無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

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第4話 信者アーサー・ペンドラゴン

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 僕の名前はアーサー・ペンドラゴン。
 先日他界した父に代わり、王位を継承した。
 ――といっても、我が国の民はわずか5~60人ほど。
 国土は大森林のなかにひっそりとあるこの村一つ。
 うん。国というよりただの村だ。

「皆さんどうか落ちついてください!」
「村が全滅の危機にさらされているってのに、落ちついてなんていられっかよ!」
「王様なんだからてめぇが何とかしやがれ!」

 さて困った。
 毎度のことながら民による暴動が起きている。
 貧乏国家である我が国では珍しいことでもないのだが、今回のこれはさすがにまずい。

「僕が責任をもってなんとかしますから!」
「なんとかってどうするってんだよ! 言ってみろよ! まさか魔物と話し合いでもしようってんじゃねぇだろうな!」
「痛ッ!?」

 感情的になった村人が石を投げつけてくる。

「―――貴様ッ!」

 僕を庇うように茅色の髪の少女が飛び出してきた。
 幼馴染みのジャンヌ・ダルクだ。
 ジャンヌは長く伸びた髪を振り乱しながら、手にした木剣で礫をすべて打ち落としていく。

「王様に向かって石を投げるな! 言いたいことがあるならちゃんと謁見の許可を取ってからにしろ!」
「なにが謁見の許可だ、ばかたれっ! この村の何処に謁見の間なんてあんだよ!」
「貴様ッ! 王様が謁見の間だと言ったらそこが謁見の間だ! そんなことも解らないのか、たわけが! 良いか? 大事なことは見栄えとかではない。どれだけ礼儀を重んじて王様に接するかだ!」
「おい、ベン! またてめぇんとこのイカれ娘が意味不明なこと言ってんぞ!」

 いつものようにジャンヌが吠えて、ベンおじさんが皆に頭を下げて回る。
 いつものありふれた日常にホッとすると同時に、胸のなかで小さな不安が雨の日の水溜りみたいに広がっていく。



「アーサー、おでこは大丈夫か? たんこぶができているのではないか?」

 僕の黄褐色の髪をひょいっと持ち上げて、瘤ができていないか確認するジャンヌ。
 近すぎる距離感に、僕は少しドキドキする。

「うん、大丈夫だよ。僕、男なのにジャンヌにいつも助けられっぱなしだね」
「何を言う。王様を助けるのは臣下の務め、当然のことだ!」
「臣下……って」

 この国……村にそんなものないって何度言ったって彼女は聞かない。自分はいずれ世界を幸せにする王様に仕えるんだって、そればっか。
 こんな国とも、王様とも呼べない僕を、ジャンヌはそれでも王様と呼んでくれる。

「私はアーサーならばきっと素敵な王様になると信じているのだ。神が私にそう云ったのだから間違いない」

 彼女は時々不思議な夢を見るという。
 夢の中では、もう村の人たちもすっかりその存在を忘れてしまった神様がそこにはいて、僕に言うらしい。

 ――アーサーよ、互いにもう諦めるのは終わりだ。
 お前はこの世界の王となれ!
 俺もできる限り最高を目指してみるからさ。

 夢物語を語る彼女の横顔はとても幸せそうで、見ているとこちらまで幸せな気分になる。

「私はアーサー王の盾であり剣で在りたい! アーサーの前に立ちはだかる敵は私の敵。この剣にかけて必ず斬り伏せてみせよう」
「なんだかジャンヌと対峙した人が気の毒のような気もするよ」

 苦笑いを浮かべると、それはどういう意味だ! と彼女が不思議そうにしていた。

「だから魔物が襲って来ようとも、アーサーは恐れる必要などないのだ。アーサーのことは――いや。この国はきっと私が守ってみせる!」
「ありがとう。剣術に長けたジャンヌが居てくれるから、僕はすごく心強いよ」

 話しながら歩いていると、あっという間に自宅が見えてきた。
 王様の家と言えば立派なお城や宮廷なんかを思い浮かべると思うけど、視界の先に映るのはありふれた家屋。

「ん――どうかした?」

 隣を歩くジャンヌが、突然僕の腕を掴んで立ち止まった。まるで睨みつけるように僕の家を見据える。

「アーサー……誰かいる」
「え!?」
「家に誰かいる」

 ジャンヌに言われて注意深く家を見てみると、一瞬窓に人影が見えた。

「まさか泥棒っ!?」
「それはおかしい……」
「違うの?」
「こんな辺鄙な村にわざわざ盗みに来るというのは、少し不自然ではないか?」
「そう言われると……」

 そもそも《約束の大森林》の奥深くに位置するウチの村は、その存在を知る者さえほとんどいない。いわゆる隠れ里。

 そんな村にわざわざ泥棒に来る人の気がしれない。第一、《約束の大森林》には魔物がたくさんいる。一般常識のある人なら近づくことさえしない。
 だからこそ、僕たちは大森林ここに村を築いたのだから。

「村の誰かが訪ねて来てるとか?」
「さっき村の中央広場にみんな集まっていたのだぞ? 用があるならその時に直接言えばいいだろう。わざわざ先回りする意味がわからない。しかも勝手に人ん家に上がり込むなど、無礼にもほどがある!」

