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第2章
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片眼をつむったアポさんが最初に話を始める。
「まずは地形を把握しましょう」
手に持った枝で、地面にすらすらと簡略な地図を描く。
この村に来る前に東の方からながめたように、村は山の中腹にあり、南側の平坦な部分が水田として使われ、その北のやや傾斜した土地に家と畑が散在している。水田からさらに南側は傾斜のきつい斜面になっていて、それ以外の村の外側は雑木林と竹林に囲まれている。水田と林のさらに外は手入れのされていない森が生い茂っている
「西側から下は比較的上り下りしやすい坂になっていて、村に続く唯一の道があります。入り口には垣が築かれ、さらに防御力を高めるために村人が働いているところですね」
アポさんは木の枝でその入り口より内側の林の部分を、西から北、そして東と半円を描くように動かした。
「林の方は村が利用するために木の間隔が広く、下草も刈られているので、通り抜けるのは簡単です」
そしてさらにその外側に森をぐるりと一周して円を描いた。
「森の領域は木が生えるにまかせた状態で、通過できないわけではないですが、枝を打ち下草を払いながら歩くなら、こちらが気付かないように移動するのは困難でしょう」
そして次に東側を指した。
「ここは皆さんご存じのように切り立った崖に囲まれていで、下から登って攻めるのは困難です」
そして枝の先で川の位置を書き加えた。
「東の川は南北に流れていて南は滝になっています。北は山頂近くから流れていますが、そのあたりは細く傾斜も急で、川岸や川底を人が歩ける状態ではありません。歩けるぐらい広くなるのは村のそばにまで来てからで、北の森を迂回すれば到達できますが、そこまで回り込むなら、北の森から南へ攻め込む方が早いし、川に出てしまうと見通しが良くなって、奇襲しづらくなります。おそらくこの方面から攻め込まれる事はないでしょう」
「村長さんは村の中で戦いになれば、川の西側に女子供を逃がすつもりと言ってましたね」
チカさんの言葉に、アポさんはうなずく。
「はい。私たちもそれを念頭に置いて計画を立てましょう」
そしてその川にそそぐ小川を描く。
「西北から東南に小川が村の中を流れていて、途中でため池と水路でつながっています。そこから東に向きを変えて、水田の北を流れ、東の川に合流しています」
「これは小さいから、通路にも障碍にもならぬの」
ねそこさんがそう評価する。
「その通り。ですがきららさんならこの小川を利用して素早く移動できるはずです。ここから小川までは遠くないので、万一の時にはきららさんに川岸に避難した人たちを守りに行ってもらいましょう」
「まかせて」
きららさんの言葉の後、アポさんは枝で村の西、南、北を指した。
「予想される敵の侵攻はこの三方向です。西にある村の入り口は村人が守りを固めているので、簡単には破られないと思います。私たちは状況を見て応援に行けばよいでしょう」
「すると特に重点的に監視するのは北と南かの」
ねそこさんの言葉にアポさんが応じる。
「そうですね。水田に水を入れるとの話でしたので、南はそこで足止めできますが、なるべくそこに来る前に接近を探知して対処したい所です。急峻というほどではなくても、急な上り坂は向こうにとって攻めづらい場所ですからね」
ねそこさんは腕組みして考える。
「すると北が一番危険かの」
「おそらくは。北に来るには西の道を登り、村の入り口を避けて移動し、森の中を大きく迂回しなければいけません。時間はかかりますが、通過してしまえば特に障碍もなく、村の中にやすやすと攻め込めるでしょう」
「そうなる前に敵を見つけて対応せねばならぬの」
「そこで哨戒網の形成が重要です。夜は私と分け身で空と南北の森を見張ります」
「すでに身の分け身は三体配置してあるが、残りはどこに置くかの」
「適宜交代しながらの監視になりますので、それを計算に入れて配置を決めましょう」
アポさんとねそこさんが哨戒網について話し合っている時に、ねそこさんが会話を打ち切って言った。
「道を登って村に来る者がおるの。人数は少ない。六人じゃな、一人ゴブリンが混じっておる」
すでに配置してある分け身を通じて足音を聞いたのだった。
「報せてきます」
チカさんは第四階梯に昇り、ヒトの様なカニクイイヌの姿で走りだす。
俺たちもその後に続く。
「和平の使者ならよいのですが」
