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第4話 羽根に免じて
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シノさんが出ていって、どのくらい経っただろう。
暇を持て余したあたしは、おねたんとあっち向いてホイで遊んでいた。
「おねたん強いねー」
「高性能AIですもの!」
ドヤ顔してる羽根うさぎが可愛い。
「シノさん遅いね」
「ちょっと心配ね」
そんなふうに、シノさんの心配をしていると、小屋の玄関をノックするような音が聞こえた。
扉をそっと開けて覗くと、そこにはあのときの子グマが立っていた。
「あら、どうしたの?
お母さんは?ここまで一人で来たの?
オイモはもう無いよ?」
「がうぅ……」
なんだか、元気がなさげだな。
お母さんになんかあったのかな?
「おねたん、なんて言ってるかわかる?」
「お母さんが殺されちゃうって!」
「なんですと!?」
まさか、あの森で魔獣とかいうのに遭遇してしまったの!?
それで、子グマだけでも逃して……こうしちゃいられない!
「おねたん!お母さんクマを助けに行こう!
子グマちゃん、案内してくれる!?」
「がうっ!」
日本には、一食一飯という言葉がある。
食事というか、よくわからん木の実だったけど、むしろオイモあげたあたしの出費の方がでかいけど。
ともかく、この恩を返さずして日本人は名乗れない。
小屋を飛び出し、あたしたちは急いだ。
──待ってて、お母さんグマ!
あたしたちが行って何かできるかわからないけど、魔獣を追い払うくらい、なんとかできるかもしれない……おねたんが!
***
「ガゥゥ……!」
「お母さんグマー!!」
お母さんグマと対峙しているのは、魔獣じゃなくて……シノさん!?
「しぶとい奴ね……でも、これで!」
「シノさん!ちょっと待って!!」
クロスボウを構えるシノさんの前に、あたしとおねたんは立ち塞がった。
「チハル!?
何してんの!そいつは魔獣よ、離れなさい!!」
「魔獣じゃないよ!お母さんグマだよ!
この子のお母さん!」
「あなた、頭おかしいの!?
こいつは、魔獣アルクーダ!
その子どもも退治しなきゃいけないの!!」
シノさんは、子グマにクロスボウを向けた。
「この親子グマは、行く当てのなかったあたしたちを、巣に泊めてくれたんだよ?」
「シノさん、ここはわたしの羽根に免じて武器を下ろしてくださりませんか?」
「羽根に免じてってどういう意味よ……」
困惑するシノさん。
羽根に免じてって、あたしも意味はわからないけど、どうやらおねたんの説得で、シノさんがクロスボウを下ろしてくれた。
なんでも言ってみるもんだね。
「がぅがぅ……」
「ガウ……」
抱き合う二頭のクマ。
感動のシーンだけど、お母さんグマの体のあちこちに出血が見られる。
シノさんの矢を受けてしまったんだ。
「おねたん、お母さんグマの傷治せないの!?」
「待ってて、ウニャウニャするから」
おねたんの小さなおててからあたしに光が伸びてきて、体がポカポカしてきた。
これって、翻訳の時と同じだ。
「よし、これで千春に回復スキルが備わったわ」
「よくわからないけど、どうしたらいいの?」
「患部に手を当てて、痛いの痛いの飛んでけーって叫んで」
そこはせめてヒールとか、それらしい言葉になりませんでしたか?
「じゃあ、お母さん、前足を出して」
「ガゥ……」
「痛いの痛いの飛んでけー!!」
叫んでみると、手が光ってお母さんグマの患部が癒えていく。
原理はわからんけど、これで前足の怪我はオーケー。
あとは後ろ足の怪我を治してしまえば動けるかな?
お腹と頭は無事でよかったよ。
「私がせっかく与えたダメージが消えてゆく……」
「シノさん、ごめんなさいね。
わたしの羽根一つあげます」
おねたんは、羽根をシノさんに手渡して免じてもらった。
子グマがあたしの足元にすりすりしてて可愛い。
「チハル、あなた……その変なウサギといい、もしかしてテイマーなの?」
「テイマー?日本語でお願いします」
シノさんは、懇切丁寧に地面に図を描いて説明してくれた。
その図は時に激しく、時にキュートに、わかりやすくテイマーとは何かを教えてくれた。
テイマーって、ラノベとかでたまに見る魔物を手懐けるやつだったわ。
「シノさん、このクマたちは魔獣なの?」
「クマとは違うわ。
ほら、よく見なさい。背中にトゲがあるでしょ?」
言われてみて背中を見ると、お母さんグマにはトゲが3本生えていた。
子グマちゃんには無いので、大人になると生えるのかな?
「クマじゃなくて魔獣なんだ」
「この森で被害者も出てる……退治しないわけにはいかないのよ」
「あたしが責任持って面倒見るから、退治するの無しにできませんか?」
「私だけじゃ判断できないわ……ギルドに確認しないと」
ギルドとかいう、異世界ものに欠かせないアレなワードも出てきた。
いよいよもって、ここは異世界なんだね……コスプレイヤーじゃなかったか。
「とりあえず、親子グマには大人しくしていてもらうので、どうしたらいいですか?」
「仕方ない……ギルドに連れていきましょうか」
あたしとおねたん、そして親子グマは、シノさんの後について、町のギルドへと向かうことになった。
暇を持て余したあたしは、おねたんとあっち向いてホイで遊んでいた。
「おねたん強いねー」
「高性能AIですもの!」
ドヤ顔してる羽根うさぎが可愛い。
「シノさん遅いね」
「ちょっと心配ね」
そんなふうに、シノさんの心配をしていると、小屋の玄関をノックするような音が聞こえた。
扉をそっと開けて覗くと、そこにはあのときの子グマが立っていた。
「あら、どうしたの?
