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06. ……作戦は?
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パーティのあとは馬車でリッフォン公爵の家に向かい、広い屋敷でバタバタと忙しく過ごした。
レザリンド侯爵が息子たち共々失脚した話はリッフォン公爵が教えてくれた。それならあたしの仕事は終わったし、海に帰ると言ったのだけど、
「君が『海に帰る』と言ったら『まだ終わってないぞ』と伝えてほしいと、兄さんから頼まれてるんだよねえ」
と公爵が困り顔で答えた。
終わってないということは、あたしにはまだ仕事があるんだろう。
でも何の指示も受けることなく、時間ばかりが過ぎていく。ブレイクも父さんも忙しいらしくて姿を見せてくれない。
当然のような顔で公爵家の屋敷にやってきた母さんと白いドレスを選んで、「あれ?」と思っているうちに結婚式も披露パーティも終わってしまった。
結婚式で久々に会ったブレイクにも父さんにも次の仕事は何かを聞きたかったけど、「ひととおり終わるまでは令嬢の演技をしっかりね」って母さんに言い聞かせられていたから我慢した。
親族用の控室に戻り、部外者がいなくなってからようやく、
「……婚約は作戦って言ったよな?」
そう尋ねるとブレイクは不思議そうな顔で首を傾げた。
「言ったけど?」
「この結婚式も何かの作戦なんだよな? あたしの次の仕事は?」
「いや、今のは普通の結婚式だよ。何なら君に伝えた作戦の本当の目的はこの結婚だったよ。元侯爵を追い落とすだけなら君抜きでもやれたしね」
「えっ」
「幸せな家庭を築こうね。子供は何人欲しい?」
「は!?」
どういうこと!?
「父さん、『まだ終わってないぞ』っていうあの伝言は!?」
「まだ結婚式も終わってないぞって意味だな。それがどうした?」
父さんも不思議そうな顔をしている。
口をパクパクさせていたら、父さんが腰に手を当てた。
「だっておまえ、スカーフの君がブレイクだって聞かされた上で、今のブレイクでもいいって言ったんだろ?」
「言ってない!」
「……ん?」
目を丸くした父さんがブレイクを見る。あたしと父さんの視線を受けたブレイクは、いい笑顔で平然と答えた。
「僕はちゃんと事実だけをかいつまんでお伝えしましたよ。あとはまあ、解釈の差じゃないですかね」
「おめーなあ……」
呆れた顔になった父さんが腕を組んでううんとうなる。
でも考えてくれているように見えるだけで、こういう時の父さんが出す結論はだいたい決まってる。
「ま、いーんじゃね。結婚しとけ」
やっぱり面倒になって投げた!
助けを求めて母さんを見たけれど、母さんはいつもどおりのふわふわした笑顔で両手の平を合わせる。
「大丈夫よ。シアちゃんはよくブレイクくんの文句を言っていたけれど、スカーフをくれた男の子よりブレイクくんを好きになるのが怖かっただけよ。同一人物だってわかったんだから、あとは素直になればいいわ」
「違う!」
あたしが抗議の声を上げても、父さんは「母さんが言うなら間違いねーな」と大口を開けて笑った。
「シアが『スカーフをくれた男の子に会いたい』『結婚したい』って泣きわめいてから十年以上だもんなあ。俺ら頑張ったよなあ」
「そうねえ。シアちゃんの言う男の子がブレイクくんだって特定して、ご両親に連絡をとって、礼儀作法やダンスを教えて、当時のレザリンド家じゃお嫁にはやれなかったからブレイクくんに協力して……長かったわねえ」
そんな昔の話を持ち出さないでほしい。
っていうか、スカーフをくれた男の子を見つけた時点で教えてくれればいいのに。
口を尖らせていたら、
「だってシアちゃん、スカーフの君を見つけたって教えたら、後先考えずに飛び出していきそうなんだもの。サプライズで再会させたら喧嘩して帰ってくるし、母さんたちだって困ったのよ。スカーフの代わりを提案されたって怒ってたけど、そりゃああんなにボロボロなんだもの。贈った側としては別のものを贈り直したくもなるわよ」
と母さんに言われて反論できなかった。
「あ、あの……本人が納得していないのに婚姻を進めるのはいかがなものかと思うのですが……」
それまで黙っていたブレイクのお父さんがおずおずと手を挙げる。
気弱そうに見えたから期待していなかったけど、ナイス!
