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階層
20 階層
しおりを挟むゆっくりと目を開ける。
どうやら、意識を失っていたようだ。
頭痛が酷い。
立方体の効果は切れたらしく、視界が曇り、頭が冴えない。
それに加えて、もの凄い筋肉疲労を感じる。
どうやら、能力解放の副作用が現れているようだ。
ここはどこだ?
辺りを見回すと、そこは鉄筋コンクリートで囲われた学校の教室ほどの部屋の中。
左上の壁が大きく92と彫られている。
それに、中央には大きな柱のコンクリートがあり、ベットと手洗いだけが備わっていた。
そして、自分以外に三人の男と二人の女が全身白い服を着て寝ている。
何があったか思い出せない。
そういえば、巫さんはどこに行った。
ベットに横たわった人を確認しに行く。
だが、そこには見知らぬ顔が並んでいた。
確か自分は、階層ゲーム本会場に向かう途中のバスで、意識を失ったような。
駄目だ頭が回らない。
冷たいコンクリートの壁に背中をつけ座り込む。
この部屋は、窓も無ければ扉もない。
どうやって自分たちが中に入れたのか不思議で仕方ない。
そう考えていると、部屋の隅にゴミ袋のようなものを見つけた。
「なんだ、あれは」
恐る恐るゴミ袋に近づく。
硬い結び目に苦戦しながら少しずつ開封していく。
ようやく結び目が解け、慎重に中を覗く。
どうやら、そこには懐中時計、タバコ、ターボライター、本が数冊にノートやペンなど様々なものが入っていた。
袋の口を下に向け、中の物を全て取り出した。中の物を勝手に物色していると、見覚えのあるものが出てきた。
〈天使の牢獄〉
これは、自分が階層ゲームに参加する前、書店で購入した本だ。
まさかと思い散らかした物を掻き分けると、下の方からサバイバルナイフが姿を見せた。
やはり、この二つは自分が階層ゲームに持ち込んだ物だ。
ということは、ここが階層ゲーム本会場なのか?
しかし、階層ゲームの従業員は6時間半かけて会場に向かうと言っていた。
なら、なぜ自分はバスの中で意識を失ったんだ。思い出せない。
この人達も、自分と同じ境遇なのだろうか。いくつもの謎が脳を駆け巡る。
「あの、すいません」
近くで寝ている白髪の老人に話しかけた。
一向に起きる気配が無い。
「あの!すいません」
さっきよりも声を張り上げ何度も肩を揺らす。
ひょっとして、この人達は死んでるかもしれないと不安になり老人の首に手を触れる。
安心した。正常に脈は動いている。
どうやら皆眠っているようだ。
本とナイフを手に自分が目を覚ましたベットへと戻り放心状態になった。
それから数分間、脳内で覚えている範囲の過去を遡って熟考した。
それによって、女子高生とペアを組み推理対戦をしていたということまでは微かに思い出すことが出来た。
そう一人で物思いに耽ていると、部屋の中央から凄い音がした。
「ガガガ、ガガガ」
金属が擦り合わさるような音がする。
そして、中央に備わっていたコンクリートの柱が上がり始め、金属の箱のようなものが降りてきた。
黒板を引っ掻いたような高い音が響き、金属の箱が動きを止めた。
よく見るとエレベーターのようにも見える。
一瞬静寂が流れたが、すぐさま金属音が響き、エレベーターらしき物の扉が徐々に開いていく。
そして、中から長身で体格の良い大男と長身で前髪の長い女を先頭に5人の男女が、戦闘服にGBRと書かれた帽子を被って降りてきた。
混乱しながら、先頭に立っている女の長い前髪に目がいく。
その瞬間、脳が目覚めたかのように、ここに来るまでの出来事を思い出す。
そういえば、この大男と長身女が自分達を眠らせ拉致したのだと気づき怒りを覚えた。
警戒して、握っていたナイフに力を込める。
すると聞き慣れた声が聞こえた。
「やあ、佐海くん」
「喫茶店ぶりだね!」
そして、大男の背後から戦闘服にロングコートを身に纏った女性が姿を見せた。
「え、」
「宮木さん?」
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