彼女は世界を抱いている

三塚 章

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彼女は世界を抱いている4

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 それから、俺は廃ビルに通う回数を減らしてまで、若葉が殺された地下道にいくようにした。しかも彼女が殺された時に着ていた深緑の半袖にジーンズという格好で。
 この格好は若葉から聞いたもので、まだネットにも流れていない。その服をきて、地下道にたたずんでいる様子は、犯人がみれば「お前が犯した罪を全部知っているぞ」というメッセージになるだろう。
 どうでもいいけど、若葉がボーイッシュな服装がスキでよかった。これがフリルのついたワンピースとかだったらまた作戦を練りなおさなければならない所だった。
 地下道というと駅や学校近くの大きな通りに作られている事が多いのかも知れない。けれどこの地下道は、山がちな地形の地元で、小さな丘を抜けるために掘られたものだ。地下道というよりトンネルと言った方が正確なのかもしれない。
近くにあまり地元住民が利用する建物もないため人通りはいつも少なく、虚ろな穴が開いているだけだった。何をするわけでもなく、しばらくたたずんでは帰る。そんな事を繰り返していたある日。
「あの……」
 冴えない中年の男が話しかけてきた。
 汗じみのついた、くたびれたポロシャツに、スネまでのズボンをはいている。ぼさぼさの髪は金色に染められていた。なぜか夏にふさわしくない、ごついブーツを履いている。
暑くないのだろうか。
「最近、ここでよく見かけますが、何をしてるんですか?」
 こいつが犯人か? それとも純粋に不審者に声をかけただけか。
「いえ、実は面白い話を聞いたんですよ。ここに女の子の幽霊がでるって」
「へえ」
 男はあきらかにこっちをうかがっているようだった。
「だから、ここではりこんでいれば見られるんじゃないかと」
 男は何もいわずくっくっと笑った。
「なんでもほら、この間バラバラ死体の足が見つかったでしょう。その被害者の幽霊だそうですよ」
 その時、男の右眉が動いたような気がしたが、それにどんな意味があるのかまだ俺には分からなかった。
「ああ、あの子の? まだ若いのにかわいそうだよなあ」
「ええ、殺されてバラバラにされるなんて。実は、少し犯人像をプロファイリングしてみたんです」
 俺は冗談めかしていった。
「犯人は男。たぶんあなたと同じくらいの年令。きっと、若いときから相当女にもてなかったんでしょうね。それで色々とこじらせちゃって、女性全体を逆恨みするようになった。哀れな奴」
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