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世界一綺麗なクリスマスプレゼント
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最悪だ。
こんな会社、隕石に潰されてしまえ。
そんな悪態を胸の中で呟きながら、私は駆け足で会社を飛び出した。ヒールだからそんなことをしたら足を痛めるとか、特に今日はピンヒールだから折ってしまいそうとか、そんなことを気にしている余裕はない。メイクも髪も崩れてしっているが、直す余裕もなかった。きっと待ち合わせ場所に着いたら今より酷くなっているだろう。
だって彼との約束の時間3時間も過ぎてしまっているのだ!
吐く息は白いが、厚手のコートは暑くて邪魔だった。ただ、今は脱ぐ時間も惜しい。
「ああっ、もう」
赤信号に足止めされた。
何度時計をみても時間は元に戻らず、前に進むだけである。正確に、1分、1秒を刻んで。
こんな寒空の下、彼は律儀に待ち合わせ場所で私を待っているのだろう。スマホをポケットから取り出すとメールが1件入っていた。
彼からだった。
「俺は大丈夫。あんまり慌てると転ぶから、気をつけてねみ」
仕事用の紺色のカバンの紐をぎゅっと握り直す。それから鏡を出して前髪の乱れを軽くなおして、手早く口紅を塗り直す。
通りの向こう側に見えるのはビルの4階くらいまでの高さのある大きなクリスマスツリー。あの下に彼はいるはずだ。
人の波をかき分けて、ツリーの下を目指す。
「おーい!」
ツリーの下で子どものようにぶんぶん手を振っている人がいる。
彼だ。
「おーい!」
私も負けじと手を振り返す。
シャンパンゴールドの電飾で飾られたけやき並木は、冷たい風に吹かれているのに幸せそうに笑っている。石畳の上でヒールが弾んだ音を立てる。
クリスマスツリーはあたたかいオレンジ色に輝いている。まるで暖炉の炎のよう。まるで彼の笑顔のよう。
彼の腕が私の体を抱きとめる。温もりが体の中からも外からも私の事を包み込む。彼の瞳の中に私の顔がイルミネーションのあかりと共に映り込む。
「ディナー、行けなくなっちゃったの、ごめんね」
「忙しかったから仕方ないよ。ディナーくらい、また今度行けばいいだけだよ」
「でも……」
その先は言えなかった。彼の唇が私の口を塞いだからだ。
「いいの。こうやって会えたからね」
「これ、大したものじゃないんだけど……」
紙袋の中から赤と緑のリボンでラッピングした袋を取り出す。本当はもっとしっかり選びたかったのだけれど、という言葉は胸の中にしまっておく。
「クリスマスプレゼント!」
彼はクリスマスの朝に靴下からプレゼントを取り出す子どもみたいに、目をきらきらさせて袋を受け取った。
「開けていい?」
私が頷くと、ゆっくりと袋を開けて中から深緑色のネクタイを取り出した。
「凄い!俺が好きな色だ!」
それから彼もカバンから袋を取り出した。可愛らしいピンクと水色のリボンが付いた、白くて小さな紙袋だ。その紙袋に印字されているブランド名には聞き覚えがある。確かすこしハイブランドなジュエリーショップの名前だ。
「これ、俺からのプレゼント」
「開けていい?」
中から出てきたのは
こんな会社、隕石に潰されてしまえ。
そんな悪態を胸の中で呟きながら、私は駆け足で会社を飛び出した。ヒールだからそんなことをしたら足を痛めるとか、特に今日はピンヒールだから折ってしまいそうとか、そんなことを気にしている余裕はない。メイクも髪も崩れてしっているが、直す余裕もなかった。きっと待ち合わせ場所に着いたら今より酷くなっているだろう。
だって彼との約束の時間3時間も過ぎてしまっているのだ!
吐く息は白いが、厚手のコートは暑くて邪魔だった。ただ、今は脱ぐ時間も惜しい。
「ああっ、もう」
赤信号に足止めされた。
何度時計をみても時間は元に戻らず、前に進むだけである。正確に、1分、1秒を刻んで。
こんな寒空の下、彼は律儀に待ち合わせ場所で私を待っているのだろう。スマホをポケットから取り出すとメールが1件入っていた。
彼からだった。
「俺は大丈夫。あんまり慌てると転ぶから、気をつけてねみ」
仕事用の紺色のカバンの紐をぎゅっと握り直す。それから鏡を出して前髪の乱れを軽くなおして、手早く口紅を塗り直す。
通りの向こう側に見えるのはビルの4階くらいまでの高さのある大きなクリスマスツリー。あの下に彼はいるはずだ。
人の波をかき分けて、ツリーの下を目指す。
「おーい!」
ツリーの下で子どものようにぶんぶん手を振っている人がいる。
彼だ。
「おーい!」
私も負けじと手を振り返す。
シャンパンゴールドの電飾で飾られたけやき並木は、冷たい風に吹かれているのに幸せそうに笑っている。石畳の上でヒールが弾んだ音を立てる。
クリスマスツリーはあたたかいオレンジ色に輝いている。まるで暖炉の炎のよう。まるで彼の笑顔のよう。
彼の腕が私の体を抱きとめる。温もりが体の中からも外からも私の事を包み込む。彼の瞳の中に私の顔がイルミネーションのあかりと共に映り込む。
「ディナー、行けなくなっちゃったの、ごめんね」
「忙しかったから仕方ないよ。ディナーくらい、また今度行けばいいだけだよ」
「でも……」
その先は言えなかった。彼の唇が私の口を塞いだからだ。
「いいの。こうやって会えたからね」
「これ、大したものじゃないんだけど……」
紙袋の中から赤と緑のリボンでラッピングした袋を取り出す。本当はもっとしっかり選びたかったのだけれど、という言葉は胸の中にしまっておく。
「クリスマスプレゼント!」
彼はクリスマスの朝に靴下からプレゼントを取り出す子どもみたいに、目をきらきらさせて袋を受け取った。
「開けていい?」
私が頷くと、ゆっくりと袋を開けて中から深緑色のネクタイを取り出した。
「凄い!俺が好きな色だ!」
それから彼もカバンから袋を取り出した。可愛らしいピンクと水色のリボンが付いた、白くて小さな紙袋だ。その紙袋に印字されているブランド名には聞き覚えがある。確かすこしハイブランドなジュエリーショップの名前だ。
「これ、俺からのプレゼント」
「開けていい?」
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