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海豹

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階層ゲーム

19 フードの男

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「あの男何考えてるんだ。」
「本当に、やる気がないなら帰って欲しいわ」
女子高生のペアであるフードを被った男は、後方の座席でまたもや下を向き爆睡している。
しかし、一つ不審な点があった。
明らかに寸法がおかしいガバガバな服を着ており、ずっと手をポケットに入れている。
それに加え、少し腹部が膨らんでいるように見えた。
 「終了」
「五分経過いたしましたので、第三回戦はこれより終了といたします。」
瞬く間に時間は過ぎ、第三回戦が終わった。
今のところ計画は順調に進んでおり、女子高生は、自分の忠告通り行動している。
周りからはフェアじゃないと嫌悪の目を向けられているが、それも承知の上だ。
そして、今から最終決戦を迎えようとしている。
「どうやらもう最後の決戦らしいな」
「そうね、」
「自分のペアと君のペアは一度対戦済みだから、対戦相手の問題を両ペアで解くことになる。」
「自分が瞬時に解き、君に答えを教える。」
「君は引き分けにできるよう、タイミングを合わせることだけ考えてくれ」
「分かったわ」

「これより決勝戦を始めます」
「No.19、No.20、No.8の3ペアは準備をしてください。」
対戦ペアは、身長190センチほどで体格がよく、髭を生やした中年の男と、身長175センチほどでスタイルがよく、前髪で目を隠した二十歳くらいの女だ。
どちらも、ロングコートで身を包んでいる。
見れば分かる明らかにただ者じゃない。
「どうぞよろしく」
低い声で挨拶をしてくる大男。隣の長身女は口元を緩めている。
「一つ聞きたいことがある。」
「君、名前は?」
それにしても、声が低いな。
この大男の声を聞くと、耳の鼓膜が振動するような感覚になる。
隣の女子高生は、補助席でまじまじと長身女の前髪を眺めている。
「田中健斗です。」
女子高生の眉が少し動いたが、空気を読んで黙っている。
「そうか、田中くん」
「私は馬場だ」
「ここまで来たということは相当な実力の持ち主だろう。」
「君の力を見せてくれ」
髭を撫でながら自分を見つめてくる大男。隣の巫さんの様子がおかしい。
さっきまでとは違い、少し不穏な表情を浮かべ、足を小刻みに動かしている。
「それでは、決勝戦スタートです。」
自分は、大男と長身女が作った問題に目を通した。
〈ペア番号8〉
:問題:

①ほうこう①女の横で
②トレ②抱えて
①って③を④つめる
ばく②①しょうね③
⑤ば⑤ばな服に隠した
⑤②ま②く被って
ぼた③をおす

①~⑤に入る文字は?

②①④③⑤②放出

:問題終了:

なんだこれは、、
まずい、後方の座席へと全力で走る。
どこに行った?
遅れて巫さんがこっちに向かってきた。
必死でバス車内を動き回る。
どこにもいない。
乗客全員が自分の方を見て呆然としている。
どこにもいない。
なら、選択肢は一つしかないと考え叫ぶ。
「巫さん!」
「トイレだ!」
「一番後ろのトイレを確認してくれ!」
「分かりました、」
トイレのドアがロックされており中々開かない。
「功治くん、私の力じゃ無理です」
流石に巫さんの並外れた腕力でも、金属でできた扉は外すことが出来なかったらしい。
「くそ、まずい」
腕に力を込めて、トイレに近づく。
その瞬間各座席の下から煙のようなものが吹き出し、バス車内に広がっていく。
立方体によって得た、凄まじい力で扉を捻じ曲げ引き剥がすと、中には女子高生のペアであり、隣に座っていたフードの男がガスマスクをして怯えていた。
そして、手にはボタンのような機械を握っている。
まずい、手遅れだったか。
バス前方に目をやると、さっきの大男と長身女がガスマスクを着けてこっちを眺めている。
「皆、息を止めろ!」
ガスで視界が悪くなり、バス車内がよく見えない。
まずい今すぐ窓を割らないと。
窓に近づこうとした瞬間、大男が現れ腹部を強く蹴られた。
意識が遠のく。
ものすごい眠気が襲い、朦朧とする。
足が上手く動かずその場に倒れ込む。
呼吸すればするほど体の感覚がなくなっていくのが分かる。
「巫さ、ん、、」
体の感覚はほとんどなくなり、僅かな時間、聴覚だけが微かに残っていた。
「正解だ!」
低い声が聞こえる。あの大男の声に違いない。
「そう、お前の考えた通りだ。」
「答えは、すいみんがす放出」
「流石だな、あそこまで早いとは思わなかった。」
「最終決戦まで来るだけの実力はあったようだ。」
「それにしても、なんて怪力野郎だ、トイレのドアを捻じ曲げやがった。」
低い声で大きく笑う大男。
「まぁいい、」
「よし、お前ら一人ずつ運べ」















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