セリアンの巫女 ~美少女動物軍団で異世界制覇~

白水秋一

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第1章

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「わたしの場合は別のやり方をしたのですね?」
「同じ過ちを繰り返したくはありませんでした」
 アリシアさんは硬い表情でその時の決意を伝えた。

 俺を召喚する時にはアドラドさんを仲間に加えた。
 アドラドさんは直接ではなく、夢の世界を介して、異世界から人を召喚する事が出来る。だが、異世界の住人に夢を見せて召喚する分、難易度はかなり高い。召喚に成功するまではかなり苦労したようだ
「そこまで苦労して、無窮の巫女の生まれ変わりをこちらの世界に連れてくる理由はなんなのでしょうか?」

「それにはこちらの世界の状況を説明しなければなりません」
 アポさんが眼鏡をかけ直して説明を始める。
 アポさんの話によると、こちらの世界には世界統一国家というものはなく、大小様々の国がせめぎ合い、栄枯盛衰の結果国家が分裂したり、征服したりされたり、領土が増えたり減ったり、その辺の事情はこちらの世界とあまり変わらないようだ。
 ところが、ある日突然出現した帝国によって世界制覇の戦いが始まり、次々に国家が併呑され、今もその戦いの途中なのだという。
 そこで俺は帝国の成り立ちをたずねた。その帝国はなぜそこまで急激な拡大が出来たのか。もとはどのような国だったのか。そういった事を知りたかったのだが、帰ってきた返事は俺を混乱させた。

「誰かが自動帝国発生装置を起動させたのです」
「えーと。えーと」
 俺はしばらくどのように言語化していいのか迷った末にとても単純な質問をした。
「それは何?」
神造しんぞうの塔にある創造神の用意した装置です。起動ボタンを押すと」
「帝国が発生するの?」
「します」
(するのか!)

 この世界についてなにか聞くたびに、驚きとともに混乱がやってくる。
 そういう思いにとらわれながらも、俺は帝国についての説明を聞いた。
 帝国は強力な軍を持ち、それの運用が巧みで、他国の状況をつかんで、国家間の対立や国内の乱れに乗じて、絶妙な機会に攻め込む。さらに占領後の行政も、住民の多くに不満を持たせないように行っている。
 始めには世界最小の国だった帝国も、周囲の小国を征服し、版図を拡大、危機的な状態に陥る事もあったがそれを乗り越え、いくつかの巨大な国家を打倒して併呑、今では単独で対抗できる国家は存在しないという状況になっている。

 そしてアポさんは、いきなり俺に無茶な事を言った。
「帝国に対抗する勢力をまとめるための組織の長になっていただくために、この世界にあなた様をお連れしたのです」
 俺は驚いたが、なるべく冷静にたずねた。
「その無窮の巫女の力をわたしが持っているとして、それは帝国に対抗するために使えるようなものなの?」
 アポさんが答えた。
「それについては戦略構想について説明せねばなりません」
 聞いていただけますか、という事なので俺はうなずいた。

 アポさんの説明によると、帝国に対抗するには今から一つの勢力を築き上げていくというのは無理で、世界中の反帝国勢力をまとめていくしかないという。
 ある程度強力で一つの意思によって統御される武装勢力を中核とし、各地の大小様々な勢力をゆるやかにまとめる連合体。それを世界全体に広げる事ができれば、帝国に対抗できるようになると、アポさんは力説する。

「帝国に対する考えは様々です。帝国の支配によってもたらされた平和を歓迎する者もいれば、広大な地域を一つの法体系でまとめ上げる統治機構に魅力を感じる者、統一された貨幣を使える事を有り難いと思う者もいるでしょう」
「うちの教団にも帝国に付いた人たちはいるからね」
 アドラドさんはそう付け加える。

 そうなのか。俺は少し考え込んだ。なかなか事情は複雑そうではないか。
「はい。私たちの教団でも帝国に関する考えはまとまっていません」
 アポさんは続けて話す。
「しかし、帝国の成長は急激すぎました。人の一生が終わらぬうちに世界統一がなされようとするほどのすさまじい速さ。当然それについていけない者は大勢います。旧来のしきたりを変えられてとまどう者、敵対していた相手と無理矢理ひとつの国にまとめられていきどおる者、帝国の仕組み自体を憎む者。考えはそれぞれ異なっても、帝国を敵とする事で一つにまとめる事ができます」

 その中核的集団に、セリアン教団の人員を主体とする組織を置き、その組織をまとめるために無窮の巫女の生まれ変わりを上にすえるというわけである。
「どうしても帝国を倒さなければならないの?」
 帝国が悪の帝国というわけでもないのなら、倒す必要もないのではないか。俺はそう思った。
「私たちはそれを神の試練と考えています」

 アポさんは続ける。
「神の用意した帝国により世界が統一され、恒久的な平和と腐敗のない行政機構による公平で効率的な統治。そのもとで民衆が何一つ思い悩む事なく暮らす世界。それはとても魅力的なものでしょう」
「しかし、それを行うのは人ではないのです」
「装置によって製造された皇帝と重臣、官僚、将帥しょうすい、将校、兵卒。帝国の中核であるそれらは人ではなく、生物ですらなく、人の形をした機械なのです」

安寧あんねいの中で自立を失う、それは神の望む事ではないはずです」
 アポさんは力を込めて言った。
「我々人間はそれに甘んじてはいけません。自分たちの意志で自分たちの国を運営しなければならない。私たちがそれを自覚し、帝国を打倒する事によってそれを実現する。そのために与えられた神の試練だと、ここにいる三人は思っています」
「今の帝国による支配が続くなら、私たちセリアン教団も他の教団も一般の民も、最終的にはこれが神の試練であり、自分たちの力で倒さなければいけない事を理解するでしょう」
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