無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

文字の大きさ
35 / 66

第35話 脱獄者

しおりを挟む
「ウゥルカーヌス様! さぁすぐに式を挙げましょう!」

 ベルゼブブとの話し合いを終えた俺たちの元に、夜の妖精王ティターニア改めアルドラをはじめとする面々がやって来た。クレアに連れられる形でアーサーたちも一緒だ。
 アマンダだけは娼館に戻らなければならなかったらしく、来ていない。

「ちょっとやめてよママ! 結婚はまだ早いって言ってるじゃない!」

 ベルゼブブから俺が人間ではなく神だと聞くや否や、アルドラは先程からずっとこの調子。
 変わり身の早さは天下一品。
 なんだかんだクレアも満更ではないって顔をしており、チラチラとこちらを見てくる。

「やっぱりママはウエディングドレスは漆黒が可愛いと思うのよね。クレアちゃんに絶対似合うと思うのよ」
「え、そ、そう? ま、まぁそこまで言うなら考えなくもないけど」
「そうよねそうよね。あっ、そこの召使い、ウゥルカーヌス様に御紅茶を淹れて差し上げなさい」
「だっ、誰が召使いだ! 私はアーサー王の剣――アヴァロンの騎士だぞ!」

 アルドラにとって人間は全員召使いか奴隷なのだろう。彼女の過去を考えれば、それも仕方のないことだと思う反面、いつかはアーサーを対等に扱ってもらわねば困るとも思う。

「召使いなんてまだマシだじょ」
「んっだぁ、んっだぁ」
「オラたちは非常食扱いだったべさ」

 ゴブリンたちの愚痴に苦笑するアーサーとは違い、ロキは便座で気張るようにソファに腰掛けている。
 ロキが放つ凄まじい殺気は当然、俺に向けられたものだ。

「あんたのせいであちしまで犯罪者じゃないのよ!」
「天界の詐欺師トリックスターともあろうロキが随分弱気だな」
「あ、あんたねぇ、自分が何やったか分かって言ってんでしょうね。悪魔を見逃した上に、身を隠すための力まで貸したなんて、シャレになってないわよ! しかも、なんであちしがあんたにやった嘘と偽りフェイクリューゲを使ってんのよ。これじゃあちしが加担したみたいじゃないのッ!!」
「仕方ないだろう? それしか思いつかなかったんだから」
「だからってやっていい事とダメなことの区別くらいつけなさいよ! あんたイカれてんッ―――!」

 まぁまぁそう言わずにと、俺はジャンヌが渋々淹れてくれた紅茶を勧める。

「美味しそうなクッキーもどうだ?」
「あんたねぇ……こんなんであちしが納得するとでも思っているわけぇ!? ふざけんじゃないわよ!!」
「……いらんのなら勿体ないから紅茶もクッキーも俺がもらうぞ?」
「ちょっとぉッ―――!! 誰も飲まない食わないなんて言ってないじゃないのよ!」

 結局、飲み食いするらしい。

「で、お前はなんで反対側に行きたかったんだ?」
「だからなんであちしがあんたに教えなきゃいけないのよ!」
「言いたくないなら無理にとは言わないけどさ、力になれることもあるかもしれないだろ?」

 むしゃむしゃと不機嫌な表情でクッキーを貪り、紅茶で口の中を潤したロキは、しばし物思いに耽る。
 やがて、すごく嫌そうに口を開いた。

「怪狼――フェンリルを探してんのよ」
「怪狼……? ってあのじゃじゃ馬娘かッ!?」
「だからそう言ってんじゃない」

 怪狼フェンリル――たしか先の大戦で敵味方問わず暴れまわった挙句、最終的に北の最高神オーディンを噛み殺しかけたとかなんとか……。
 北の神々にとって彼女はかなり厄介な存在だと聞いたことがある。

 一説によると、北の神々に捕らえられた怪狼は神の足枷グレイプニルでつながれ、タルタロスの塔に幽閉されたとも聞く。
 それがなぜ下界にいるのだろう。
 なにか特別な理由があると考えるべきだろうか。