 礼儀がなっていないと、ジャンヌは不機嫌なしわを眉間につくる。

「私が乗り込んで直接文句言って来てやろう!」
「――ちょっとっ!?」

 ストーップってな具合に怖いもの知らずの腕を掴んで進行を食い止める――が、ズルズルと引きづられてしまう。
 この細い身体のどこに、これほどのパワーが隠されているのだろうか。

「止まって止まってよっ!」
「なぜ止める? 王様の城に許可なく押し入った無礼者を私が叩き出してやる」
「危ないよ! てか恥ずかしいから家を城っていうのやめてよ!」

 腰に提げた木剣を手にしては、その場でブンブンと豪快に振り回す。
 その音は女の子の為せるわざではない。若干引いてしまった。

「とにかく、一度あそこから中の様子を確認しよう」
「なぜ王の剣たるこの私が、そのようなこそ泥みたいな真似をせねばならん」
「敵の戦力を知るための斥候は重要な役割だと思うけどな。それに正面切って戦うだけじゃ村……国も民も王も守れないだろ?」

 取ってつけたような最後のいいわけ言葉を聞いた彼女の顔が、予想以上にほころぶ。
 ふふっ――とにやけるジャンヌを見やり、僕は安堵する。

「いいだろう! 仕えるべき主君がそこまで言うのであれば従おう」

 彼女がチョロくて助かった。
 てかめっちゃ嬉しそうなんですけど……。


「なんなのだ……彼奴らは」
「やっぱり村の人間じゃなさそうだね」

 ヤモリのように壁にへばりつき、こっそり窓から室内の様子を覗う。
 室内には二人いる。

 一人は山吹色の髪に晴れ渡る空のような瞳をした少年だ。黒を基調とした羽織コートには、所々金色の刺繍が施されており、その服装から見ても彼が平民ではないことは一目瞭然。

 少年の傍らには少女の姿もある。
 お仕着せを着用しているところから見ても、まず間違いなく彼に仕える小間使いだろう。
 歳は……僕たちと同じ十代後半といったところか。

「にしても……ひどいボロ屋だな」
「なぜこのような場所に降臨してしまったのでしょう? 神様が下界に赴く際は、神を祀る祭壇に降臨すると聞いたことがあるのですが……」
「うぅっ……。ミカエルたそは中々に痛いところを突いてくるな」

 なにやら話し込んでいるようだが、気のせいだろうか。少年があからさまに落ち込んでいる。

「ミカエルたそはあれが何かわかるか?」
「う~ん、極小サイズの祭壇……? でしょうか?」
「うむ。つまりそういうことだな」

 代々ペンドラゴン王家に伝わる神を祀った祭壇(仮)を興味深そうに見ている。
 ひょっとして……御祈りしたいのかな?

「こそこそと一体何を話しているのだ? ここからではいまいち聞き取れん。もしや金目の物がなかったからと、我が国の王を誘拐する計画を企てているのかもしれん!」
「ちょっと待ってよ! 今焦ってこちらから出ていく必要はないよ」

 猪のように猪突猛進しようとする彼女を、「どうどう」と落ちつかせる。

「なぜアーサーはそんなに落ちついていられるのだ! 彼奴らはひょっとしたら我が国に害を与える盗賊かもしれぬのだぞ!」
「それはさすがにないよ」
「どうして言い切れるのだ!」

 僕はジャンヌから窓の向こうに視線を戻し、見てごらんと二人の服装に注視するよう指示を出す。

「……?」

 彼女は僕がなにを言いたいのかわからないという風に、小首をかしげる。

「女の子の方はもちろん、男の子の方も丸腰でしょ。彼らがもしも、ジャンヌが心配するような盗賊悪人だったなら、さすがに丸腰は変じゃないかな?」
「たしかに一理あるな」

 一応納得してくれたらしく、大人しく観察を続ける。

「ひとまずティータイムとしよう。四人分、、、淹れてもらえるか?」
「かしこまりました」

 メイドの女の子は何処からともなく豪華なティーセットを取り出すと、テーブルにそれを手際よく並べていく。手慣れた様子で紅茶を淹れる。

「アーサーよ……なんで彼奴は人ん家で堂々と紅茶淹れているのだ? というか、なぜカップが4つも出ている?」
「4つ……?」

 たしかにテーブルには4つのカップが丁寧にソーサーに置かれている。
 決して広くない室内にはたしかに二人しか居ないはずなのだが……なぜだ?

「「―――まさかっ!?」」

 僕とジャンヌがほぼ同時にその可能性に気がついたその時――

「さぁ、ミカエルたそが温かいダージリンを淹れてくれたぞ。いつまでもそんなところでコソコソしておらずに入って来たらどうだ? アーサー・ペンドラゴン。それとその従者、ジャンヌ・ダルクよ」
「「―――!?」」

 僕たちは慌てて身を潜めた。
 彼は僕たちに背を向けたままティーカップを一つ手に取り、その薫りを優雅に楽しむ。

 バレている!?
 いつから……彼はいつから僕たちの存在に気がついていたというのだ。
 こちらに気づいている、そんな素振りはまるで感じられなかったというのにっ。

「この声……」

 あのジャンヌが……震えている?
 いや違う!
 笑っている。
 目前の少年に恐怖心を覚えながらも、彼女はたしかにこの瞬間に歓喜していた。

「ジャンヌ!?」

 突然立ち上がるジャンヌ。
 その表情は恍惚としていた。
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