44 / 54
第3章
7
しおりを挟む
アリシアさんに傘を渡された。手に持つのではなく頭にかぶる種類のものだ。時代劇で見るような、これまでかぶったことのない傘をうまく固定するのに手間取ったが、チカさんがつけるのを見よう見まねで何とかなった。
アポさんときららさんは天幕に入って睡眠。他の巫女さんは雨に打たれながら、それぞれの任に着く。
「戦いになる前に団長と二人で村を見てきます」
ガイさんがそう言い、犬たちを連れて俺たちはまずは北の林に向かう。
ガイさんの指定した場所で、探知を始める。まだ敵に動きはなし。
取りあえず判明した敵の位置を、地面に点として記していく。上には枝が密集していて雨はかかりにくい。その間にガイさんは村人に障碍物の設置についての指導をしている。
横目で見ていると、垣を作る場合、乗り越えて地面に降りるあたりに、先をとがらせた枝を刺していた。
「実際に怪我をするかより、相手をひるませられるかの方が重要です」
そう説明していた。
盗賊は三十人いた。俺が作業を終えると、ガイさんが戻って来て検分する。
「おそらく敵はまだ団長の能力そのものには気づいていないだろうと推測していましたが、やはりその可能性が高いですね」
「そうなんですか?」
「私が敵の立場だったらもっと密集させて、絶えず誰かが移動している状態にしますね、」
なるほど、それをされると確かに個々人の判別はやりにくくなるだろう。
「しかし、こちらにセリアン教団の巫女がいるのはわかっているし、何らかの能力で動きを探っているとは思って用心はしているのでしょう。組頭の位置はまだわかりませんね。攻撃の時を待つしかなさそうです」
次は南に向かいましょうという、ガイさんの言葉にしたがって移動する。
その途中で俺は聞いてみた。
「ガイさんは戦いにくわしいのですね」
その事は他の巫女さんの話から察せられたが、本人から聞いてみたかった。
「あちこち渡り歩いているうちに多少は見習い覚えましたが、本職の人に比べれば大したものではありませんよ。もっともその分、本職でない人に教えるのには向いているかもしれませんね」
そう言って、くつくつと喉で笑う。
「防御用の垣の設置方法とか、徹底しているなと思いましたよ」
「それほど徹底した防御策ではありませんよ」
徹底するなら掘った落とし穴には、とがった杭を植えておく、堆肥を塗ればさらによし、下に注意を引いておいて上から頭を一撃するようなわなを仕掛ける手もあると、ガイさんは言った。
「しかし、ここは徹底的にやる場面ではないでしょう」
村人は領主のもとで戦の体験があるとはいえ、普段は雑用をしていて、時に武器を取って戦う事もある程度で、敵の盗賊たちも少人数での襲撃が通常で、こんな大勢で村一つと全面的に対決する経験もなく、村の方もこれまで盗賊に襲われるような財を持たず、大勢を相手に村を守る戦いはなかった。
「そんな場所に通りすがりの人間が徹底した戦のやり方を持ち込むべきではないでしょう。ところで私からも団長に一つ質問があるのですが。組頭への対応について、先ほどは無力化とかやっつけるなどのやわらげた表現が使われていましたが、実際にはほぼ相手を殺す事になります。特定個人を目標とした殺害計画、義勇団長として、それは容認できるのですか?」
それは困った問いだった。まだ、自分自身でも整理しきれていない。俺は考え考え言葉を出した。
「これは小さな村の戦いといっても、戦なのですから死者が出る事自体は当然なのでしょう。でもわたしは義勇団の団長という立場なのですから、一般論だけではすまされないとも思います。まだ、この世界について学んでいる状態なので確信をもっていう事は出来ないけれども、やはり死者が多くなるのは避けるべきだろうと思います」
俺は自分でもつたない表現力だなと思いながら、理由を述べた。
「そもそも死者が多くなるという事自体がよくないのが一つ、戦いが激化するのをさけたいという願いが一つ、巫女の皆さんに殺生してほしくないというのが一つ」
そして付け加えた。
「でもそのために逆に死者が増えるかもしれない。巫女さん方を危険な目に合わせるかもしれない。だから、実際どうするかは皆さんの判断に任せるしかありません。無責任ですみません」
