写真と巡る君との世界

プロローグ

「ねぇ葵君。人って死んだらどうなるのかな? 」



　そう問いかけた彼女は、楽しそうにして僕の回答を待っていた。



「また、新しい生命として人に生まれ変わるんじゃないか?　いや、でも……」



　なんて、僕は何も面白味のないことしか答えられなかった。それに、この当時の僕は、人が、ましてや、自分が死んだ後のことなんて考えたこともなかった。そしたら、こんな回答にもなってしまうだろう。でも、それが彼女にとっては面白い答えだったらしいく、ケラケラと笑っていた。



「葵君は真面目だね。私、君のそういうところが好きだったりするよ」



「……そうか」



「私はね人は死んだら、しばらくは何にもなんないんじゃないかなって思うの。……いや、なれないのかも。しばらく空気みたいに、何にもなれなくて、その後、人に生まれ変われるんじゃないかな」



　真面目に話していた彼女に、僕は声をかけることもできず、ただ、その横顔を見つめるだけしかできなかった。何故なら、このときの彼女は、僕が彼女に逢ってから、初めて見る顔だったからだ。今にも泣き出してしまいそうな、この世の全てを理解して諦めている様な、僕が知らないような顔だったからだ。




　このとき、まだ15歳だったときの僕は、彼女に声をかけられないんじゃなく、かける言葉が見つからなかったんだ。あれから13年が経った、現在の僕が昔の自分の代わりに何か言おう。と思っても、上手い言葉はまだ見つかっていない。



　だけど、あのとき、無理をしてでも何か彼女に言うべきだったと、現在でも後悔している。

　何故なら、13年前のあの日。あのとき、彼女は全てを知っていたから。



　それに気づいていないのは、僕だけだった。