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第26話 残された光
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「SNS上で"理由のない安心感"を共有する若者が急増――『最近、朝が少し楽になった』という投稿が前年比で倍増。」
「メンタルヘルス相談窓口のデータ、若者の"深刻な相談"が三年ぶりに減少。『誰かの声に救われた』という報告が目立つ。」
「音楽配信サービス、深夜帯の"癒し系プレイリスト"再生回数が過去最高に――『聴くと涙が止まる』とのレビューが多数。」
「心理学会の発表、無気力傾向の学生が一割以上改善。専門家は"説明できないポジティブ因子"の存在を指摘。」
彼女が居なくなってから、テレビをまたつけるようになった。
エリーはいなくなったが、エリーの痕跡はところどころに散らばっていた。
コーヒーを飲み、マグカップを洗う。マグカップは白とピンクと2つ並んでいた。
写真集も机に置いたままだった。
今日は、生守宅に誘われていた。プロジェクトがひと段落し家族のところに顔出しにいっているらしい。
玄関を出ると「こんにちは」と隣人に声をかけられた。
エリーが住んでいた部屋はすでに違う人が住んでいた。
アージェルは隣人と視線を合わせることなく会釈し、その場を去った。
生守に伝えられた住所は、電車で約1時間、駅から徒歩20分。近くはない距離だった。
生守の家に行くまでに、商店街を通った。
エリーの歌がどこからか聞こえてきた。
エリーが居なくなっても、エリーの歌は人々を癒し続けている。
「いらっしゃい」
聞き覚えのある声が聞こえ、ガラス戸が開いた。
エレベーターに乗り、生守宅のインターホンを押す。
「折原君、いらっしゃい」
生守の奥さんの明穂が迎えた。
リビングには、生守とその息子朋輝がいた、ソファに寄りかかり、なにやらゲームに夢中のようだった。
「朋輝、挨拶は?」
朋輝は手元のゲームから一瞬目をはずし、アージェルに会釈した。
朋輝とは一度だけあったことがあった。
エリーのプロジェクトの前なので3年前になる。
あの時は小学4年生だった。
今年で中学生になるらしく、以前より大きくなっていた。
眼鏡をかけており、大人しい感じの少年だ。
3年前と変わらず、ゲームに夢中のようだった。
アージェルも軽く挨拶をして席に座った。
朋輝の成長を通し、3年という月日の長さを感じた。
アージェルは額縁に飾ってあるエリーのポスターに視線がいった。
明穂が、アージェルがエリーのポスターに視線行ったのを確認し
コーヒーとケーキを人数分ならべながらおしゃべりをはじめた。
「エリーちゃんファンだったの。引退しちゃうなんてさみしいわ。」
朋輝はゲーム機に夢中だ。生守は朋輝に話しかける。
「育ったか?」
「多分」
エリーの話題は刹那に消えた。
後方のテレビから、音が流れてくる。
"全国の自殺者数、5年ぶり減少幅が最大に『若年層の相談件数も改善傾向』
厚生労働省が今日発表した統計によると、全国の年間自殺者数は昨年比で 12.4% 減少し、
5年ぶりに大幅な改善が見られた。"
「遠慮せず、召し上がってね」
「ありがとうございます」
アージェルは、額縁の中の彼女の笑顔を見つめた。彼女の声が、心の中で静かに響く。
この気持ちは消えることがあるのだろうか。
【あとがき】
『光の記憶』を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
エリーとアージェルの物語は、ここで終わります。
でも、Orvellyの世界の物語は、まだ続きます。
――二つの月が照らす世界で、
別の時代、別の場所で、
また新しい出会いと別れが紡がれていきます。
もしよろしければ、
『二つの月の神話』も読んでいただけると嬉しいです。
感想やお気に入り登録、とても励みになります。
これからも、Orvellyの世界を一緒に旅していただけたら幸いです。
明見朋夜
「メンタルヘルス相談窓口のデータ、若者の"深刻な相談"が三年ぶりに減少。『誰かの声に救われた』という報告が目立つ。」
「音楽配信サービス、深夜帯の"癒し系プレイリスト"再生回数が過去最高に――『聴くと涙が止まる』とのレビューが多数。」
「心理学会の発表、無気力傾向の学生が一割以上改善。専門家は"説明できないポジティブ因子"の存在を指摘。」
彼女が居なくなってから、テレビをまたつけるようになった。
エリーはいなくなったが、エリーの痕跡はところどころに散らばっていた。
コーヒーを飲み、マグカップを洗う。マグカップは白とピンクと2つ並んでいた。
写真集も机に置いたままだった。
今日は、生守宅に誘われていた。プロジェクトがひと段落し家族のところに顔出しにいっているらしい。
玄関を出ると「こんにちは」と隣人に声をかけられた。
エリーが住んでいた部屋はすでに違う人が住んでいた。
アージェルは隣人と視線を合わせることなく会釈し、その場を去った。
生守に伝えられた住所は、電車で約1時間、駅から徒歩20分。近くはない距離だった。
生守の家に行くまでに、商店街を通った。
エリーの歌がどこからか聞こえてきた。
エリーが居なくなっても、エリーの歌は人々を癒し続けている。
「いらっしゃい」
聞き覚えのある声が聞こえ、ガラス戸が開いた。
エレベーターに乗り、生守宅のインターホンを押す。
「折原君、いらっしゃい」
生守の奥さんの明穂が迎えた。
リビングには、生守とその息子朋輝がいた、ソファに寄りかかり、なにやらゲームに夢中のようだった。
「朋輝、挨拶は?」
朋輝は手元のゲームから一瞬目をはずし、アージェルに会釈した。
朋輝とは一度だけあったことがあった。
エリーのプロジェクトの前なので3年前になる。
あの時は小学4年生だった。
今年で中学生になるらしく、以前より大きくなっていた。
眼鏡をかけており、大人しい感じの少年だ。
3年前と変わらず、ゲームに夢中のようだった。
アージェルも軽く挨拶をして席に座った。
朋輝の成長を通し、3年という月日の長さを感じた。
アージェルは額縁に飾ってあるエリーのポスターに視線がいった。
明穂が、アージェルがエリーのポスターに視線行ったのを確認し
コーヒーとケーキを人数分ならべながらおしゃべりをはじめた。
「エリーちゃんファンだったの。引退しちゃうなんてさみしいわ。」
朋輝はゲーム機に夢中だ。生守は朋輝に話しかける。
「育ったか?」
「多分」
エリーの話題は刹那に消えた。
後方のテレビから、音が流れてくる。
"全国の自殺者数、5年ぶり減少幅が最大に『若年層の相談件数も改善傾向』
厚生労働省が今日発表した統計によると、全国の年間自殺者数は昨年比で 12.4% 減少し、
5年ぶりに大幅な改善が見られた。"
「遠慮せず、召し上がってね」
「ありがとうございます」
アージェルは、額縁の中の彼女の笑顔を見つめた。彼女の声が、心の中で静かに響く。
この気持ちは消えることがあるのだろうか。
【あとがき】
『光の記憶』を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
エリーとアージェルの物語は、ここで終わります。
でも、Orvellyの世界の物語は、まだ続きます。
――二つの月が照らす世界で、
別の時代、別の場所で、
また新しい出会いと別れが紡がれていきます。
もしよろしければ、
『二つの月の神話』も読んでいただけると嬉しいです。
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これからも、Orvellyの世界を一緒に旅していただけたら幸いです。
明見朋夜
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