「まさか、脱獄でもしたのか? 神の足枷グレイプニルにつながれて幽閉されていたし、それは無理か」
「………っ」

 爪を噛んでムッとするロキ。
 どうやら、そのまさからしい。

「……マジかよ」
「つーか、東の神のくせに、あんた意外とこっちに詳しいわね」

 極狭領土の俺が天界で上手く立ち回るためには、なによりも情報は欠かせない。そのために諜報に特化した天使メイドを育て上げた。この程度、お手のものだ。

「んっなことよりどうなんだよ?」
「ええ、そうよっ! だからこうしてわざわざあちしが探しに来てんじゃない!」
「ってことは、本当にタルタロスの塔から脱獄したのか?」
「だからそう言ってるじゃない。あんたもしつこいわね」

 だが、果たしてそんなことが可能なのだろうか?
 タルタロスの塔といえば難攻不落。脱獄なんて以ての外、絶対に不可能だと云われている。
 天界の歴史上、一度だって脱獄に成功した神は存在しない。

 なにより――

神の足枷グレイプニルにつながれてたんじゃないのか?」
「あちしもこの目で見たわけじゃないからはっきりとは言えないけど、切れてたらしいのよ」

 切れてた……?
 神殺しと呼ばれ、唯一神を拘束する力を持つ神の足枷グレイプニルが……切れてただと!?

 そんなことって……。
 しかし、ロキが嘘をついている風には見えない。なによりそんな嘘をつく必要がどこにもない。

「あちしが直接現場を見たわけじゃないから、正直なんとも言えないわね」

 ただ、と続けたロキは、

「現場を見たっていう神の話だと、噛み切られていたらしのよ」
「か、噛み切れるものなのか!?」
「そんなもん、あちしが知るわけないじゃないのよ!」
「―――ん? でも待てよ。じゃあなんで怪狼が下界にいることを知っているんだよ? 居場所が分かってるから下界こっちに降りてきてるんじゃないのか?」

 それに、仮に本当にタルタロスの塔から脱獄に成功していたとしても、怪狼はなんでわざわざ下界に降りたのだろう。

「別に今さら隠すことでもないから言うけど、予言されたのよ」
「予言……?」
「フェンリルが神々に災いをもたらす存在だって、ね」
「災い……?」
「それで北の神あちしらはオーディンの命令で血眼になってフェンリルを探してるってわけよ。ちなみに下界を探してるのはあちしの勘ってわけ」
「勘って……下界にいることが分かっているわけじゃないのかよ」
「なによ、バカにしてんじゃないわよ! あんたは知らないかもしれないけどね、オカマの勘は意外と当たるのよ!」

 そんなことをドヤ顔で言われてもな……。

 怪狼を探し求めて大森林を探し歩いたロキは、約束の大森林ここにフェンリルは居ないと結論付けた。場所を変えるため、魔族街ワンダーランドを抜けて反対側に移動しようとしていたところに、ばったり俺と鉢合わせたというわけだ。

「それなら後で俺様が一筆書いてやろう」
「!?」

 聞き耳を立てていたベルゼブブが話に加わってきた。

「あんた盗み聞きとか最低よ!」
「悪魔の居るところで怪狼や、神の足枷グレイプニルの話をしていたら、嫌でも気になる。聞かれたくなかったなら、もう少し時と場所を選ぶべきだ」

 全くもって正論である。
 プンスカプンスカ怒るロキを鼻で嘲笑うベルゼブブ。
 そういうところは年老いても、心を入れ替えても変わらないようだ。

「あんたが時と場所をわきまえずに色々聞いてくるから、あちしまで正体がバレちゃったじゃない! ほんっとうに愚図なんだからッ!」
「お、俺のせいかよ!?」
「あんた意外に誰がいんのよ!」

 こんなの付けてる自分がバカみたいじゃないと、半ばヤケクソ気味に嘘と偽りフェイクリューゲを外すロキ。

 それからも神と悪魔の話し合いは続いた。
 アルドラからはいつ式を挙げるのかと、俺は脅迫じみた質問に苦しめられるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...