無能と呼ばれた鍛冶師の神〜能力値向上のチート装備を村人たちに持たせて最強の国を築く!!

七色夏樹

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第61話 消えたゴブリンたち

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「何かいい方法、思いつきましたか?」
「いや、まったく」

 あれからずっと、どうすればアーサーが能動的にトリートーンの信者を殺さなければならない、そう考えるようになるのかを考えているのだけれど、その方法がまったく思いつかない。

 いっそのこと領地を賭けた神々の戦いゴッドゲームをアーサーたちに打ち明けてしまおうか、なんてバカなことを思案してしまうほどだ。

「それじゃダメだよな」

 神の都合で人間同士を戦わせているなんて知れば、正義感の強いアーサーのことだ。それこそ神に不信感を抱きかねない。

「あぁ、くそっ、八方塞がりじゃねぇかッ」

 参ったなと思いながら窓の外をぼんやり見ていると、ゴブリンたちがハーピィ娘、レミィに群がっている。求愛のつもりなのか、腰振りダンスを披露している。

「キモいだけだろ」

 って、こんなことしてる場合じゃない。
 仮にアーサーに知られずに冒険者たちを皆殺しにするとなれば、クレア、ガウェイン、ゴブゾウのみでの隠密殲滅作戦となる。

「でも、アーサーにバレたら終わるよな」

 冒険者たちがトリートーンの信者なので、ウリエルたちを呼び戻して暗殺させるわけにもいかない。天使の領地を賭けた神々の戦いゴッドゲーム参加も違反行為になるためだ。

「どう考えても戦力が、切れるカードが少なすぎるんだよな」

 やはりアーサー自身が納得してトリートーンの信者を、冒険者と敵対する方向に持ってくしかない。



 結局、この日は名案が思いつくこともなく、夜が来て眠りについた。

 翌日は少し気分転換でもしようと思い立ち、近くの川で釣りをしながら物思いに耽る。

「全然釣れてないじゃない」
「うっさい。大きなお世話だ」

 勝手に魚籠を手にとりのぞき見るクレアから魚籠をとり返し、ナース服姿の彼女を目で追う。
 めちゃくちゃエロいな。

「クレア姉ちゃん、こっちにすげぇでっかいのいるぜ」
「ウゥルカーヌスは全然ダメだから、素手で取っちゃうわよ」
「あのなぁッ、釣りをしてるそばでそうやってびちゃびちゃ川遊びされたら、釣れるもんも釣れねぇんだよ! 誰のせいでボウズだと思ってんだよ」

 付いてくるって言って聞かないから仕方なく連れて来たけど、全然集中して考えられないじゃないか。しかも水に濡れてナース服がスケスケなんだよな。アネモネに追加で下着雑誌を渡していたのが功を奏したようで、衣服に張りついたリボン付きのエロカワ下着がたまらん。

「ああ、もうチクショッ! そこどけっ。俺が取ってやるよ」

 ジャンヌの父、ベンお手製の釣り竿を投げ捨て、俺も川に飛び込んだ。クレアとトトと一緒になって川遊びをして、捕まえた魚を焼いて食う。これで憂鬱な悩みがなければ最高だった。

「そういえば、今朝はレミィを見ていないけど、まだ落ち込んでるのかしら」

 何だかんだレミィのことを気にかけているようだ。クレアのやつも意外と優しいところがあるんだなと思ったりする。

「避難所だろ? どうせショックで寝込んでんだよ」

 友人が殺される場面を目撃したんだ。寝込みたくもなるだろう。

「レミィ……? ハーピィの姉ちゃんは避難所で寝泊まりしてんのか?」
「……何寝ぼけたこと言ってんだよ。昨夜も今朝もずっと一緒だったくせに」
「おいら知らねぇよ」
「あんた意外と薄情なガキね。ま、変に同情されるよりかは、それくらいのスタンスの方がレミィにしてみても楽なのかもしれないわね」

 一理あるなと、俺はコクコクうなずいた。
 日が暮れるまで三人で遊び、いい加減村に帰ると、何やら騒がしい。
 ゴブリンたちが村の中を駆けずりまわり、アーサーたち村人も忙しなく村の中を行ったり来たり。

