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階層ゲーム
12 優越感
しおりを挟む重なったプリントを受け取り、2枚手に取って残りを自分の後ろに座る女子高生に渡そうとした。
だが、シートベルトを着用しているという理由と、椅子の背もたれが高いかつ横幅が広くて非常に渡しづらい。
それに、後ろの女子高生は先程まで一緒にいた友達と放され不機嫌な様子である。そんなこともあって、積極的にプリントを受け取ろうとしない。
わざわざシートベルトを外し、立って渡しに行くのも自らの自尊心が許さず、年下にそこまでする必要はないと思い必死で手を伸ばした。
手がつりそうになり小刻みに震える。それを見兼ねたのか女子高生は受け取る動作を見せた。
その瞬間、桜の花びらが散るかの如くプリントが宙を舞った。いや、今手に当たっただろうなぜ掴まないと憤りを覚えた。自分はできる限り手を伸ばしたつもりだ。散らばったプリントを拾う義理はない。適当にあしらうからそうなるのだと無視をした。
その瞬間あからさまに舌打ちをされ、自分の座席を強く蹴られた。
なんて生意気なガキだ。だんだん腹立たしくなってくる。
バレぬよう様子を伺うと眉間にシワを寄せながらプリントを拾っている。その様子は愉快であった。
茶髪に目元には濃いメイクをしている。それに、スカートはこれでもかと丈を短くし、見るからにつっぱっている。小声で応援しながら、全部拾い終わるまで見届けていると、思わぬことが起きた。
「ガタ、ガラ」
スカートのポケットからスマホが飛び出しバスの床に落ちたのだ。申請の時から何度も念入りに言われていることがある。それは、私物の持ち込み禁止だ。
特にスマホだけは絶対にダメだと言っていた。見つかった時点で、その場で退場もしくはもっと酷いことがあるかもしれませんよなどと冗談か本気か分からぬ口調で従業員の男が話していた。
これは使えるかもしれない。突然頭の中に悪知恵が働き行動に移す。
瞬時に後ろを振り向いた。そこには、肝を冷やし目を見開く女子高生。さっきまでとは一変した間抜けヅラに向かって、落ちているスマホと女子高生の目を交互に見ながらニヤリと笑った。
その瞬間、女子高生は何度も頭を下げてニッコリと引きつった笑顔を見せた。しかし、自分は止めることなくスマホを指差して、ハズガイドの方を見た。女子高生の顔が青白くなり、目を見開いて何度も首を振る。自分は優位な立場にいることへの優越感を噛み締めた。
「功治さん?」
先程から後ろばかり見ている自分を不審に感じたのだろう、巫さんは心配そうに自分を呼んだ。
自分は女子高生にウインクをして前を向いた。これで女子高生が、秘密を握られた自分に逆らうこともなければ、自分がまずい状況に陥った時利用できるかもしれない。
「すいません、巫さん、なんだかこの椅子おかしくて」
「そうなんですか!座り心地が悪いのですか?」
「まぁそんな感じです。でも我慢できる感じです。」
さっきの余韻が顔に現れ、自分で何を言ってるのか分からずいきなり笑い出してしまった。
すると巫さんもつられて笑い出し、何かを企む怪しき者のように周囲から見られる。
まずい、止めようと思うほど笑いが込み上げてくる。心を整えて呼吸に集中する。
「じゃ、自己紹介しますか?」
「そうですね!」
二人はニヤつき顔で顔を見合わせた。
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