アリシアさんはそう言ったが、全く楽観はしていないような表情だった。
「まずは地形を把握しましょう」
手に持った枝で、地面にすらすらと簡略な地図を描く。
この村に来る前に東の方からながめたように、村は山の中腹にあり、南側の平坦な部分が水田として使われ、その北のやや傾斜した土地に家と畑が散在している。水田からさらに南側は傾斜のきつい斜面になっていて、それ以外の村の外側は雑木林と竹林に囲まれている。水田と林のさらに外は手入れのされていない森が生い茂っている
「西側から下は比較的上り下りしやすい坂になっていて、村に続く唯一の道があります。入り口には垣が築かれ、さらに防御力を高めるために村人が働いているところですね」
アポさんは木の枝でその入り口より内側の林の部分を、西から北、そして東と半円を描くように動かした。
「林の方は村が利用するために木の間隔が広く、下草も刈られているので、通り抜けるのは簡単です」
そしてさらにその外側に森をぐるりと一周して円を描いた。
「森の領域は木が生えるにまかせた状態で、通過できないわけではないですが、枝を打ち下草を払いながら歩くなら、こちらが気付かないように移動するのは困難でしょう」
そして次に東側を指した。
「ここは皆さんご存じのように切り立った崖に囲まれていで、下から登って攻めるのは困難です」
そして枝の先で川の位置を書き加えた。
「東の川は南北に流れていて南は滝になっています。北は山頂近くから流れていますが、そのあたりは細く傾斜も急で、川岸や川底を人が歩ける状態ではありません。歩けるぐらい広くなるのは村のそばにまで来てからで、北の森を迂回すれば到達できますが、そこまで回り込むなら、北の森から南へ攻め込む方が早いし、川に出てしまうと見通しが良くなって、奇襲しづらくなります。おそらくこの方面から攻め込まれる事はないでしょう」
「村長さんは村の中で戦いになれば、川の西側に女子供を逃がすつもりと言ってましたね」
チカさんの言葉に、アポさんはうなずく。
「はい。私たちもそれを念頭に置いて計画を立てましょう」
そしてその川にそそぐ小川を描く。
「西北から東南に小川が村の中を流れていて、途中でため池と水路でつながっています。そこから東に向きを変えて、水田の北を流れ、東の川に合流しています」
「これは小さいから、通路にも障碍にもならぬの」
ねそこさんがそう評価する。
「その通り。ですがきららさんならこの小川を利用して素早く移動できるはずです。ここから小川までは遠くないので、万一の時にはきららさんに川岸に避難した人たちを守りに行ってもらいましょう」
「まかせて」
きららさんの言葉の後、アポさんは枝で村の西、南、北を指した。
「予想される敵の侵攻はこの三方向です。西にある村の入り口は村人が守りを固めているので、簡単には破られないと思います。私たちは状況を見て応援に行けばよいでしょう」
「すると特に重点的に監視するのは北と南かの」
ねそこさんの言葉にアポさんが応じる。
「そうですね。水田に水を入れるとの話でしたので、南はそこで足止めできますが、なるべくそこに来る前に接近を探知して対処したい所です。急峻というほどではなくても、急な上り坂は向こうにとって攻めづらい場所ですからね」
ねそこさんは腕組みして考える。
「すると北が一番危険かの」
「おそらくは。北に来るには西の道を登り、村の入り口を避けて移動し、森の中を大きく迂回しなければいけません。時間はかかりますが、通過してしまえば特に障碍もなく、村の中にやすやすと攻め込めるでしょう」
「そうなる前に敵を見つけて対応せねばならぬの」
「そこで哨戒網の形成が重要です。夜は私と分け身で空と南北の森を見張ります」
「すでに身の分け身は三体配置してあるが、残りはどこに置くかの」
「適宜交代しながらの監視になりますので、それを計算に入れて配置を決めましょう」
アポさんとねそこさんが哨戒網について話し合っている時に、ねそこさんが会話を打ち切って言った。
「道を登って村に来る者がおるの。人数は少ない。六人じゃな、一人ゴブリンが混じっておる」
すでに配置してある分け身を通じて足音を聞いたのだった。
「報せてきます」
チカさんは第四階梯に昇り、ヒトの様なカニクイイヌの姿で走りだす。
俺たちもその後に続く。
「和平の使者ならよいのですが」
アリシアさんはそう言ったが、全く楽観はしていないような表情だった。
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