツあるならお菓子でも作ろうかなー?」
にこにこ笑っている姿は……普段と変わらない?
ただの気のせいだろうか。
首を傾げ、俺は使い終わった道具を片づける。
〈標の塔〉の効果なのか、小さな物は出しっぱなしにしておくとゴミと見なされて、時間経過で消えてしまうらしい。面倒でも、できるだけマジックバッグにしまうことを推奨された。
それにしても、本当になんでも揃っている。
料理するにあたって、ミリーが管理している食材や調理器具保管用のマジックバッグを借りたのだが。物を出し入れする際、中に何が入っているかも大体分かるので、その多さに驚かされる。
俺には使い道すら分からないのもあるぞ……
「ミリーって、いつか塔での仕事が終わったら、やっぱり料理人になるのか?」
「えっ? あー、私はね、料理は大好きなんだけどっ」
ミリーはちょっと困ったような顔で言い淀み、俺を見る。
「まあ、リズも秘密? 明かしてくれてるから、私も教えちゃっていいかな……えっとね、私、実はちょっとだけ獣人の血が入ってて。お母さんが獣人のハーフなの。だからつまり、そういうこと」
ああ、と俺は彼女の言いたいことを理解する。そして、ミリーが少々複雑な立場にいることも。
この大陸では、かつて、獣人たちが迫害を受けていた時期があった。
今はもう時代が変わって、あからさまな排除対象にはなっていないが、当時の名残はまだ一部で色濃く残っていて。
たとえば、特定の職業につけなかったりするのだ。
料理人は、そのうちのひとつ。「美味しい」とそれまで大絶賛していた料理でも、作ったのが獣人と分かった途端、手のひらを返したように怒り出す人間が、悲しいことに、まだこの世の中には存在していた。
「私ね、実はこのこと侯爵様に言ってなくて。でも、魔眼持ちのアルベルト様にはすぐバレちゃったの。あの時は、血の気が引いたなあ……相手はよりにもよって高位貴族だもん。その場で殺されてもおかしくなかったんだ。でも、アルベルト様はそんな私をクビにしないでくれて。今でも黙認して雇い続けてくれてる。私が作った料理を『美味しい』って食べてくれるの。
貴族なんて意地悪で、卑怯で、まったく良いイメージなかったのに、あの方は本当に良い人なんだ。っ、だから私、アルベルト様には、」
言いかけたミリーが、ふいに顔をあげる。
どうしたのだろうと視線を追えば、ちょうど緑色の小鳥――文鳥がやってきたところで。
一枚の紙になったそれをミリーは手に取り、広げる。
「あっ、リズ。アルベルト様からのお呼び出しだよっ、本読んでほしいって!」
さあ行きなさい、と満面の笑みで扉を指してくる。
……はいはい。
それじゃ、ひと仕事しに行きますか。
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