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第3章
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「きららさんがいてくれて幸いでした。さもなければ、死傷者の数はもっと多かったでしょう」
アポさんはそう言って、きららさんが寝ている天幕の方に軽く頭を下げた。
「全般としては、敵の数が予想を大きく上回っていたために対応が難しくなりました」
ゴブリンはナランスよりも体格が劣るために、村長は三人で一人に当たるよう指示していた。ところが、盗賊の数は想定以上で、依然として村人の方が数が多いとはいえ、三人に一人で当たるには人数が不足していた。
そのために、ところどころで突破されかけたのを、苦心して人員を回し、さらに巫女さんたちが穴埋めに回ったので、なんとかはなったのだそうだ。
「むこうの損害ははっきりしません。死傷者はすべて回収していったので。ただ、死者の数はこちらより少なかっただろうと思います。その代わりというわけではありませんが、捕虜を十一人得ました」
人数が増えたので柵を作り、すでにいる二人と合わせてそこに閉じ込める事になったそうだ。アポさんは後で尋問に行くつもりと言ってから、各方面での戦闘結果の説明を始めた。
「西はそれほど危機にはなりませんでした。狭い入口で厳重に守りを固めているのは敵も想定していたのでしょう。一番数が少なく、その代わり弓を持ったものが多くて、次々に矢を射かけてきました。簡易とは言え矢防ぎがなければ苦戦したでしょう。おそらくは半ば陽動で仕掛けて見て、こちらに隙があれば付け入ってそのまま攻め込むというつもりだったのではないでしょうか」
アポさんは西の戦いをそうまとめると、しばらく食事をしていた。
周囲を見るとアドラドさんが置いていった分け身のアナウサギが、草を探して広場内を移動している。犬たちはもちろん襲ったりはせず、むしろ見守ってくれていると俺は感じた。
「次は南について。こちらは幅広く攻め寄せてこれるという点だけは向こうが有利なのですが、木の茂った斜面を登ってこなければいけないために、移動が面倒で攻め込みにくい地勢です。そのためか軽装で槍を持たずに駆け上がってきました」
村人はまず、石を投げて攻撃したが、盗賊たちは木を利用して石を防いだ。そこまでは俺も見ていた。
だが、盗賊たちが苦労したのは森の終わるところまで来てからだった。そこは水田に影を落とさぬように木は全て伐採されている。そこで身をさらけ出したところに上から村人が攻撃した。槍を持っているのは三人だけで、あとは竹槍と鍬と鋤と、木の棒を持っての戦いだが、柄が長いので攻撃範囲が盗賊たちより大きく、高い位置から振り下ろす分威力もあり、攻める方はかなり苦労した。
「たまにうまく隙をついて駆け上ってくる者もいましたが、私が風をおこして、やさしく二、三日は立てない程度の怪我で済むように、下まで叩き落してあげましたよ」
アポさんは楽し気にくっくっと笑う。
それはやさしいと言えるのだろうかと俺は思ったが、盗賊に対してあまりはっきりした怒りを見せないアポさんも、内心ではそれなりに怒っているのだろう。
そしてアポさんは食事を再開する。俺とアリシアさんも食べ続け、おひつと鍋を空にすると手を合わせて感謝した。
「さて、最後は北ですが。ここが一番の難戦でした。南と違って向こうが上から攻める形になり、水田のような障碍も有りません。盗賊もそれがわかっていたから、一番数を多くして攻撃してきました。先ほど言ったように三対一で戦う計画が破綻してしまったので、こちらは大混乱。村長は西から人数を回したのですが、それでも足りず、南からも引き抜いたのですが、まだ足りないという事態に」
「それでどうしたんですか?」
「アリシアとねそこさんが頑張ってくれました」
ねそこさんは盗賊の進路になりそうな場所に首が出る程度の深さの落とし穴を掘り、落ちた敵を素早く埋めて身動き取れなくした。捕虜の多くはこのやり方で捕まえる事が出来た。
そしてアリシアさんは林を突破しそうな敵がいると、接近してその武器を奪い、つかみ上げて別の敵へと投げつけた。そこで前に俺も見た「能動投擲」の術を使ったのだった。飛び道具を使いにくい林の中でも軌道を操作し、自在に飛ばす事が出来る。そして投げられた者は、人間の弾として仲間にぶつけられたというわけだった。
「私はアポさんほどやさしくはありませんが、死なない程度に手加減はしました」