アポさんときららさんは天幕に入って睡眠。他の巫女さんは雨に打たれながら、それぞれの任に着く。
「戦いになる前に団長と二人で村を見てきます」
ガイさんがそう言い、犬たちを連れて俺たちはまずは北の林に向かう。
ガイさんの指定した場所で、探知を始める。まだ敵に動きはなし。
取りあえず判明した敵の位置を、地面に点として記していく。上には枝が密集していて雨はかかりにくい。その間にガイさんは村人に障碍物の設置についての指導をしている。
横目で見ていると、垣を作る場合、乗り越えて地面に降りるあたりに、先をとがらせた枝を刺していた。
「実際に怪我をするかより、相手をひるませられるかの方が重要です」
そう説明していた。
盗賊は三十人いた。俺が作業を終えると、ガイさんが戻って来て検分する。
「おそらく敵はまだ団長の能力そのものには気づいていないだろうと推測していましたが、やはりその可能性が高いですね」
「そうなんですか?」
「私が敵の立場だったらもっと密集させて、絶えず誰かが移動している状態にしますね、」
なるほど、それをされると確かに個々人の判別はやりにくくなるだろう。
「しかし、こちらにセリアン教団の巫女がいるのはわかっているし、何らかの能力で動きを探っているとは思って用心はしているのでしょう。組頭の位置はまだわかりませんね。攻撃の時を待つしかなさそうです」
次は南に向かいましょうという、ガイさんの言葉にしたがって移動する。
その途中で俺は聞いてみた。
「ガイさんは戦いにくわしいのですね」
その事は他の巫女さんの話から察せられたが、本人から聞いてみたかった。
「あちこち渡り歩いているうちに多少は見習い覚えましたが、本職の人に比べれば大したものではありませんよ。もっともその分、本職でない人に教えるのには向いているかもしれませんね」
そう言って、くつくつと喉で笑う。
「防御用の垣の設置方法とか、徹底しているなと思いましたよ」
「それほど徹底した防御策ではありませんよ」
徹底するなら掘った落とし穴には、とがった杭を植えておく、堆肥を塗ればさらによし、下に注意を引いておいて上から頭を一撃するようなわなを仕掛ける手もあると、ガイさんは言った。
「しかし、ここは徹底的にやる場面ではないでしょう」
村人は領主のもとで戦の体験があるとはいえ、普段は雑用をしていて、時に武器を取って戦う事もある程度で、敵の盗賊たちも少人数での襲撃が通常で、こんな大勢で村一つと全面的に対決する経験もなく、村の方もこれまで盗賊に襲われるような財を持たず、大勢を相手に村を守る戦いはなかった。
「そんな場所に通りすがりの人間が徹底した戦のやり方を持ち込むべきではないでしょう。ところで私からも団長に一つ質問があるのですが。組頭への対応について、先ほどは無力化とかやっつけるなどのやわらげた表現が使われていましたが、実際にはほぼ相手を殺す事になります。特定個人を目標とした殺害計画、義勇団長として、それは容認できるのですか?」
それは困った問いだった。まだ、自分自身でも整理しきれていない。俺は考え考え言葉を出した。
「これは小さな村の戦いといっても、戦なのですから死者が出る事自体は当然なのでしょう。でもわたしは義勇団の団長という立場なのですから、一般論だけではすまされないとも思います。まだ、この世界について学んでいる状態なので確信をもっていう事は出来ないけれども、やはり死者が多くなるのは避けるべきだろうと思います」
俺は自分でもつたない表現力だなと思いながら、理由を述べた。
「そもそも死者が多くなるという事自体がよくないのが一つ、戦いが激化するのをさけたいという願いが一つ、巫女の皆さんに殺生してほしくないというのが一つ」
そして付け加えた。
「でもそのために逆に死者が増えるかもしれない。巫女さん方を危険な目に合わせるかもしれない。だから、実際どうするかは皆さんの判断に任せるしかありません。無責任ですみません」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる