51 / 54
第3章
14
しおりを挟む
「しばらく休んではいかがですか」
アリシアさんが心配する。
だが、俺はすぐに西へ行くと決断する。先ほどの体験は、これまでの人生で最大の危機だったはずなのだが、それで特に心がすくむというわけでもなく、やれるだけやろうという意欲で満ちていた。
犬たちも煙の影響が後を引いているわけではなく、すぐに元気を取り戻した。
俺たちは西へ向かった。
西の林の手前まで来ると、盗賊たちが探知範囲に入り始める。
その数は多かった。ガイさんの言ったように北からの人数を加え、さらに南からも引き上げ、西に集中させているらしく、50人近い人数が集まっていた。
その事をアリシアさんに告げ、ガイさんを介して村長にも伝えてもらう。
そしてどこまで進むべきかを少し考えた。
今だと盗賊たちの多くを探知できているとはいえ、少し後ろに下がられると探知できなくなる状態だ。それに、離れたところからの増援があったとしても、ほぼ到着するまでは知る事が出来ない。中途半端に前に出ると林の中の細い道で通行の邪魔になる。村内各所からの加勢はすでに移動を終えているが、怪我人の搬送はこの後も続くだろう。だとすれば林を抜けて、入り口に近い戦いの場のすぐ後ろまで行くべきなのだろうと思った。
アリシアさんに相談してみたが、意外な事に肯定的だった。
「後方にいても、一番脅威となる忍びの者の攻撃は、避けられませんからね」
だとすれば、近くに人が多い方が向こうはやりにくく、こちらにとってはガイさんの近くにいる方が安心できるという。
俺はガイさんにも連絡をとって、結局さらに前進する事にした。
林の中を進み西の開けた場所に出る。
その先では村と盗賊、双方が持てる戦力のほぼすべてを集中させた戦いが行われていた。垣を挟んで武器を持った者たちが戦っている。村長はその少し後ろに立ち、どこかが破られそうになると後ろに控えている三人一組の者たちに指示して駆けつけさせ、敵の突破を防ぐ。
傷を負った者がいる組は状況を見ながら交代させ、怪我人は応急手当てをして、さらに治療が必要な者はきららさんの所まで下がらせる。
余った者どうしはまた三人ずつ組ませて予備として後ろで控える。
ゴブリンは体格ではナランスに劣るが、常に三人で一人に当たらせるという策で、対抗できている。
垣の少し後方には矢防ぎの萱が立てられていて、怪我人の世話をする者、そしてガイさんとチカさんはそこにいた。
「敵か出方を変えるまではここで待機ですよ」
ガイさんはそう言う。村人だけでも今は十分に防ぎきれるという事だ。
「遠くから増援が来る様子はありませんか?
「何も」」
「ならば結構です」
だが、もちろん。敵は無策ではなかった。
敵の後方に弓を持ったものが並ぶと、合図の声とともに垣に攻めよせていた者たちが、引く。そしてさらに別の合図で一斉に矢が放たれた。
村長は敵が引くと同時にこちらに引くように命じていたので、矢は垣の周囲の地面に刺さり。双方けが人はない。
次の矢は垣をさらに遠く越えて矢防ぎの前までが攻撃範囲となる。村長は矢防ぎに隠れるよう指示の声を上げ、自分も駆け込む。何人か逃げ遅れて矢が刺さったが、幸い重傷ではないようだ。
そして三度目に矢が放たれた。それは何か燃える物を先端に付けた火矢だった。雨がまだ降っているのにもかかわらず、その火は消えずに矢は飛び、矢防ぎの萱に次々突き刺さっていく。
「燃えてるだ燃えてるだ」
誰か村人が叫んだ。
降り続く雨でびしょぬれになっている萱に矢から火が燃え移り、矢防ぎ全体に広がっていく。
アリシアさんが心配する。
だが、俺はすぐに西へ行くと決断する。先ほどの体験は、これまでの人生で最大の危機だったはずなのだが、それで特に心がすくむというわけでもなく、やれるだけやろうという意欲で満ちていた。
犬たちも煙の影響が後を引いているわけではなく、すぐに元気を取り戻した。
俺たちは西へ向かった。
西の林の手前まで来ると、盗賊たちが探知範囲に入り始める。
その数は多かった。ガイさんの言ったように北からの人数を加え、さらに南からも引き上げ、西に集中させているらしく、50人近い人数が集まっていた。
その事をアリシアさんに告げ、ガイさんを介して村長にも伝えてもらう。
そしてどこまで進むべきかを少し考えた。
今だと盗賊たちの多くを探知できているとはいえ、少し後ろに下がられると探知できなくなる状態だ。それに、離れたところからの増援があったとしても、ほぼ到着するまでは知る事が出来ない。中途半端に前に出ると林の中の細い道で通行の邪魔になる。村内各所からの加勢はすでに移動を終えているが、怪我人の搬送はこの後も続くだろう。だとすれば林を抜けて、入り口に近い戦いの場のすぐ後ろまで行くべきなのだろうと思った。
アリシアさんに相談してみたが、意外な事に肯定的だった。
「後方にいても、一番脅威となる忍びの者の攻撃は、避けられませんからね」
だとすれば、近くに人が多い方が向こうはやりにくく、こちらにとってはガイさんの近くにいる方が安心できるという。
俺はガイさんにも連絡をとって、結局さらに前進する事にした。
林の中を進み西の開けた場所に出る。
その先では村と盗賊、双方が持てる戦力のほぼすべてを集中させた戦いが行われていた。垣を挟んで武器を持った者たちが戦っている。村長はその少し後ろに立ち、どこかが破られそうになると後ろに控えている三人一組の者たちに指示して駆けつけさせ、敵の突破を防ぐ。
傷を負った者がいる組は状況を見ながら交代させ、怪我人は応急手当てをして、さらに治療が必要な者はきららさんの所まで下がらせる。
余った者どうしはまた三人ずつ組ませて予備として後ろで控える。
ゴブリンは体格ではナランスに劣るが、常に三人で一人に当たらせるという策で、対抗できている。
垣の少し後方には矢防ぎの萱が立てられていて、怪我人の世話をする者、そしてガイさんとチカさんはそこにいた。
「敵か出方を変えるまではここで待機ですよ」
ガイさんはそう言う。村人だけでも今は十分に防ぎきれるという事だ。
「遠くから増援が来る様子はありませんか?
「何も」」
「ならば結構です」
だが、もちろん。敵は無策ではなかった。
敵の後方に弓を持ったものが並ぶと、合図の声とともに垣に攻めよせていた者たちが、引く。そしてさらに別の合図で一斉に矢が放たれた。
村長は敵が引くと同時にこちらに引くように命じていたので、矢は垣の周囲の地面に刺さり。双方けが人はない。
次の矢は垣をさらに遠く越えて矢防ぎの前までが攻撃範囲となる。村長は矢防ぎに隠れるよう指示の声を上げ、自分も駆け込む。何人か逃げ遅れて矢が刺さったが、幸い重傷ではないようだ。
そして三度目に矢が放たれた。それは何か燃える物を先端に付けた火矢だった。雨がまだ降っているのにもかかわらず、その火は消えずに矢は飛び、矢防ぎの萱に次々突き刺さっていく。
「燃えてるだ燃えてるだ」
誰か村人が叫んだ。
降り続く雨でびしょぬれになっている萱に矢から火が燃え移り、矢防ぎ全体に広がっていく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜
昼寝部
ファンタジー
2XXX年、X月。
俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。
そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。
その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。
俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。
これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる