異世界AI:アルメリアの羽根うさぎ

tiroro

文字の大きさ
4 / 18

第4話 羽根に免じて

しおりを挟む
 シノさんが出ていって、どのくらい経っただろう。
 暇を持て余したあたしは、おねたんとあっち向いてホイで遊んでいた。

「おねたん強いねー」

「高性能AIですもの!」

 ドヤ顔してる羽根うさぎが可愛い。

「シノさん遅いね」

「ちょっと心配ね」

 そんなふうに、シノさんの心配をしていると、小屋の玄関をノックするような音が聞こえた。
 扉をそっと開けて覗くと、そこにはあのときの子グマが立っていた。

「あら、どうしたの?
 お母さんは?ここまで一人で来たの?
 オイモはもう無いよ?」

「がうぅ……」

 なんだか、元気がなさげだな。
 お母さんになんかあったのかな?

「おねたん、なんて言ってるかわかる?」

「お母さんが殺されちゃうって!」

「なんですと!?」

 まさか、あの森で魔獣とかいうのに遭遇してしまったの!?
 それで、子グマだけでも逃して……こうしちゃいられない!

「おねたん!お母さんクマを助けに行こう!
 子グマちゃん、案内してくれる!?」

「がうっ!」

 日本には、一食一飯という言葉がある。
 食事というか、よくわからん木の実だったけど、むしろオイモあげたあたしの出費の方がでかいけど。
 ともかく、この恩を返さずして日本人は名乗れない。
 小屋を飛び出し、あたしたちは急いだ。

 ──待ってて、お母さんグマ!
 あたしたちが行って何かできるかわからないけど、魔獣を追い払うくらい、なんとかできるかもしれない……おねたんが!


***


「ガゥゥ……!」

「お母さんグマー!!」

 お母さんグマと対峙しているのは、魔獣じゃなくて……シノさん!?

「しぶとい奴ね……でも、これで!」

「シノさん!ちょっと待って!!」

 クロスボウを構えるシノさんの前に、あたしとおねたんは立ち塞がった。

「チハル!?
 何してんの!そいつは魔獣よ、離れなさい!!」

「魔獣じゃないよ!お母さんグマだよ!
 この子のお母さん!」

「あなた、頭おかしいの!?
 こいつは、魔獣アルクーダ!
 その子どもも退治しなきゃいけないの!!」

 シノさんは、子グマにクロスボウを向けた。

「この親子グマは、行く当てのなかったあたしたちを、巣に泊めてくれたんだよ?」

「シノさん、ここはわたしの羽根に免じて武器を下ろしてくださりませんか?」

「羽根に免じてってどういう意味よ……」

 困惑するシノさん。
 羽根に免じてって、あたしも意味はわからないけど、どうやらおねたんの説得で、シノさんがクロスボウを下ろしてくれた。
 なんでも言ってみるもんだね。

「がぅがぅ……」

「ガウ……」

 抱き合う二頭のクマ。
 感動のシーンだけど、お母さんグマの体のあちこちに出血が見られる。
 シノさんの矢を受けてしまったんだ。

「おねたん、お母さんグマの傷治せないの!?」

「待ってて、ウニャウニャするから」

 おねたんの小さなおててからあたしに光が伸びてきて、体がポカポカしてきた。
 これって、翻訳の時と同じだ。

「よし、これで千春に回復スキルが備わったわ」

「よくわからないけど、どうしたらいいの?」

「患部に手を当てて、痛いの痛いの飛んでけーって叫んで」
 
 そこはせめてヒールとか、それらしい言葉になりませんでしたか?

「じゃあ、お母さん、前足を出して」

「ガゥ……」

「痛いの痛いの飛んでけー!!」

 叫んでみると、手が光ってお母さんグマの患部が癒えていく。
 原理はわからんけど、これで前足の怪我はオーケー。
 あとは後ろ足の怪我を治してしまえば動けるかな?
 お腹と頭は無事でよかったよ。

「私がせっかく与えたダメージが消えてゆく……」

「シノさん、ごめんなさいね。
 わたしの羽根一つあげます」

 おねたんは、羽根をシノさんに手渡して免じてもらった。
 子グマがあたしの足元にすりすりしてて可愛い。

「チハル、あなた……その変なウサギといい、もしかしてテイマーなの?」

「テイマー?日本語でお願いします」

 シノさんは、懇切丁寧に地面に図を描いて説明してくれた。
 その図は時に激しく、時にキュートに、わかりやすくテイマーとは何かを教えてくれた。
 テイマーって、ラノベとかでたまに見る魔物を手懐けるやつだったわ。

「シノさん、このクマたちは魔獣なの?」

「クマとは違うわ。
 ほら、よく見なさい。背中にトゲがあるでしょ?」

 言われてみて背中を見ると、お母さんグマにはトゲが3本生えていた。
 子グマちゃんには無いので、大人になると生えるのかな?

「クマじゃなくて魔獣なんだ」

「この森で被害者も出てる……退治しないわけにはいかないのよ」
 
「あたしが責任持って面倒見るから、退治するの無しにできませんか?」

「私だけじゃ判断できないわ……ギルドに確認しないと」
 
 ギルドとかいう、異世界ものに欠かせないアレなワードも出てきた。
 いよいよもって、ここは異世界なんだね……コスプレイヤーじゃなかったか。

「とりあえず、親子グマには大人しくしていてもらうので、どうしたらいいですか?」

「仕方ない……ギルドに連れていきましょうか」

 あたしとおねたん、そして親子グマは、シノさんの後について、町のギルドへと向かうことになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人見知りと悪役令嬢がフェードアウトしたら

渡里あずま
恋愛
転生先は、乙女ゲーの「悪役」ポジション!? このまま、謀殺とか絶対に嫌なので、絶望中のルームメイト(魂)連れて、修道院へ遁走!! 前世(現代)の智慧で、快適生活目指します♡ 「この娘は、私が幸せにしなくちゃ!!」 ※※※ 現代の知識を持つ主人公と、異世界の幼女がルームシェア状態で生きていく話です。ざまぁなし。 今年、ダウンロード販売を考えているのでタイトル変更しました!(旧題:人見知りな私が、悪役令嬢? しかも気づかずフェードアウトしたら、今度は聖女と呼ばれています!)そして、第三章開始しました! ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...