お母さんは?ここまで一人で来たの?
オイモはもう無いよ?」
「がうぅ……」
なんだか、元気がなさげだな。
お母さんになんかあったのかな?
「おねたん、なんて言ってるかわかる?」
「お母さんが殺されちゃうって!」
「なんですと!?」
まさか、あの森で魔獣とかいうのに遭遇してしまったの!?
それで、子グマだけでも逃して……こうしちゃいられない!
「おねたん!お母さんクマを助けに行こう!
子グマちゃん、案内してくれる!?」
「がうっ!」
日本には、一食一飯という言葉がある。
食事というか、よくわからん木の実だったけど、むしろオイモあげたあたしの出費の方がでかいけど。
ともかく、この恩を返さずして日本人は名乗れない。
小屋を飛び出し、あたしたちは急いだ。
──待ってて、お母さんグマ!
あたしたちが行って何かできるかわからないけど、魔獣を追い払うくらい、なんとかできるかもしれない……おねたんが!
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「ガゥゥ……!」
「お母さんグマー!!」
お母さんグマと対峙しているのは、魔獣じゃなくて……シノさん!?
「しぶとい奴ね……でも、これで!」
「シノさん!ちょっと待って!!」
クロスボウを構えるシノさんの前に、あたしとおねたんは立ち塞がった。
「チハル!?
何してんの!そいつは魔獣よ、離れなさい!!」
「魔獣じゃないよ!お母さんグマだよ!
この子のお母さん!」
「あなた、頭おかしいの!?
こいつは、魔獣アルクーダ!
その子どもも退治しなきゃいけないの!!」
シノさんは、子グマにクロスボウを向けた。
「この親子グマは、行く当てのなかったあたしたちを、巣に泊めてくれたんだよ?」
「シノさん、ここはわたしの羽根に免じて武器を下ろしてくださりませんか?」
「羽根に免じてってどういう意味よ……」
困惑するシノさん。
羽根に免じてって、あたしも意味はわからないけど、どうやらおねたんの説得で、シノさんがクロスボウを下ろしてくれた。
なんでも言ってみるもんだね。
「がぅがぅ……」
「ガウ……」
抱き合う二頭のクマ。
感動のシーンだけど、お母さんグマの体のあちこちに出血が見られる。
シノさんの矢を受けてしまったんだ。
「おねたん、お母さんグマの傷治せないの!?」
「待ってて、ウニャウニャするから」
おねたんの小さなおててからあたしに光が伸びてきて、体がポカポカしてきた。
これって、翻訳の時と同じだ。
「よし、これで千春に回復スキルが備わったわ」
「よくわからないけど、どうしたらいいの?」
「患部に手を当てて、痛いの痛いの飛んでけーって叫んで」
そこはせめてヒールとか、それらしい言葉になりませんでしたか?
「じゃあ、お母さん、前足を出して」
「ガゥ……」
「痛いの痛いの飛んでけー!!」
叫んでみると、手が光ってお母さんグマの患部が癒えていく。
原理はわからんけど、これで前足の怪我はオーケー。
あとは後ろ足の怪我を治してしまえば動けるかな?
お腹と頭は無事でよかったよ。
「私がせっかく与えたダメージが消えてゆく……」
「シノさん、ごめんなさいね。
わたしの羽根一つあげます」
おねたんは、羽根をシノさんに手渡して免じてもらった。
子グマがあたしの足元にすりすりしてて可愛い。
「チハル、あなた……その変なウサギといい、もしかしてテイマーなの?」
「テイマー?日本語でお願いします」
シノさんは、懇切丁寧に地面に図を描いて説明してくれた。
その図は時に激しく、時にキュートに、わかりやすくテイマーとは何かを教えてくれた。
テイマーって、ラノベとかでたまに見る魔物を手懐けるやつだったわ。
「シノさん、このクマたちは魔獣なの?」
「クマとは違うわ。
ほら、よく見なさい。背中にトゲがあるでしょ?」
言われてみて背中を見ると、お母さんグマにはトゲが3本生えていた。
子グマちゃんには無いので、大人になると生えるのかな?
「クマじゃなくて魔獣なんだ」
「この森で被害者も出てる……退治しないわけにはいかないのよ」
「あたしが責任持って面倒見るから、退治するの無しにできませんか?」
「私だけじゃ判断できないわ……ギルドに確認しないと」
ギルドとかいう、異世界ものに欠かせないアレなワードも出てきた。
いよいよもって、ここは異世界なんだね……コスプレイヤーじゃなかったか。
「とりあえず、親子グマには大人しくしていてもらうので、どうしたらいいですか?」
「仕方ない……ギルドに連れていきましょうか」
あたしとおねたん、そして親子グマは、シノさんの後について、町のギルドへと向かうことになった。
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