リッフォン公爵も眉尻を下げる。
「そうだよ、兄さん、義姉さん。私も、シアちゃんは意地っ張りなだけでブレイクくんのことが好きだって聞いたから、可愛い姪っ子のためだと思って協力したんだよ。話が違うじゃないか」
「礼儀作法が身についているとはいえ、いきなり侯爵夫人というのも大変でしょうし、あまり無理は……」
「ん? 侯爵夫人って何の話?」
ブレイクに顔を向けると、とてもいい笑顔でウインクを返された。
「元レザリンド侯爵と領地経営の要職に就いていた侯爵の息子たちは、違法な取引を繰り返して私財を貯めていたことが明るみになって国外追放されたんだ。空いた侯爵の席は分家から埋めることになって、僕が継いだの」
「全部ブレイクの筋書きどおり?」
「もちろん。君が嫁いできても問題ないように、全部片付けておいたから心配しないで。ふふ、悪巧みが得意だなあと自分でも思うよ。でも」
ブレイクがあたしの手をとって手の甲に口づける。途端に顔が火照り、一歩後ずさったけれど、ブレイクが追ってきた。
「誰より真っ直ぐな君が傍にいてくれたなら、僕はきっと道を踏み外さずにいられると思うんだ。ずっと隣で支えてくれないかい?」
その言い方はずるい。
なんだかこのままブレイクと結婚しなきゃいけない気がしてくるじゃないか。
「ブレイク、領民を人質にとるような言い方はおよしなさい。ごめんなさいね、ルティシアさん。この子の言うことは気にしなくていいですよ」
すかさずブレイクのお母さんがブレイクの袖を引いた。
でも困り顔のブレイクの両親やリッフォン公爵と違って、父さんと母さんはにこにこしている。
「あら、大丈夫ですよ。シアちゃんはブレイクくんが本当に嫌だったら、手を握られた時点でひっぱたいていますから。ね、シアちゃん。他の人に同じことをされたらどう思う?」
「え……」
母さんに水を向けられ、他の誰か――知らない男に、手にキスをされたり髪を触られたりしたらって想像してみる。
ゾワッと鳥肌が立った。
確かにそんなことをされたら、あたしは相手をひっぱたくかもしれない。
でもブレイクに触れられたときは、いつも血が沸騰するような感覚に襲われて、心臓がうるさくなる。
それが嫌かと問われれば――嫌だと断言できない自分がいて。
……え、待って、つまり、母さんの言うとおりなんだろうか?
おそるおそるブレイクを見上げると、ブレイクはふっと笑う。知ってたって言われた気がした。
ぶわっと体中の血液が顔に集まる。文句を言ってやりたいのに、唇が震えてうまく動かせない。
今の僕は嫌かって聞いてきたのは何だったんだ。あたしの回答なんかわかってたってこと?
「ああシア、君は本当に可愛いね。もう一度結婚式をしようか?」
あたしの手を握って、楽しげなブレイクが顔を寄せてくる。父さんが「おーい、いちゃつく気なら俺らはそろそろ帰るぞー」と頭をかいた。
母さんもにこにこ顔で、ブレイクのお母さんに近づいていく。
「折角ですし、一緒にお茶でも飲みませんか? やっと子どもたちが片付いたんですもの、もっとゆっくりお話したいわ」
「え、ええ、でもあの子たちは……」
「馬車一台と使用人を数名置いていきましょう。二人とも、暗くなる前に屋敷に帰るんだよ」
「……そうですね。安心したら疲れました。濃いハーブティーでも飲みたい気分です」
「俺はどうせ飲むなら酒がいいな。あいつらが甘ったるくて胸焼けしそうだぜ」
「兄さん、お酒は披露宴で十分飲んだでしょう」
「じゃあシアちゃん、母さんたちは海に帰るけど、また会いにくるわね」
あたしとブレイク以外の全員が連れ立って控室を出ていく。ちょっと待って、というあたしの声は誰にも聞いてもらえなかった。
父さんが振り返りもせずに扉を閉め、控室の中は急に静かになる。
「シア、キスしていい?」
「へっ!? だめ!」
「どうして? 結婚式で誓いのキスはすませたじゃないか」
「あれは演技だと思ってたからノーカンだよ! その、……ほら、えっと、心の準備とか……」
しどろもどろになったあたしの腰に、ブレイクが手を回してくる。逃げるどころか体を寄せられ、しばらく抵抗したけど結局、あたしの口はブレイクに塞がれたのだった。
(終)
***
読んでいただきありがとうございました。面白いと思っていただけましたら、ブックマークや感想など、何らかの反応を頂けると次も頑張れますっ(*´▽`*)
小説家になろう内で開催された自主企画、宮之みやこ様の『腹黒恋愛短編企画』参加作品です。他の方の作品も面白かったので、興味があればぜひ!