「何かあったのかしら?」
「おい、そんなに急いでどうしたんだよ」

 前を横切ったゴブゾウを捕まえて尋ねる。

「それが、今朝からずっと姿が見えないゴブリンが何匹もいるんだべ」
「姿が見えない?」

 透明ゴブリンにでも進化したのだろうかと、俺とクレアは顔を見合わせ首をかしげる。

「やっぱりダメだじょ。何処にもいないんだじょ」
「あいつらどごに行っただがや」

 仲間のゴブリンが家出してしまったらしく、ゴブリン総出で村中を捜索していたようだ。

「神様!」

 呼ばれて厩舎に顔を向けると、慌てた様子のアーサーがこちらに向かって大きく手を振っていた。

「どうかしたか?」
「大切な黒翼馬ダークペガサスが、数頭いなくなってしまったんですよ!」
「は……?」
「いなくなったって、どういうことよ!」

 厩舎に入って確かめてみる。
 ワンダーランドから貰った貴重な黒翼馬ダークペガサスは全部で四頭のはずだったのだが、厩舎には半分の二頭しかいなかった。

「逃げたわけじゃないよな?」
黒翼馬ダークペガサスはそんなアホじゃないわよ」

 となると、誰かが連れ出したってことになる。

「アーサー、有力な情報を入手したぞ」

 大音声を響かせながら厩舎に入ってくるのはジャンヌ。そこには愛らしい栗色のおさげ髪の少女、アネモネも一緒だ。彼女はジャンヌに手首をつかまれており、半ば強制的に連れて来られたようだ。

「さっき私に話したことをもう一度話してくれ」
「え、あっ、はい」

 胸元に手を置き、大きく深呼吸。呼吸を整えたアネモネが薄唇を動かす。

「あれは昨日の夕方のことだったわ。ウゥル様が連れて来られたハーピィ、レミィさんにゴブリンたちが寄ってたかって群がっていたの」

 その光景なら俺も見ていた。下品な求愛ダンスを披露していたはずだ。

「わたし、ゴブリンたちに言い寄られてレミィさんが困っているんじゃないかと思って注意しようと近づいたの。そしたら、ゴブリンたちがレミィさんに言っていたんです」
「何をですか?」

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべるアーサー。

「自分がゴブゾウだって」
「どういうことです?」

 アーサーの疑問に、困った顔のジャンヌが答える。

「レミィはこの村で一番強いゴブリンは誰かと、ゴブリンたちに尋ねるまわっていたそうだ。当然ゴブリンたちはゴブゾウだと答えた」

 そういうことか。
 俺は一人納得していた。

 ジャンヌの説明を聞いても未だ意味がわかっていないアーサーは無視して、俺はすぐに厩舎を出て、ガウェインとミカエルを呼んだ。

「レミィはどこにいる」
「それが……」

 気まずそうに俯き口ごもるミカエルから、俺はガウェインに視線を向ける。

「いない。気付いてから村中を探したが、ハーピィの姿はどこにも……」
「……そうか。くそっ」

 レミィの目的は友人のはぐれハーピィから聞いた強いゴブリンに会うことだった。里を襲った冒険者たちに復讐するために。
 しかし、途中で俺たちに出会い。ゴブリンじゃなくても復讐ができるかもしれないと希望を持つ――が、アーサーはあの場では話し合いを望んだ。

 これはレミィの求めていた答えとは違いすぎた。落胆した彼女は再びゴブリンに復讐を依頼することを思いつく。
 そこで彼女はこの村で一番強いゴブリンを尋ねまわり、その者の名がゴブゾウであることを知る。

 レミィは近くにいたゴブリンにゴブゾウを呼んできてほしいと頼んだが、逆に何のためにと聞かれた。彼女はゴブリンにならば本当のことを話しても問題はないと判断したのではないだろうか。

 その結果、ゴブリンは知ってしまう。
 レミィの復讐に協力すれば、彼女に子種を植えつける権利が得られることを。
 近くにいた別のゴブリンがそれを聞き、自分がゴブゾウだと名乗りを上げる。それは連鎖的に広がり、彼女の前に性に貪欲なゴブゾウが何十匹も現れてしまった。

 どれが本当のゴブゾウか分からなかったレミィは、全員里に連れ帰ることにしたのではないか、というのが俺の推測だ。
 そこで使用したのが黒翼馬ダークペガサスというわけだ。

 ちなみに本物のゴブゾウは村にいる。

「荷馬車も消えてるんじゃないのか?」
「すぐに確認をっ」

 ガウェインに確認させると、倉庫として使っていた小屋から荷馬車が一台持ち出されていた。

「荷台に乗って行きやがったか」
「すぐに追いかけましょう!」
「待て!」

 俺は残りの二頭でゴブリンたちを追いかけようとするアーサーを止めた。

「なぜ止めるんです? みんなが危ない目に遭うかもしれないじゃないですか!」
「それは分かっている。だが、もう遅い。出発は明朝、陽が昇ってからだ」
「――でもっ」

 反論するアーサーを止めたのはジャンヌだ。

「アーサーの気持ちもわかるが、ウゥルカーヌスが正しい。夜の森は危険なのだ。私やウゥルカーヌスなら問題はないが……その」
「僕が弱いから……そう言いたいんだね」
「いや、違っ……」

 とっさの気まずい場面を繕うため、何か言葉を入れてその不愉快な緊張をゆるめようとするジャンヌだが、上手くいかないこともある。

「今日は、一人で寝る」

 涙ぐみそうになり唇を噛みしめるアーサーが、トボトボと去っていく。
 その後ろ姿を、ジャンヌは悲しげな表情で見つめていた。
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