感情を現さずにそういうアリシアさんも、盗賊にかなり腹を立てているのだろう。
そして、それを愉快に思う俺も同様だった。
アポさんはそう言って、きららさんが寝ている天幕の方に軽く頭を下げた。
「全般としては、敵の数が予想を大きく上回っていたために対応が難しくなりました」
ゴブリンはナランスよりも体格が劣るために、村長は三人で一人に当たるよう指示していた。ところが、盗賊の数は想定以上で、依然として村人の方が数が多いとはいえ、三人に一人で当たるには人数が不足していた。
そのために、ところどころで突破されかけたのを、苦心して人員を回し、さらに巫女さんたちが穴埋めに回ったので、なんとかはなったのだそうだ。
「むこうの損害ははっきりしません。死傷者はすべて回収していったので。ただ、死者の数はこちらより少なかっただろうと思います。その代わりというわけではありませんが、捕虜を十一人得ました」
人数が増えたので柵を作り、すでにいる二人と合わせてそこに閉じ込める事になったそうだ。アポさんは後で尋問に行くつもりと言ってから、各方面での戦闘結果の説明を始めた。
「西はそれほど危機にはなりませんでした。狭い入口で厳重に守りを固めているのは敵も想定していたのでしょう。一番数が少なく、その代わり弓を持ったものが多くて、次々に矢を射かけてきました。簡易とは言え矢防ぎがなければ苦戦したでしょう。おそらくは半ば陽動で仕掛けて見て、こちらに隙があれば付け入ってそのまま攻め込むというつもりだったのではないでしょうか」
アポさんは西の戦いをそうまとめると、しばらく食事をしていた。
周囲を見るとアドラドさんが置いていった分け身のアナウサギが、草を探して広場内を移動している。犬たちはもちろん襲ったりはせず、むしろ見守ってくれていると俺は感じた。
「次は南について。こちらは幅広く攻め寄せてこれるという点だけは向こうが有利なのですが、木の茂った斜面を登ってこなければいけないために、移動が面倒で攻め込みにくい地勢です。そのためか軽装で槍を持たずに駆け上がってきました」
村人はまず、石を投げて攻撃したが、盗賊たちは木を利用して石を防いだ。そこまでは俺も見ていた。
だが、盗賊たちが苦労したのは森の終わるところまで来てからだった。そこは水田に影を落とさぬように木は全て伐採されている。そこで身をさらけ出したところに上から村人が攻撃した。槍を持っているのは三人だけで、あとは竹槍と鍬と鋤と、木の棒を持っての戦いだが、柄が長いので攻撃範囲が盗賊たちより大きく、高い位置から振り下ろす分威力もあり、攻める方はかなり苦労した。
「たまにうまく隙をついて駆け上ってくる者もいましたが、私が風をおこして、やさしく二、三日は立てない程度の怪我で済むように、下まで叩き落してあげましたよ」
アポさんは楽し気にくっくっと笑う。
それはやさしいと言えるのだろうかと俺は思ったが、盗賊に対してあまりはっきりした怒りを見せないアポさんも、内心ではそれなりに怒っているのだろう。
そしてアポさんは食事を再開する。俺とアリシアさんも食べ続け、おひつと鍋を空にすると手を合わせて感謝した。
「さて、最後は北ですが。ここが一番の難戦でした。南と違って向こうが上から攻める形になり、水田のような障碍も有りません。盗賊もそれがわかっていたから、一番数を多くして攻撃してきました。先ほど言ったように三対一で戦う計画が破綻してしまったので、こちらは大混乱。村長は西から人数を回したのですが、それでも足りず、南からも引き抜いたのですが、まだ足りないという事態に」
「それでどうしたんですか?」
「アリシアとねそこさんが頑張ってくれました」
ねそこさんは盗賊の進路になりそうな場所に首が出る程度の深さの落とし穴を掘り、落ちた敵を素早く埋めて身動き取れなくした。捕虜の多くはこのやり方で捕まえる事が出来た。
そしてアリシアさんは林を突破しそうな敵がいると、接近してその武器を奪い、つかみ上げて別の敵へと投げつけた。そこで前に俺も見た「能動投擲」の術を使ったのだった。飛び道具を使いにくい林の中でも軌道を操作し、自在に飛ばす事が出来る。そして投げられた者は、人間の弾として仲間にぶつけられたというわけだった。
「私はアポさんほどやさしくはありませんが、死なない程度に手加減はしました」
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そして、それを愉快に思う俺も同様だった。
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