参加作品一覧:https://twitter.com/miyako_miyano/status/1514908665056137219?s=20&t=33nDxt2AuP3ubvgzerfvtw
レザリンド侯爵が息子たち共々失脚した話はリッフォン公爵が教えてくれた。それならあたしの仕事は終わったし、海に帰ると言ったのだけど、
「君が『海に帰る』と言ったら『まだ終わってないぞ』と伝えてほしいと、兄さんから頼まれてるんだよねえ」
と公爵が困り顔で答えた。
終わってないということは、あたしにはまだ仕事があるんだろう。
でも何の指示も受けることなく、時間ばかりが過ぎていく。ブレイクも父さんも忙しいらしくて姿を見せてくれない。
当然のような顔で公爵家の屋敷にやってきた母さんと白いドレスを選んで、「あれ?」と思っているうちに結婚式も披露パーティも終わってしまった。
結婚式で久々に会ったブレイクにも父さんにも次の仕事は何かを聞きたかったけど、「ひととおり終わるまでは令嬢の演技をしっかりね」って母さんに言い聞かせられていたから我慢した。
親族用の控室に戻り、部外者がいなくなってからようやく、
「……婚約は作戦って言ったよな?」
そう尋ねるとブレイクは不思議そうな顔で首を傾げた。
「言ったけど?」
「この結婚式も何かの作戦なんだよな? あたしの次の仕事は?」
「いや、今のは普通の結婚式だよ。何なら君に伝えた作戦の本当の目的はこの結婚だったよ。元侯爵を追い落とすだけなら君抜きでもやれたしね」
「えっ」
「幸せな家庭を築こうね。子供は何人欲しい?」
「は!?」
どういうこと!?
「父さん、『まだ終わってないぞ』っていうあの伝言は!?」
「まだ結婚式も終わってないぞって意味だな。それがどうした?」
父さんも不思議そうな顔をしている。
口をパクパクさせていたら、父さんが腰に手を当てた。
「だっておまえ、スカーフの君がブレイクだって聞かされた上で、今のブレイクでもいいって言ったんだろ?」
「言ってない!」
「……ん?」
目を丸くした父さんがブレイクを見る。あたしと父さんの視線を受けたブレイクは、いい笑顔で平然と答えた。
「僕はちゃんと事実だけをかいつまんでお伝えしましたよ。あとはまあ、解釈の差じゃないですかね」
「おめーなあ……」
呆れた顔になった父さんが腕を組んでううんとうなる。
でも考えてくれているように見えるだけで、こういう時の父さんが出す結論はだいたい決まってる。
「ま、いーんじゃね。結婚しとけ」
やっぱり面倒になって投げた!
助けを求めて母さんを見たけれど、母さんはいつもどおりのふわふわした笑顔で両手の平を合わせる。
「大丈夫よ。シアちゃんはよくブレイクくんの文句を言っていたけれど、スカーフをくれた男の子よりブレイクくんを好きになるのが怖かっただけよ。同一人物だってわかったんだから、あとは素直になればいいわ」
「違う!」
あたしが抗議の声を上げても、父さんは「母さんが言うなら間違いねーな」と大口を開けて笑った。
「シアが『スカーフをくれた男の子に会いたい』『結婚したい』って泣きわめいてから十年以上だもんなあ。俺ら頑張ったよなあ」
「そうねえ。シアちゃんの言う男の子がブレイクくんだって特定して、ご両親に連絡をとって、礼儀作法やダンスを教えて、当時のレザリンド家じゃお嫁にはやれなかったからブレイクくんに協力して……長かったわねえ」
そんな昔の話を持ち出さないでほしい。
っていうか、スカーフをくれた男の子を見つけた時点で教えてくれればいいのに。
口を尖らせていたら、
「だってシアちゃん、スカーフの君を見つけたって教えたら、後先考えずに飛び出していきそうなんだもの。サプライズで再会させたら喧嘩して帰ってくるし、母さんたちだって困ったのよ。スカーフの代わりを提案されたって怒ってたけど、そりゃああんなにボロボロなんだもの。贈った側としては別のものを贈り直したくもなるわよ」
と母さんに言われて反論できなかった。
「あ、あの……本人が納得していないのに婚姻を進めるのはいかがなものかと思うのですが……」
それまで黙っていたブレイクのお父さんがおずおずと手を挙げる。
気弱そうに見えたから期待していなかったけど、ナイス!
