自分観測 ヒルガオの誓い

二、聖夜を照らす世界から。

第三夜・自分観測(改訂)

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赤い光が、さっきまで居た会社にめがけて打ち付けられていた。

何度も何度も鞭のように、赤い光は回っている。

そこには、救命医の姿と、白く重い車両が光を放って

口を開けていた。

意識が無いに等しい自分ですら、そこに飲み込まれていくことが
脅威的にわかった。

聞こえない掛け声から伝わる気迫は本物で、
搬送するために動く人たちから

自分の事の重大さと緊張感を読み取った自分は、

まさに死ぬんだと感じた。


(そう、人はいつか死ぬ……。)

周りからはフラッシュの霧。

(そうわかってくれないかな。)

先輩達が、エレベータから降りて
自分のもとに駆けつける。

(じゃないと辛いんじゃないかな？)

警察官に彼らが取り押さえられるのを無情に見送る。

(そうだろ？……灯？)

最期に思い浮かべられたのは

たった一つだけの天使の顔だった。

婚約して一年のまだまだ愛らしい妻だ。

元長澤灯先輩。

ここまで考えるのにたかが数分の1秒。
それでも最後の必要で大事な自分の時間だった。

そうやって自分は、飲み込まれた………。

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昨日、先輩とぶつかったらしく
意識を失った自分が、
保健室で目を覚ましたのは良かったのだが、
それは次の日の振替休日だったとは
思いもしなかった。

こんなに長く寝て居たのか。

やることが無いにせよ、今は学校にいるのだから

もう少し何か暇つぶしをしたかった。

この重い体をこのまま家に返そうとは思わなかったのだ。

そうやって、たの山に登ろうとした時、

突然の頭痛らしき違和感に襲われる。


自分に行かせまいと歯止めをかけるものは

先輩の姿の幻影だった。

自分の夢に先輩の顔が最期に出てきたことが
何となく気味が悪く、

そして微妙にいっても仕方のない気がしてきたのだ。

行ったところで、何か晴れ晴れとする気がしていた
いつもの日課への一連の思考の流れは、

せき止められたことで行き場をなくす。

肩を落とした時にふと、
山から視線が、傾斜を転がり落ちていく、


するとそこには、輪郭そっくりな
子供のように土が盛られた起伏があった。

そこで、たまには見て見るかなと思ったのだ。

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蒼い。

地球と背中合わせになると

自分も大地と同化した気分になること、

この空をこの土とともに眺めるのが、

なんとなく好きだ。


普段から時刻表を見て、時間に縛られたり、

机に物を置くのを見て、物理的に危険を考えたり

一方で空を見ることには、考える必要がない。

「蒼い」


以上。

別に、頭でっかちではない。

はっきり分かることが、少ない世の中は嫌いだ。

人と関係を持つということは、
そのはっきりわからない輪に飛び込んで、

常に相手のことを考える輪廻に囚われる。


これは生まれてから、
17年間、曲げたことのない信条だ。


人との関わりはおろか
社会という輪に入りたくない。


そんな自分が、長澤先輩と変な陽炎の輪の
外で翻弄されているような気がして

今日は寝転がる気にもなれなかったのだ。


どうしようもない夢を見てしまったり
班に君の悪いほどリアルな夢を見ると

じぶんは一人でここに来る。


この街の山から湧き出てきた小川の近くの
高さ3mの小山。

それは自分のための川と自分のための山だった。


誰にも、邪魔されない。

先輩も、陽炎ですら入る余地のない。

ここには自分が普段から寝ているのだから。


そうやって自我を確立したことを確信すると

くるくると体を回していくのだ。

回した先には木陰と
青くなったばかりの柿がセットで上を彩る。

緑と青い緑が埋め尽くされた頃。


目を自然に閉じる。



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「どう？やってるかな？」

ふと、聞こえた声の主は

誰が何を言おうと、多分先輩だ。

メガネをかけてて、木陰から、月明かりが
彼女を照らす姿は、

とても冷たそうで美しい。

でも暖かい声がその場を包む。

ん？やってるって何だ？

周りを見渡すと、すでに夜になってて、

ここは池がある。

池の真ん中には蒼い光が…………。


そうやって上を望むと、

蒼い光が真上にある。

「えっと、これはどうゆうことですかー？」

「どうゆうことって、とぼけないでよ。
   ほら、ちゃんと持ってきてるじゃないの。
   言った通りやってくれて。」

そうやって、前に出てきた先輩は、
そこにあった望遠鏡に目をやり、
まるで我が子のようにさすっている。

僕が持ってきたものなんだけどなー困。

「さっき貴方のもう一人の彼に会ってきたわ。
   彼は貴方と違って飲み込みが早くて助かるわ。」

「彼って、あいつですか(笑)
   ってそれはどうゆうことですか？」

さっきまで近くにいた私とかいう臆病者は
一昨夜になぜかお星様になった。

「要はこの蒼い星を池越しで覗けばいいんですよね？」
なんかしっくりこないなぁとも思いながら
確認する僕に、

彼女は無言で返して来る。


そうやって許可を頂き、僕は望遠鏡に目をかざした。


するとそこには、


小さな起伏で寝転がる、

僕そっくりな奴がいた。

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寝てる自分に誰かの気配がする。

すると自分は無性に目を覚ましたくなる。

誰だ？こんな時にと思って、

寝返りをして見る。


するとそこには、紅い陽炎が一体。

またいる。

また訳のわからないやつがいる。

どうしようもなく前にでたがっては、

うるさい奴だ。

僕の大嫌いな「人のために動く無神経さ」。

慌てて体を起こした自分は、学校に戻ろうとしていた。

すると、後ろから肩を捕まれる。



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「先輩、こいつなんですか？
   こっちが覗いたら、
   気づいたのか校舎みたいなところに入ったよ」

僕は慌てて、振り返る。


すると先輩はその反応を待っていたかのように
形を乱していう。

「やっときたのか！！！
   いやぁ長かった！
   この人がもう一人の貴方だよ」

え？

それ以上の説明はない。

興奮する先輩を隣にどうしようもないわけだが
沈黙を保ちつつのぞき続ける。



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画面に今まで表示されなかった文字が点滅し、


神崎が、ガッツポーズを取る。

ディスプレイを何度も見直したのちに、

「戸上さん！
  二人のコネクト成功しました！！」

黒い建物中に響いた声が、
戸上を起こす。

戸上は飲みながら寝てしまった
コーヒーをこぼし、

熱いと言いながら近寄り、

「それは本当か！？
   第二フェーズの準備だ！」

もしかしたら世紀の成功かもしれないことに
一歩近づくけた人は、ようやく重たい肩から荷が落ちた。

それを見た長澤灯も、
安心して眠る。


城山誠の体にはそっと

紅と蒼の光がついていた。

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