セリアンの巫女 ~美少女動物軍団で異世界制覇~

白水秋一

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第2章

18

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 運んで来てくれたのは、おそらくは女性と思われるゴブリン。前合わの着物を重ねて着て、帯を結んでいる。男性に比べれば、顔や体つきはいかめしくない。
 それぞれの前に膳が置かれた。飯はきのこ入りおこわ、汁には焼き干の鮎が入っている。おかずは何かの植物の煮物、木の芽が添えられている。
 素朴だが、この村のごちそうである事は察せられた。

「チカ様にもち米を運んでいただいたおかげで、このようにお出しできました。感謝いたします」
「いいえ、お安い御用ですよ」
 二人のやり取りを聞いていたアポさんが村長に話しかけた。
「すみませんが私は大陸の西から来た者で、稲作についてはよくわからないのでお聞きしたいのですが。なぜ水田があるのに、わざわざよそからもち米を持ってくるのですか」
「なんと、西の方では米づくりをしておらぬのですか。それではおわかりにならぬでしょうが、もち米をうるち米の近くに植えておくと混じってしまいましてな、もち米らしからぬ米になってしまうのでございますよ」

 たぶん、うるち米の花粉を受粉したもち米が中間的な性質になってしまうというわけなのだろう。
「わしらの村はこのあたりの村の中で一番広い田を持っとるとはいえ、もち米を分けて育てるほどの広さというわけでもありませんで。そこでもち米を育てている別の村とうるち米を好感しておるというわけでありまして」
「なるほど、植物の事は詳しくないので参考になりました」

 俺も植物の知識についてはかなり偏りがある。動物との特別な関係がある植物については多少知っているが、それ以外は本当によく知らない。イチジクの受粉のしくみは知っていても、杉とひのきの見分け方も知らないぐらいだ。なのでアポさんへの親近感が増した。

 そう思いながら、俺が煮物を箸でつまんで、これも何の植物だかわからないなと思っていると、右隣のチカさんが「黙信術」で
(それはイタドリの塩漬けの煮物です)
 と教えてくれた。
 こちらから語りかける事はできないので、軽く頭を下げて感謝した。
 それにしてもこれがイタドリなのか、ともう一度見つめる。名前を聞いた事はあるが、俺がイタドリについて知っているのは、イタドリマダラキジラミがもっぱらこれだけを食べて生きているという事ぐらいだ。俺も食べてみる。
 酸っぱい。


「もう少し早い時期ならば真新しい山菜をどっさりとお出したのですが、今はあいにくきらせておりまして、若い者に筍を掘らせておりますので晩には、召し上がっていただけましょうぞ」
 そして機嫌よく昔話を語り始めた。

「塩買いの時には、巫女様方に本当にお世話になりました」
 山田村が塩を買い始めたのは、前の村長の時からだった。塩の取れない山奥の村では不足しがちで、たまに塩を買いに里に下りても、値上がりしていたり何らかの理由で市場に出回る塩が少なかったりして、十分な量の塩を買えない時もしばしばあった。

 そこで前の村長が発案したのだ。ある程度まとまった量の塩を蓄えておけば市場の流れに振り回されず、使った分を安い時に買うだけでよくなると。
「もちろん、簡単な話ではございません。牛や馬が通えぬほどの深い山の中。荷はみな背負って運ばねばなりませぬ。塩を運ぶだけなら、小分けにして運べますが、塩の代価となるとそうもいきません」

 特に金目のものを産するわけでもない村なので、米か材木ぐらいしかないが背負って運べる程度の米ではたいした量の塩しか買えず、在木は川で運ぶしかないが、通過困難な地形が何か所もあり、下流には材木の産地が他にあるので、苦労して運んだとしてもさほど高い値では売れない。
 前の村長がそんな事を言い出したのはあてがあったからなのだそうだ。

「前の長は少し変わった男でしたな。おとなになってもまだ髪を残し、ゴブリン以外とも進んでつきあい、仲良くできる、そんな男でした」
 そして二人の人物に協力を頼んだのだ。
「一人は巫女の時雨しぐれ様、もう一人はわしは名を知らぬのですが、領主なのか商人なのか、いずれとも知れぬ男でした。前の長は山の君と呼んでおりましたな」
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