リッフォン公爵も眉尻を下げる。
「そうだよ、兄さん、義姉さん。私も、シアちゃんは意地っ張りなだけでブレイクくんのことが好きだって聞いたから、可愛い姪っ子のためだと思って協力したんだよ。話が違うじゃないか」
「礼儀作法が身についているとはいえ、いきなり侯爵夫人というのも大変でしょうし、あまり無理は……」
「ん? 侯爵夫人って何の話?」
ブレイクに顔を向けると、とてもいい笑顔でウインクを返された。
「元レザリンド侯爵と領地経営の要職に就いていた侯爵の息子たちは、違法な取引を繰り返して私財を貯めていたことが明るみになって国外追放されたんだ。空いた侯爵の席は分家から埋めることになって、僕が継いだの」
「全部ブレイクの筋書きどおり?」
「もちろん。君が嫁いできても問題ないように、全部片付けておいたから心配しないで。ふふ、悪巧みが得意だなあと自分でも思うよ。でも」
ブレイクがあたしの手をとって手の甲に口づける。途端に顔が火照り、一歩後ずさったけれど、ブレイクが追ってきた。
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その言い方はずるい。
なんだかこのままブレイクと結婚しなきゃいけない気がしてくるじゃないか。
「ブレイク、領民を人質にとるような言い方はおよしなさい。ごめんなさいね、ルティシアさん。この子の言うことは気にしなくていいですよ」
すかさずブレイクのお母さんがブレイクの袖を引いた。
でも困り顔のブレイクの両親やリッフォン公爵と違って、父さんと母さんはにこにこしている。
「あら、大丈夫ですよ。シアちゃんはブレイクくんが本当に嫌だったら、手を握られた時点でひっぱたいていますから。ね、シアちゃん。他の人に同じことをされたらどう思う?」
「え……」
母さんに水を向けられ、他の誰か――知らない男に、手にキスをされたり髪を触られたりしたらって想像してみる。
ゾワッと鳥肌が立った。
確かにそんなことをされたら、あたしは相手をひっぱたくかもしれない。
でもブレイクに触れられたときは、いつも血が沸騰するような感覚に襲われて、心臓がうるさくなる。
それが嫌かと問われれば――嫌だと断言できない自分がいて。
……え、待って、つまり、母さんの言うとおりなんだろうか?
おそるおそるブレイクを見上げると、ブレイクはふっと笑う。知ってたって言われた気がした。
ぶわっと体中の血液が顔に集まる。文句を言ってやりたいのに、唇が震えてうまく動かせない。
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「ああシア、君は本当に可愛いね。もう一度結婚式をしようか?」
あたしの手を握って、楽しげなブレイクが顔を寄せてくる。父さんが「おーい、いちゃつく気なら俺らはそろそろ帰るぞー」と頭をかいた。
母さんもにこにこ顔で、ブレイクのお母さんに近づいていく。
「折角ですし、一緒にお茶でも飲みませんか? やっと子どもたちが片付いたんですもの、もっとゆっくりお話したいわ」
「え、ええ、でもあの子たちは……」
「馬車一台と使用人を数名置いていきましょう。二人とも、暗くなる前に屋敷に帰るんだよ」
「……そうですね。安心したら疲れました。濃いハーブティーでも飲みたい気分です」
「俺はどうせ飲むなら酒がいいな。あいつらが甘ったるくて胸焼けしそうだぜ」
「兄さん、お酒は披露宴で十分飲んだでしょう」
「じゃあシアちゃん、母さんたちは海に帰るけど、また会いにくるわね」
あたしとブレイク以外の全員が連れ立って控室を出ていく。ちょっと待って、というあたしの声は誰にも聞いてもらえなかった。
父さんが振り返りもせずに扉を閉め、控室の中は急に静かになる。
「シア、キスしていい?」
「へっ!? だめ!」
「どうして? 結婚式で誓いのキスはすませたじゃないか」
「あれは演技だと思ってたからノーカンだよ! その、……ほら、えっと、心の準備とか……」
しどろもどろになったあたしの腰に、ブレイクが手を回してくる。逃げるどころか体を寄せられ、しばらく抵抗したけど結局、あたしの口はブレイクに塞がれたのだった。
(終)
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